Preview編でパッケージやカード構成はご紹介したし、それ以前に構成などはこちらでご紹介したので、いよいよ性能の比較である。今回は競合としてGeForce RTX 3060とGeForce RTX 3060 Tiを用意した。以前こちらの記事で利用したもの、そのままである。
○ベンチマークテストの環境
テスト環境は表1に示す通りだ。以前GeForce RTX 3070 Tiを試した時には、一部ゲームで解像度によってはCPUネックになっているケースもあったが、さすがにこのグレードのGPUでその心配はないだろう。なお、Resizable BARは有効としている(Radeon RX 6600 XTだけでなくGeForce RTX 3060/Tiも)。
BIOSTAR Radeon RX 6600 XTのスペックであるが、GPU-ZによればGame 2539MHz/Boost 2589MHz駆動、Memoryは2000MHz(GDDR6 16Gbps)となっている(Photo01)。またPower Limitは最大20%ということで、TBPは定格160Wだから最大192W程度まで引きあがると予想される(Photo02)。ちなみにPhoto01で配線がx8相当になっているが、実際コネクタ部を見るとx8しか配線されていない(Photo03)。もっともこのグレードの製品の場合、PCIe x16が必要か? というと微妙なところ。OpenCLとしてアクセラレータをガンガン使う、というのであればPCIe x16が欲しいが、そもそもNavi 2はそうした使い方に向いてないし、GPUとして使うなら別に帯域はそこまで必要ない(せいぜいがTextureのロードに余分に時間が掛かるので、ゲームのスタートまでの時間が若干増える程度である)。
なおBIOSTAR Radeon RX 6600 XTについての感想を述べれば、騒音が馬鹿にならない大きさである。音程は低いので、適切なケースに入れてやれば気になることはないが、ケースに収めずに平組み状態でテストしていると、ちょっと気になる騒音レベルで、連続使用はかなり厳しいと感じだ。勿論負荷状態に応じてこまめにファンが止まるので、ゲームとかを使うのでなければまるで問題はないのだが。
ということで前置きはこの辺りにして、性能比較をご紹介したい。なおグラフ中の表記は
3060 :ZOTAC Gaming GeForce RTX 3060 TwinEdge OC
3060 Ti:NVIDIA GeForce RTX 3070 Ti Founders Edition
6600 XT:BIOSTAR Radeon RX 6600 XT
と表記している。また本文中の解像度表記もいつも通り
2K :1920×1080pixel
2.5K:2560×1440pixel
3K :3200×1800pixel
4K :3840×2160pixel
とさせていただいた。
あと今回は、GPUの生の性能を比較したいという事でDLSS/FSR共に無効で利用している。なので、DLSSなりFSRが利用できる環境においては、例えば2.5Kとか3Kの解像度を2Kの性能で利用する。
○◆3DMark v2.19.7225(グラフ1〜4)
3DMark v2.19.7225
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/3dmark
この原稿はすべてのテストを終わった段階で書いている訳で、その意味では全テストの結果を見たうえでの感想になる訳だが、この3DMarkの結果にすべてが集約されている気もしなくもない。
グラフ1がOverallだが、WildLifeやNightRaid、FireStrike/FireStrike ExtremeなどではGeForce RTX 3060 Tiに追いつくとは言わないものの肉薄するスコアになっており、非常に有望そうな結果である。ところがFireStrike UltraやTimeSpyなどではだいぶ性能がGeForce RTX 3060に近づいており、そしてWildLife ExtremeやPortRoyalなどではGeForce RTX 3060に及ばない、といった結果になっている。これは別におかしい訳でもなんでもなく、GeForce RTX 3060/3060 Tiに比べると性能が動作環境の影響を受けやすい、というのがRadeon RX 6600 XTの特徴といえる。
逆順になるがPhysic/CPU Test(グラフ3)は、何しろ同じCPUでテストしているだけにもう差はまるでなく、なのでグラフ1の結果は主にGraphics Test(グラフ2)に起因するものとなる。まぁそれでもCombined Test(グラフ3)では随分Radeon RX 6600 XTは健闘していると言えなくもないが。
○◆SuperPosition v1.1(グラフ5〜11)
SuperPosition v1.1
Unigine
https://benchmark.unigine.com/superposition
もう一つSynthesis BenchmarkでSuperPositionを。設定は
Shadow Quality :High
Texture Quality:High
Depth of field :On
Motion Blur :On
とした。
さて、平均フレームレート(グラフ5)を見ると分かりやすいが、2Kでは確かにそれなりRadeon RX 6600 XTにアドバンテージがあるが、2.5K〜4KではGeForce RTX 3060とほぼ変わらず、という結果になっている。これは最大/最小フレームレート(グラフ6・7)でも同じで、なるほどRadeon RX 6600 XTを"1080P High Refresh Rate Gaming"と称するのも納得である。実際フレームレート変動を見ても、2K(グラフ8)はちゃんとRadeon RX 6600 XTが分離しているが、2.5K〜4K(グラフ9〜11)ではGeForce RTX 3060とほぼ重なりあう結果になっている。
●ゲームその1:Assassin's Creed / Borderlands 3 / F1 2021 / Godfall
○◆Assassin's Creed Valhalla(グラフ12〜18)
Assassin's Creed Valhalla
UBISOFT
https://www.epicgames.com/store/ja/p/assassins-creed-valhalla
ベンチマーク方法はこちらのAssassin's Creed Valhallaの項目に準ずる。設定は
Quality:Very High
とした。
さて結果だが、先のSuperPositionのものをもっと極端にした感じだ。2KだとGeForce RTX 3060 Tiをも凌ぐフレームレートだが、2KではGeForce RTX 3060 TiとGeForce RTX 3060の中間程度。4KではGeForce RTX 3060 Tiと同等といった感じ。この傾向は最大/最小フレームレート(グラフ13・14)からも読み取れる。
フレームレート変動を見ても、2K(グラフ13)だと完全にGeForce RTX 3060 Tiを全域で上回っており、性能は明らかなのが、2.5K(グラフ14)だと丁度中間まで落ち、4Kでは辛うじてGeForce RTX 3060より「少しマシ」という程度になっている。この「解像度でフレームレートの変化が急」というのは、Radeon RX 6600 XTの特徴としても良いだろう。
○◆Borderlands 3(グラフ19〜25)
Borderlands 3
2K Games
https://borderlands.com/ja-JP/
ベンチマーク方法はこちらのBorderland 3の項目に準ずる。設定は
全体的な品質:高
アンチエイリアス:テンポラル
とした。
結果だが、平均フレームレート(グラフ19)を見ると、2KではさすがにGeForce RTX 3060 Tiを凌ぐところまではいかないが、まぁGeForce RTX 3060 Ti並み。ただそこから解像度が上がるとどんどん性能が落ちてゆき、4KではGeForce RTX 3060並となる。最大/最小フレームレート(グラフ21・22)も同じ傾向である。
フレームレート変動を見ると、2K(グラフ22)では、Radeon RX 6600 XTがGeForce RTX 3060 Tiと同等といっても、実際はRadeon RX 6600 XTのフレームレート変動が激しいこともあって、実質GeForce RTX 3060 Tiの方が少し上だと思うが、それでもGeForce RTX 3060よりは間違いなくフレームレートが高い。ただそこから緩やかにRadeon RX 6600 XTのグラフは下に下がってゆき、4K(グラフ25)ではほぼGeForce RTX 3060に重なる形になっている。まぁ概ねAssassin's Creed Valhallaに近い傾向、として良いだろう。
○◆F1 2021(グラフ26〜32)
F1 2021
EA Sports
https://www.ea.com/ja-jp/games/f1/f1-2021
ベンチマーク方法はこちらのF1 2022の項目に準ずる。設定は
Anisotropic Filtering:16x
Anti-Aliasing:TAA
Detail Preset:Ultra High
である。Detail PresetをUltra Highにすると、自動的にRT Shadows/ReflectionsもOnになるので、このままとしている。
さて平均フレームレートがグラフ26だが、傾向的にはここまで見てきたゲームに近いが、3K以上になるとGeForce RTX 3060をも下回るフレームレートになっているのがちょっと異なるところ。ただ逆に2Kで言えば丁度GeForce RTX 3060とGeForce RTX 3060 Tiの中間に位置し、DXRTを有効にしてフルオプション付けた状態で115fps近くを叩き出している事を考えれば、2Kでは十分すぎる性能とはいえるのだが。この傾向は最大/最小フレームレート(グラフ27・28)でも同じであり、どうにか2.5Kまでは使えるが、その先は期待してはいけないというところだろうか。
フレームレート変動を見ても、2K(グラフ29)では明確にGeForce RTX 3060を引き離しているのが、2.5K(グラフ30)では重なっているというかやや下回っている程度、4Kまで行くともう明確に引き離されている格好で、ある意味判りやすい。
○◆Godfall(グラフ33)
Godfall
Counterplay Games Inc.
https://www.godfall.com/jp/
ベンチマーク方法はこちらのGodfallの項目に準じる。設定は
デフォルト画質:高
レイトレーシング:有効
とした。
こちらはログもなし、OCATも動作しないので平均フレームレートのみであるが、なんというかF1 2021をもっと極端にした感じである。2Kのみ、辛うじてGeForce RTX 3060を上回る性能を出してるが、そこから急速に性能が劣化しており、事実上使えるのが2Kのみ、という結果なのはある意味Radeon RX 6600 XTの製品の位置づけからすると間違ってはいないのだろうが、ちょっと考えさせるものがある。
ただGodFallに関しては、今回Radeon RX 6600 XTの振る舞いは明らかにおかしかったことも記しておく。具体的に言えば、複数回同じ解像度でベンチマークを実施すると、2回目以降はかなり10fps以上フレームレートが落ちる、という謎の現象が発生した。それも解像度を変えただけでは解決せず、一度ゲームを落として再立ち上げすると元に戻るという状況になっている。これは何かしらソフトウェア(それもディスプレイドライバ側)の問題ではないかと思う。そんなわけで、一応現バージョン(Godfall 2.4.55-prod-stable/Radeon Software 21.81-Jul30-Non-WHQL)の組み合わせの性能はあまりあてにならないかもしれない。
●ゲームその2:Hitman 3 / Horizon Zero Dawn / Metro Exodus / Red Dead Redemption 2
○◆Hitman 3(グラフ34)
Hitman 3
IO Interactive A/S
https://www.epicgames.com/store/ja/product/hitman-3/home
ベンチマーク方法はこちらのHitman 3の項目に準じる。設定は
Level of Detail:High
Texture Quality:High
とした。OCATが使えないのはこれも同じなので、平均フレームレートのみである。
こちらはGodfallに比べるとだいぶマシというか、2KではGeForce RTX 3060 Tiを凌ぐ性能だし、その先でもGeForce RTX 3060 TiとGeForce RTX 3060の丁度中間といったところ。Godfallの結果と併せて考えると、当たり前の話ではあるがゲームによって結果の傾向が異なる、という当たり前の結論に達するわけではあるが、それを顕著に示してくれた結果ともいえる。
○◆Horizon Zero Dawn(グラフ35〜41)
Horizon Zero Dawn
SIE
https://www.jp.playstation.com/games/horizon-zero-dawn/
ベンチマーク方法はこちらのHorizon Zero Dawnの項に準じる。設定は
プリセット:クオリティ優先
とした。またOCATでフレームレートを取得している。
さて平均フレームレート(グラフ35)を見ると、なぜか2KではGeForce RTX 3060が最速で、一番遅いのがGeForce RTX 3060 Tiという不思議な結果になっている。最大/最小フレームレート(グラフ36・37)でも同じ傾向だ。もっともフレームレート変動の2K(グラフ38)を見ると、大まかに言えばGeForce RTX 3060とGeForce RTX 3060 Tiがほぼ同じで、ただしGeForce RTX 3060 Tiの方がスパイク状のフレームレート変動が多く、これが平均フレームレートを下げている印象である。まぁ概ね同等のレベルとしてもよさそうだ。実際2.5K以上は明確にGeForce RTX 3060 Tiの方がフレームレートは上であり、その意味では2Kだと軽くCPUネックになっているのかもしれない。
さて肝心のRadeon RX 6600 XTは? というと、2KではGeForce RTX 3060 Tiよりは上だがGeForce RTX 3060を下回るという微妙なポジション。2Kのフレームレート変動でもGeForce RTX 3060 Tiに負けない位スパイクが多く、これが今一つ平均フレームレートが上がらない理由な気はする。逆に言えば、このスパイクが無ければ概ねGeForce RTX 3060/Tiと同等といったところ。ただ2.5Kから先は明確にフレームレートが落ちており、傾向的にはF1 2021に近いというか、2.5Kで明確に一番フレームが下回っているあたり、F1 2021より酷いというべきか。もっとも2.5Kのフレームレート変動(グラフ39)でもまだスパイクが多いため、これが無ければもう少しGeForce RTX 3060と近い性能になっているとは思う。もっとも3K/4K(グラフ40・41)ではもう明確にフレームレートのグラフが分離しており、このあたりは絶対的な描画性能の差が出た格好だ。
○◆Metro Exodus Enhanced Edition(グラフ42〜48)
Metro Exodus Enhanced Edition
4A Games
https://www.metrothegame.com/
ベンチマーク方法はこちらのMetro Exodus Enhanced Editionの項に準じる。設定は
Shading Quality:High
Ray Tracing:Normal
DLSS:Off
Reflections:Hybrid
Variable Rate Shading:4x
Hairworks/Advanced PhysX:Off
Tesselation:Full
とした。要するにHighプリセットそのままで解像度だけ変えた格好だ。
平均/最大/最小フレームレート(グラフ42〜44)で傾向は一緒で、Radeon RX 6600 XTはGeForce RTX 3060にも及ばないという結果になっている。強いて言えば2Kの最小フレームレートが辛うじてGeForce RTX 3060を上回っているのが若干の救いといった程度。
フレームレート変動(グラフ45〜48)を見ても、2Kの時点でかなり明確にGeForce RTX 3060との性能差が確認できており、2.5Kではほぼ分離しているという格好。性能差は明らかと言える。
○◆Red Dead Redemption 2(グラフ49〜55)
Red Dead Redemption 2
Rockstar Games
https://www.rockstargames.com/jp/games/info/reddeadredemption2
ベンチマーク方法はこちらに準ずる。設定はいつもと同じく
Quality Preset Level:14(Favor Quality)
ある。こちらもフレームレート変動をOCATで取得している。
平均/最大/最小フレームレート(グラフ49〜51)で明らかであるが、Metro Exodusと同じくRadeon RX 6600 XTの性能はGeForce RTX 3060に追いついていない。最大フレームレートの2Kこそほぼ同等だが、これはあまり性能には関係ない部分である。
フレームレート変動ではこれが顕著だ。2K(グラフ52)を見ると、Radeon RX 6600 XTも前半は健闘しているが、後半は明らかにGeForce RTX 3060に追いついていない。2.5K以上になると明確にグラフが分離し始めており、このあたりでGPUの性能がそのまま出てきた格好になる。
●ゲームその3:Tomb Raider / The Division 2 / Watch Dogs:Legion
○◆Shadow of the Tomb Raider(グラフ56〜62)
Shadow of the Tomb Raider
SQUARE ENIX
https://tombraider.square-enix-games.com/en-us
ベンチマーク方法はこちらに準じる。設定は
Quality:High
Ray Tracing:High
とした。
さてこちらもRadeon RX 6600 XTには厳しいゲームだったようで、平均/最大/最小フレームレート(グラフ56〜58)を見ると、もう性能差が明白である。
フレームレート変動の2K(グラフ59)でこれは明白で、グーっとフレームレートが上がる70secあたりが、Radeon RX 6600 XTでは140fpsそこそこだが、GeForce RTX 3060では160fps、GeForce RTX 3060 Tiでは200fps超えというあたりが、すべてを物語っている格好だ。この前後も明確にグラフが分離していることからも性能が理解できる。
2.5K以上(グラフ60〜62)もこの傾向は全く変わっておらず、ことShadow of the Tomb Raiderに関しては、Radeon RX 6600 XTは明確に「GeForce RTX 3060に及ばず」(GeForec RTX 3060 Tiとなど比較にもならない)と言わざるを得ない。
○◆Tom Clancy's The Division 2(グラフ63〜69)
Tom Clancy's The Division 2
Ubisoft
https://www.ubisoft.co.jp/division2/
ベンチマーク方法はこちらの"Tom Clancy's The Division 2"に準ずる。設定は
品質:ウルトラ
とした。
グラフ63〜65が平均/最大/最小フレームレートであるが、こちらはF1 2021的な傾向になった。2Kに関する限りはGeForce RTX 3060をちょっとだけ上回るが、その先はどんどん性能を下げてゆく格好だ。ただF1 2021ほどに下げ幅は多くなく、3Kあたりまではほぼ並んでいる様に見える。
フレームレート変動を見ると、2K(グラフ66)でRadeon RX 6600 XTはGeForce RTX 3060にかなり接近しているものの、辛うじて上回っているといったところ。これが2.5K(グラフ67)だと両者がほぼ1本の線になり、3K(グラフ68)ではRadeon RX 6600 XTがやや下回り、4K(グラフ69)で完全に分離するといった感じ。少なくともShadow of the Tomb Raiderよりはずっとマシな結果ではある。
○◆Watch Dogs:Legion(グラフ70〜76)
Watch Dogs:Legion
Ubisoft
https://www.ubisoft.co.jp/wdlegion/
ベンチマーク方法はこちらの"Watch Dogs:Legion"に準ずる。ちなみに設定は
Quality:High
RT Reflection:High
DLSS:Off
とした。
ゲームベンチマーク最後のこちらであるが、もう平均/最大/最小フレームレート(グラフ83〜85)からも明らかな様に、Radeon RX 6600 XTはGeForce RTX 3060に遠く及ばない。ある意味Shadow of the Tomb Raiderよりも結果は厳しく、最大/最小フレームレートでも全然かすらないし、絶対性能という意味ではGeForce RTX 3060は2Kでもう少しだけQualityを下げれば十分プレイできる範疇だが、Radeon RX 6600 XTは相当Qualityを下げる(と同時にRay Tracingを無効にする)位の事をしないとPlayableとは言えないだろう。
フレームレート変動(グラフ73〜76)からもこれは明白で、Radeon RX 6600 XTは(Watch Dogs:Legionには)とにかく絶対的に性能が足りない、と結論づけざるを得ない。
●PCMark 10 / 消費電力 / 考察まとめ
○◆PCMark 10 v2.1.2519(グラフ77〜82)
PCMark 10 v2.1.2519
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/pcmark10
最後に一応確認のためにPCMark 10を。Ovearll(グラフ77)で、PCMark 10 Extendedで差が出るのはおそらくFireStrikeの結果であろうと判るのだが、PCMark Express/PCMark 10でも微妙な差が出るのはなぜ? ということでTest Group(グラフ78)を見ると、Productivityで妙にRadeon RX 6600 XTのスコアが悪い(逆になぜかDigital Contents CreationではRadeon RX 6600 XTが一番スコアが良い)。Essentials(グラフ79)ではApp Startupで微妙な差がついているが、逆にVideo ConferencingではRadeon RX 6600 XTが一番高速だったりする。ただEssentialsの結果は大きな差ではないから、これは測定誤差のうちとみなすこともできる。誤差とは言えないのがProductivity(グラフ80)であるが、差があるのはSpreadsheetsのみ。やはり予想通りOpenCL周りであった。
実データで示すと表2の通り。これはビル設計/株式市場/モンテカルロシミュレーション/エネルギー市場という4つのデータの再計算の時間を測定したもので、単位は秒。前半2つがCPU、後半2つがOpenCLということでGPUを使うものとなる。NaviアーキテクチャはOpenCL的なワークロードに最適化されていない、というのはAMDも公式に認めている話であるが、MonteCarloとかEnergyMarketでは6.5秒とか9秒とかを要しており、こうなると「OpenCL使わない方が早いんじゃね?」という気もしなくもない。
この性能の低さ(というか所要時間の長さ)には、冒頭にも書いた「I/FがPCIe Gen4 x8」であることも多少寄与しているとは思うが、仮にx16だったとして半分になるか? といえば疑わしいし、半分になってもまだ遅い。とはいえ、これがネックになるか? というと、例えば筆者がOpenCLを使う用途は? というと、PhotoshopとそのPlugInのNeatImage、それに写真現像用のDxO Photo Labsだけだし、こうした用途を考えているユーザーにはそもそもRadeon RX 6600 XTはあまりお勧めとは言い難い事を考えれば、あまりボトルネックにはならないように思う。
逆にDigital Contents Creation(グラフ81)では、Radeon RX 6600 XTは高いスコアを出しており(これもこれで今一つ理解しにくいのだが、例えばOpenCLを使ったVideo Deshakeの所要時間はRadeon RX 6600 XTが一番短い)、現実問題としてあまり意識する必要はないと思う。実際Application Test(グラフ82)を見ると、ExcelやWord、PowerPointなど「現実に広く使われている」アプリケーションではほぼ性能差が無い。まぁ総じて「ここでは性能差は無視できる範囲」として良いかと思う。
○◆消費電力(グラフ83〜88)
最後に消費電力測定を。3DMark FireStrike Demo(グラフ83)、F1 2021 2K(グラフ84)、Metro Exodus Enhanced Edition 2K(グラフ85)、Shadow of the Tomb Raider 2K(グラフ86)の消費電力変動の様子である。それぞれのフル稼働時の消費電力の平均値をグラフ87に、それと待機時消費電力の差をグラフ88にまとめた。
さて、もう見て明白なのが明らかに低いRadeon RX 6600 XTの消費電力である。3Dゲームをフル稼働している最中のシステム全体の消費電力が滅多に300Wを超えない(Shadow of the Tomb Raiderで2回、一瞬だけ超えた程度)という省電力ぶりは素晴らしいと言わざるを得ない。CPUがそれなりに多いRyzen 7 5800Xと組み合わせてこれだから、Ryzen 5 5600XとかRyzen 7 5700Gとかと組み合わせたら、200W台で安定稼働するシステムができる事になる。
グラフ87で見ると、大体フル稼働時の消費電力差は250〜280W程度で、まぁ間を取って2270Wとするとして、ここからCPUやメモリの分を引くと概ね180〜190W程度。Photo02でTBDが最大192Wとしているから、辻褄はあっている計算だ。CPUの構成によるが、350W電源でも安定して利用することができそうである。少なくともこの消費電力の点は、400Wクラスが欲しいGeForce RTX 3060や、450Wクラスが最低条件になりそうなGeForce RTX 3060 Tiよりも優れていると言える。
○考察
そもそもGPUの性能は、色々細かい事を無視していってしまえば、シェーダの数×動作周波数で決まることになる。ということで今回試した3製品のシェーダ数と動作周波数(Boost Clock)から性能比をまとめてみたのが表3である。この比で言えば、Radeon RX 6600 XTはおおむねGeForce RTX 3060の8割強の絶対性能しか無い、ということになる。
もっともこれはCUDA CoreとSM(Streaming Processor)が同等のIPCを持っている、という前提での話である。ただ以前Radeon RX 6800 XTのベンチマークを行った際の結果で言えば、Radeon RX 6800 XTがGeForce RTX 3080と同等以上の性能であった。この際の比較で言えば、
GeForce RTX 3080 :8704 CUDA Core×1710MHz
Radeon RX 6800 XT:4608 SM×2250MHz
という構成なので、1SMの性能が大体1.44 CUDA Core程度になると計算すると辻褄があう。この比率をそおんまま適用すると、Radeon RX 6600 XTの性能比はGeForce RTX 3060比で1.2倍ほどになり、GeForce RTX 3060 Tiにはやや負けるものの、GeForce RTX 3060には十分に勝てる、という計算になる。
では結果は? というとここまで見てきたように、GeForce RTX 3060との性能差は非常に少ない。試しに2Kでのゲームベンチ(+SuperPosition)での平均フレームレートをまとめてみたのが表4である。殆どのテストでGeForce RTX 3060 Tiが最高速なのはまぁ当然として、2番目のポジションをGeForce RTX 3060とRadeon RX 6600 XTで分け合っている格好だ。試しにこのフレームレートの平均を取ったところ、これも94.1fps vs 96.8fpsと、辛うじてRadeon RX 6600 XT辛勝となったが、GeForce RTX 3060 Tiの112.4fpsには遠い事は間違いない。
どうしてこんな結果になったか? というのは割と簡単に推察できる。メモリバスが128bitしかなく、これをInfinityCacheで補っているが、そのInfinityCacheも32MBしかないため、2Kでも場合によっては足りないし、2.5K以上では明らかにInfinityCache不足で、低いメモリ帯域がそのまま性能に反映されてしまっている、ということだ。これが48MB位あれば、2Kでの性能はもう少し引きあがるだろうし、64MBあれば2.5Kでもそこそこの性能になったと思う。32MBというのは、ギリギリGeForce RTX 3060に勝る程度でしかなく、しかも2.5K以上の解像度には適さない。AMDは"1080pに最適なビデオカード"と説明しているが、"1080pを超えると使えない"という方が正確だと思う。
もっともその分消費電力はGeForce RTX 3060よりも常に30W以上低い訳で、このあたりはGDDR6を128bitに抑えた事も大きな要因だと思う。少なくともエントリ向けのビデオカードとしては、悪くない結果ではあると思う。
個人的には、これがGeForce RTX 3060と同じ価格で販売されていたらかなり迷うと思うのだが、実際にはこちらで説明したように想定小売価格は50ドルほど高い訳で、ここで50ドル高いのであれば、2.5Kでもそこそこ使えるGeForce RTX 3060の方に惹かれてしまう。あとは日本での実売価格次第だろうか? GeForce RTX 3060もいまだに品不足のためか7万円台で普通に売られている事を考えると、これより安く出るようであれば絶対に買いなのだが。