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37歳になった長谷部は、ドイツ人の頭の中にある日本人像を体現している。礼儀正しく、信頼でき、共感できる存在。ハードワークを苦にせず、人としてもアスリートとしても、老いる様子がほとんど見られない。
客観的に見れば、年齢的に、このフランクフルトのベテラン選手は、キャリアの晩秋に差し掛かっているはずだ。だが、長谷部のキャリアの秋は長く、終わる様子がない。長谷部とクラブが、シーズンのはじめに「今季がドイツで最後のシーズンになるかもしれない」と話し合いをするようになってから、すでに数シーズンが過ぎている。これまでのところ、この話し合いは毎回、契約延長にいたっている。
今年はどうなるだろうか? 日曜午前に放送されるドイツで定番のサッカー討論番組『ドッペルパス』に、1月中旬、フランクフルトのスポーツディレクターを務めるフレディ・ボビッチが出演した。そのなかで、「本当は、今季限りで最後だと話し合っていたんだ」と話すと、さらにつづけて「ところが...」と付け足すことも忘れなかった。
ボビッチは、今季の長谷部のプレーを見ているうちに、「もう1シーズンやれそうだ」と思い直したのだ。「長谷部のプレーは、本当に魅力的だ。毎年1月か2月に、長谷部との話し合いの場を設けている。これからどうなるか、ドキドキするよ」とボビッチはテレビの前で話している。
このボビッチディレクターの判断には、アディ・ヒュッター監督も喜んで同意するだろう。オーストリア人のヒュッター監督は、長谷部のピッチ上のプレーに信頼を寄せ、重要なタスクを任せている。監督は、他の選手の見本となる長谷部を今季19試合中15試合に先発出場させている。
◆長谷部誠に聞く仕事の流儀。「日本の過労の問題はしっかり考えないと」>>
ここ最近では、3バックの真ん中のリベロとしてではなく、守備的ミッドフィルダーとしての起用がつづく。そして、長谷部自身のプレーはどうだろうか? 期待に応え、優れた活躍を見せている。まるで身体的には20代半ばのフレッシュさ、そして精神的には85歳のような落ち着きを見せている。数々の修羅場をくぐってきた長谷部のプレーは、落ち着き払い、思慮深く、そして戦略的な印象を強く与えている。
その一方で、1月23日にアウェーで行なわれたビーレフェルト戦では、誰もが驚くような数字を叩き出した。この試合で最年長だった長谷部が、時速33.3kmのスプリントで、ピッチ上の誰よりもスピードのある選手になったのだ。試合後、長谷部自身も驚いた様子で、「まさか自分がそんなに足が速いなんて、僕自身も知りませんでしたよ」と笑った。
身体的な面から見れば、この元日本代表選手が、ブンデスリーガのトップレベルの選手としてプレーをつづけることに問題はないはずだ。ここ数週間のフランクフルトは、ドイツ国内で最も成功を収めているチームのひとつだ。とりわけ、長谷部の前にいる前線の選手たちは、スペクタクルなプレーで輝きを放っている。
この好調のなか、フランクフルトは19節終了時点でリーグ4位。来季、長谷部の長いキャリアの締めくくりに、欧州チャンピオンズリーグでプレーする可能性も見えてきた。長谷部は、すでにヴォルフスブルク時代にチャンピオンズリーグで6試合に出場している。その舞台に再び戻ってくることがあれば、まさに有終の美を飾れるだろう。
親善大使として日本を代表する長谷部にとって、欧州最高峰の舞台で"仕事"のために各国を飛びまわることは、これからのキャリアのために最適な準備となるに違いない。