「もしかしてケチ?」女がドン引きした“男の金銭感覚”とは
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「この気持ち相談できる友達が欲しい」
そんな想いが通じ、運命的に出会った2人の花嫁、紗理奈とアヤ。
……ところが、「あの子が羨ましい」 互いの距離が近づけば近づくほど、比べ合うのが女の定め。
結婚式準備を通じて変化していく女の友情の行く末は……?
◆これまでのあらすじ
2020年秋婚予定の紗理奈とアヤ。紗理奈が結婚式に存分にお金をかけられるアヤを羨む一方で、準備を2人仲良く進めている紗理奈を羨むアヤだったが…
「げ、高っ!何これ予算より50万もオーバーしてるじゃん」
―他にもお客さんがいるのに、大声でそんなこと言わないでよ…。
紗理奈は慌てて夫・陽介に「シー」と声を静めるようにサインを送る。
ホテルにあるドレスショップにて行われた2回目の衣装合わせ。
見積書を見た瞬間に夫が発した一言を聞いて、紗里奈の方が恥ずかしい気持ちになってしまう。
「紗里奈は可愛いから何着ても似合うよ。別にあのドレスじゃなくてもいいんじゃない?」
紗里奈の不機嫌を察したのか、陽介は慌てたようにフォローしてくる。
ーフォローになってないから!そんなに値段が気に入らないの?
心の中で叫びながら、紗理奈は表情を変えずに陽介を黙って見つめた。
たしかに、レンタルドレスの中では高い方なのかもしれないが、オーダードレスの半分くらいの値段である。最近の陽介は、紗理奈が選ぶ物に「高い」「もっと節約しよう」とケチを付けてくるようになった。
―陽介って結構ケチ…?もしアヤの夫だったら、きっとOKしてくれるんだろうな。気まずい2人。そこに追い討ちをかけるように、新たな悩みが浮上する…?
結局ドレスはその場では決まらず、次回持ち越しとなった。帰りの電車の中で、ドレスについての論争が繰り広げられることになる。
「だってさ、たった数時間しか着ないんだよ。それなのに1着40万も払うって勿体ないじゃん」
「でも一生に一度だし、好きなデザインのドレス着たいよ…」
「俺らは、両親に頼らず自分たちの資金だけで結婚式するって決めただろ?何でもかんでも勧められるがままに選んでたらお金が持たないから」
急に説教モードになる陽介。
「そんな言い方しなくてもいいじゃん。さっきだって、大声であんなこと言って…私が恥ずかしかったんだから」
付き合っている時から今まで、こんな風にお金のことで喧嘩になったことは殆ど無かった。紗里奈の要望を陽介は大抵聞いてくれたし、基本お財布は別々だったから。
「…紗里奈。携帯鳴ってるよ」
神楽坂の自宅に帰った後、テーブルの上に置いていた携帯が微妙な空気を壊すかのように着信を知らせて振動した。
千穂:紗理奈久しぶり。余興のバイオリン、私で良ければ是非!
メッセージの相手は青学時代の友人・千穂からだった。千穂は、偶然にも夫の陽介とも実家が近所で幼馴染だったこともあり、新郎新婦共通の友人として余興を頼むことにしたのだ。
本当は直接会って頼みたかったが、なかなか予定が合わず、取り急ぎLINEでお願いしていた。
千穂は初等部からのエスカレーター組で、大学のクラスが同じで仲良くなった友人の1人だ。
美人でお金持ち…内部生の中でも彼女は中心的存在だった。
『六本木でホムパ』とか『芸能人とパーティー』、『経営者との食事会』など千穂の周りで繰り広げられる世界に憧れはあったが、田舎者だった紗理奈には誘いの声すら掛からなかった。
『紗里奈って目立つけど、いかにも大学デビューって感じだよね』
千穂の取り巻き達から、最初の頃そんな陰口を叩かれていたのも知っている。馬鹿にされたのが悔しくて、東京に馴染めるように必死に努力した。
メイクやファッションを勉強し直し、彼女達の金銭感覚について行くためにバイトを複数掛け持ちした。
次第に千穂たちの仲間に入れるようになったものの、彼女たちのようにブランド品をポンポン買ったり、高級レストランを日常使いしたりすることは到底出来なかった。
ー東京育ちの内部生には、どんなに頑張っても追いつけない…。
一緒に居る時間は楽しいが、ふとした瞬間に疎外感を感じる…そんな虚しさが時折紗里奈を襲ったものだ。
そんな過去を思い出していると、千穂から追加のメッセージが届く。
『この時期だから色々大変だと思うけど、結婚式挙げられると良いね!楽しみにしてる』
千穂も式には来てくれるが、この状況下で参加する側も不安な心情が垣間見られる。
それに先日は母から電話があり、静岡に住んでいる親族の参加は難しいと言われてしまった。
―みんな楽しみって言ってくれているけど、参加してくれる人達だって絶対不安だよね。
準備も進んでるし、このまま挙げたいと思っているが、でもそれは新郎新婦のエゴなのだろうか。本来であれば、めでたいことにも関わらず、どこか後ろめたい気持ちになってしまう。
もしものことを考えて、延期やキャンセル費用についても、ちゃんと確認しておかないと思う紗理奈だった。一方アヤは、1人で打ち合わせに参加し、予想外のできごとに見舞われる…?
アヤ:「準備と仕事で頭が一杯だったけど、これってもしかして…」
「では、装花はワインレッドとオレンジのダリアメインで、グリーンと組み合わせていきますね」
延期を決定して以来、初めてのオンラインでの打ち合わせ。内容は、招待客の人数変更についてと、フローリストさんとの装花の決め直しだった。
―前は春婚らしくラベンダー、ホワイトを中心に作ってもらったから大分イメージが変わるなぁ。
テーブルクロスやナプキンの色も装花に合わせて変更することにした。夫は休日出勤と言い残し、1日外出している。仕方なくアヤはいつも通り1人で打ち合わせをこなしている。
結局、招待客は両家合わせて30人程度にしようかと考えている。
ー親族中心のウェディングになっちゃったけど、これでいいよね。
元々は、両家合わせて90人程度呼ぶ予定だったが、この状況で100人近い人数を呼ぶ式を実施することは難しい。
会社の人や友達には、『親族中心の少人数ウェディングに変更するから』と説明し、泣く泣く招待を取り止めることにした。
披露宴も1番大きい会場で行う予定だったが、一回り小さい会場に変更することにした。
「…次回は来月でよろしいでしょうか。席次表と引き出物の個数を確定したいので、ご多忙かと思いますが、出来ればご新郎様にも参加いただけると…」
その言葉にすみません、と謝りつつ、次こそは絶対に夫を引っ張り出そうと心に決める。
紗里奈の夫はちゃんと打ち合わせに参加しているし、自分の意見も持っているらしい。紗里奈は文句を言っていたが、アヤとしては羨ましいし、その姿勢を夫にも見習ってもらいたいと思う限りである。
打ち合わせが終わり、パソコンをシャットダウンし軽く息を吐く。
―本当はみんなに来て欲しかったけど…。
でもさすがに2回延期するのは、精神的にも持たなそうだし、今年挙げるなら仕方ないと割り切ることにした。前回は、割と直前で延期を決めたので、実費を含めて高額なキャンセル費用を支払う羽目になった。
―なんか、こんなに頑張ってまで式を挙げる意味って何なんだろう。
結婚式の準備ってもっと楽しいものだと思っていた。入籍から時間が経ち過ぎて間延びしてしまったせいなのか…アヤの心は最近どんよりと沈んでいる。
―もう少し諒太郎と話せる時間があれば、こんな風に思わないのかな?
机の上に置きっぱなしにしていた社用携帯を確認すると、休みの日にも関わらず大量のメールが届いており、余計に憂鬱な気分になってしまう。
仕事に家事に結婚式準備…全てが最近中途半端な気がする。
―キッチン周りもなんか汚れてる気がするし…気分転換に掃除でもしようかな。
そう思って椅子から立ち上がった瞬間、とてつもない吐き気が急激にアヤを襲い…慌ててトイレに駆け込んだ。
―まさか、これって…。
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