今月9日からオーストリアで合宿をしている日本代表では、堂安律がクラブ事情で不参加となった。ドイツ政府はオーストリアのほぼ全域をリスク地域と指定しており、なおかつ海外から帰国した際に5日間の隔離義務が生じる。これによりチームへの合流が遅れるため、ビーレフェルトは堂安の派遣を拒否した。発表当初からメンバー入りしていない大迫勇也も、同様の理由でメンバー外となった。
堂安の不参加を受けて追加招集された奥川雅也も、その後招集が見送られた。ザルツブルクの6選手が新型コロナウイルスの検査で陽性と判定され、奥川自身は陰性だったものの、すでに集合している選手の安全・安心を最優先とする観点からの見送りである。
国内でも感染の確認が相次いでいる。
J1の柏レイソルがクラスターに見舞われ、ルヴァンカップ決勝が延期された。チームの活動も停止している。J2のジュビロ磐田、京都サンガでも感染者が確認された。
JリーグはJ1、J2、J3ともに「リーグ戦の成立要件」を充足した。各クラブが感染対策に割いてきた時間と労力に敬意を表するとともに、過密日程のなかでここまで戦ってきた選手たちの疲労は相当なものだと思う。連戦の影響でケガ人が続出するクラブがあり、ベンチ入りのメンバーを揃えきれないチームが散見されている。
新型コロナウイルスの第三波は、全国的かつ急速に拡大している。Jクラブがどれほど感染対策を講じても、陽性者が出てしまう可能性は否定できない。
J1は川崎フロンターレが独走しており、2シーズンぶり3度目の優勝へ突き進んでいる。一方で、ACLのストレートイン(2位)とプレーオフからの出場(3位)を賭けた争いは、結末が見通せない。これからACLに出場するFC東京と横浜F・マリノスを中心に、消化試合数の足並みが揃っていないことも予想を難しくする。
上位陣では消化試合数が最少タイの柏レイソルが、どのタイミングで活動を再開するのかも、ACL出場権争いに関わってくる。ネルシーニョ監督が統べるこのチームは、現時点で3位の名古屋グランパス、4位のセレッソ大阪、5位の鹿島アントラーズとの対戦を残しているのだ。
J2のJ1昇格争いも、終盤までもつれそうだ。残り10試合の時点で徳島ヴォルティス、アビスパ福岡、V・ファーレン長崎に絞られたが、3チームは勝点5差で競り合っている。上位2チームが得るJ1昇格の切符を巡るサバイバルは、ここからが正念場だ。
徳島と福岡は、最終節に直接対決を残している。この試合で両チームの運命が決まることになったりしたら、どちらのクラブにとっても歴史的なビッグマッチになる。
J3は2位争いがし烈だ。残り8試合の段階で2位のAC長野パルセイロから7位のFC今治と鹿児島ユナイテッドFCまでの7チームが、勝点6差でひしめき合っている。こちらも予断を許さない。
いずれのリーグも1試合、1試合が重みを持っていくだけに、新型コロナウイルスの第3波が気になる。各クラブが懸命に対策を講じても、陽性反応者が出てしまっているのだ。クラブの努力に任せるだけでは、残り試合をすべて消化できないかもしれない。
ならば、何ができるのだろう。
たとえば、人の移動を減らすために、観客の上限をもう一度減らす。あるいは、リモートマッチに戻す──GO TO トラベル事業でこれだけ人が動いているなかで、サッカーだけが規制を強化しても意味がないかもしれない。ここでまたリモートマッチにしたら、各クラブの経営をさらに追い詰めてしまう。
それでも、何もしないままでいいのか。
「このような状況でサッカーをやらせてもらっていることに、まずは感謝をしなければならないと思います。コロナ対策をしながらここまでできているので、スケジュールがハードになっても、スケジュールが変わっても、100パーセント消化できるようにJリーグの仲間として各クラブと協力し合っていきたい」
長崎の手倉森誠監督はこう話す。J1昇格争いを演じている当事者のひとりとして、リーグ戦が途中で打ち切られるのは避けたいのだろう。だからといって、自分本位の声ではないはずだ。コロナ禍で多くの犠牲や代償を払ってきたシーズンを、何としても最後まで戦い抜きたいという思いは、カテゴリーやチームを超えて共通するものに違いない。第3波の拡大を防ぐさらなる手立てを、Jリーグとしても考えていくべきだと思うのだ。