一方、チームはリーグ戦終盤で7連敗を喫するなど大失速。最終節を監督交代で迎えるという博打に出たが、そんなカンフル剤も効果がなく、ボルシアMGに2−4の完敗。最終順位は17位となり自動で2部に降格してしまった。
短い出場時間でゴールを求めるのも酷ではあるが、大迫はフォワードの選手として得点で存在価値を示すしかない。試合によっては中盤での起用もあり、必ずしも本人の望むポジションではなかったかもしれないが、それでも結果が必要なことに変わりはない。求められるのは、守備での貢献でも組み立てに加わることでもなく、得点だ。
とはいえ、フロリアン・コーフェルト前監督からの信頼は決して低くはなかった。ドイツ杯のレーゲンスブルク戦では、「ユウヤはチームにとって重要なゴールを決めてくれる」と、称えるほどの存在だった。
振り返れば2019−20シーズンは、最終節のケルン戦で先制点を含む2ゴールを決め、チームを6−1の大勝に導いた。この勝利により、ブレーメンは入れ替えプレーオフに進出し、残留することができた。また2018−19シーズンは、敗れはしたものの、ドイツ杯準決勝バイエルン戦でゴールを決めている。数としては物足りなくても、記憶に刻まれるゴールを決めてきたのだ。
◆欧州でプレーする日本人選手32人の今シーズンを5段階評価で総括。最高評価は誰だ?
むしろ問題はピッチ外にあった。
2018年の加入当初はともかく、時間が経つとともに、地元メディアから大迫は、意思疎通のできない難しい存在として扱われるようになった。「ボディランゲージができない」「ファンに対して感情表現ができない」という書かれ方をしてきた。今年1月の移籍マーケットが開いている時期には、「大迫は東京五輪を目指しており、オーバーエイジ枠でほぼ選ばれるだろうから、日本のクラブへ移籍するだろう(つまりブレーメンでは不要)」などと書かれた。そのたびに、コーフェルト監督はじめクラブ幹部が「大迫はブレーメンに必要な選手だ」と弁明せざるを得なかった。
大迫が地元メディアから「難しい存在」として扱われるのは、ある意味では仕方がないところもある。大迫はメディア対応を得意としない。あまり好んで喋ることもない。決して愛想のいい選手でも、多弁な選手でもない。日本人同士であれば、それはそれで個性のひとつだと理解することもできるが、それは海外ではなかなか伝わりづらい。
2020−21シーズンはコロナ対策のため、通常の試合後のミックスゾーンでの取材対応はまったく行なわれなかった。その分、ブレーメンでは毎週のようにリモートで選手の記者会見を行ない、選手が順番に登場したが、シーズンを通して、大迫は一度もその会見に登場しなかった。
それ以前から、ドイツ人記者が大迫のコメントが欲しいシーンで、大迫がノーコメントを貫くということがあった。意思疎通できる選手に対しては、意思疎通できない選手に比べて好感を持つのは、自然なことかもしれない。そのうちに大迫が厳しく書かれることが増えていった。
大迫がドイツ語を話せないわけではない。かつては活躍した試合の後、自分からドイツ人記者たちの前に出て話をすることもあった。加入した当初はドイツ語でクラブの動画撮影に応じており、コミュニケーションはできるのだ。
だが現在、地元メディアは「大迫は2部の予算では高給すぎる」と書く。
今後について大迫自身は、「フォワードで使ってくれる欧州のチーム」を第一希望としているが、日本のクラブも含めてどうなるかは「わからない」と言う。2022年まで契約の残るブレーメンで、新監督がフォワードで起用してくれるという目途がたてば、残留という可能性もあるが、まずはブンデスの1部でチームを探すことになるのだろう。
いずれにせよ、今シーズンは見ることができなかった得点を、早いタイミングで期待したいものだ。