翌日のウェストハム戦で、南野は序盤の決定機を惜しくも外してしまったが、おそらく指揮官の評価はさほど変わらないだろう。彼はこの半年間、26歳の日本代表ストライカーを高く評価してきた。たとえ、外野がなんと言おうとも。
1月にリバプールから半年の期限付きで加入した南野は、出場3試合で2得点を奪う好スタートを切ったものの、以降はゴールもアシストも記録できなかった。それでも指揮官は、彼の攻守に渡る貢献を称えてきた。
「(来季の去就については)いずれ、わかるようになる」とハーゼンヒュットル監督はつづける。
「今はまだ、来季の前線にどんな選手が必要になるのかもわからない。リバプールとは何度か話したが、彼らもまだ判断できないようだ。今季について言えば、彼(南野)は出場機会を得ることが、何よりも重要だった。我々はそれを提供し、彼と共に過ごした時間を楽しんだ」
サウサンプトンは今季、後半戦を迎える頃に調子を落とし、そのまま黒星が先行。最後は15位でシーズンを終えた。監督は来シーズンに向けて、オーナーに新戦力の要望を出したようだ。そのなかに南野の名前はあるのだろうか。
「強調しておかなければならないのは、彼は出場した試合で、チームに活気をもたらしてくれたということ。ファンタスティックなゴールを2つ決めたし、彼のメンタリティーやキャラクターはこのチームに本当に合っている。リバプールのような名門が彼を欲しがった理由も、よくわかるよ。彼はここでも良い働きをし、プレミアリーグで通用することを証明したのだ」
ただし、地元サポーターの意見は割れている。いや、過半数のファンは納得していない。『ザ・トータル・セインツ』というポッドキャストのパネリストで生粋のセインツ(サウサンプトンの愛称)ファン、グレン・デ・ラ・クール氏は、南野について次のように語る。
「全体的には、ポジティブだったとは言えない。そもそも、冬にチームが必要としていたのはサイドバックだったのに、アタッカーを取ってしまった。ただリバプールに引き抜かれたほどの選手だったから、期待していた。
ニューカッスル戦とチェルシー戦のゴールはどちらも見事で、期待は膨らんだよ。だがその後は存在感が薄れていった。最終節のウェストハム戦のチャンスは決めてほしかったね。ただ、彼の力が最も発揮されるのは、ナンバー10のポジションだと思う。サイドやトップで起用されることが多かったので、力が十全に発揮できなかったのかもしれない」
◆欧州でプレーする日本人選手32人を5段階評価で総括>>
また米メディア『ジ・アスレティック』でサウサンプトンを担当するダン・シェルドン記者も、デ・ラ・クール氏と似た感想を抱いている。
「あの2ゴールを除けば、全体的に南野の印象は薄い。リバプールでも見せていたように、前線からの守備は得意で、それはハーゼンヒュットル監督も好むところだが、今季の後半戦はそのチーム戦術自体がうまく機能していなかった。
調子を落とし始めたクラブに加入して、新戦力が急に活躍するのは簡単ではないと思う。負けがこむチームで、独力で輝くことなど、なかなかできるものではない」
シェルドン記者によると、リバプールのユルゲン・クロップ監督は、少なくともプレシーズンの間は南野を手元に置きたいと考えているという。サウサンプトンとリバプールの良好な関係を考えれば、引きつづき交渉できる余地はありそうだ。しかしシェルドン記者は、チームは別のポジションの補強を優先すべきだと言う。
「育成組織から上がってきた若手アタッカーのネイサン・テラが後半戦に活躍し、来季も大いに期待できる。クラブのことを長期的に考えれば、彼を成長させていくべきだ。南野のポテンシャルも、捨てがたいところではあるが」
南野に対するファンと番記者の評価は高いとは言えない。だが指揮官は間違いなくポジティブな印象を持っている。それはクロップ監督も同じだろう。ハイプレスを基幹戦術とする両監督には、得点やアシスト以外の貢献も評価されているからだ。
プレミアリーグ最終節を終え、日本代表の合宿へ向けて旅立った南野は、来シーズン、何色のシャツを着ているだろうか。真っ赤か、赤白か、それとも──。