“選ばなかった道”にとらわれるのは嫌。浜辺美波が秘める、「強さ」と「潔さ」

凛とした佇まい、落ち着いたトーンで心地良く耳に響く声、丁寧な言葉遣い、ときおり見せる控えめな笑顔。まさにイメージ通りの浜辺美波だったが、それだけではない、その言葉の端々からヒリヒリとした強い意志が伝わってくる。

「“選ばなかったほう”にとらわれるのがすごく嫌なんです」
「変顔などのお芝居で恥ずかしがったりすることが嫌で」

彼女は「嫌」という言葉をハッキリと使う。その「嫌」が指すものは、どれも女優を続けるうえで妨げになるものばかり。女優としての明快な意志、その潔さに惚れ惚れとさせられた。

撮影/祭貴義道 取材・文/とみたまい 制作/iD inc.

人見知りだけど、そんな自分を変えようと動いた

映画『思い、思われ、ふり、ふられ』は浜辺さん演じる朱里、理央(演/北村匠海)、由奈(演/福本莉子)、和臣(演/赤楚衛二)の4人が紡ぐ青春ラブストーリーです。
4人全員が主人公だったので、自分が出ていないシーンがどんなふうにできあがっていたのか、まったく知らなかったんです。

完成したものを観たときには「それぞれに、こんなキラキラした青春があったんだな」と、登場人物の一人ひとりをすごく愛しく感じました。もちろんキュンキュンもしましたが、4人それぞれの成長にも感動できる作品だと思います。
朱里ははつらつとしたムードメーカーでありながら、恋愛では現実的な考え方をする女の子です。演じるうえで、とくに共感したところはどこでしょうか?
両親の転勤が多い朱里は、引っ越すたびに(せっかくできた友達と離れ離れになることに対して)暗くなるわけにはいかなくて。明るく振る舞うことで、友達を作るのが得意になったと思うんですが、私も…朱里ほどではないけれど、似たようなところがあると思います。
明るく振る舞っている?
というか、「明るくなった」感じです。私はもともとすごく人見知りで。でも、私がそのままの状態で現場に入ったら周りも暗くなってしまうと思い、あるとき「明るくなろう!」とパチンと切り替えて、それがいまでも続いています。

「私は人見知りだから、それを受け入れてほしい」っていう方向じゃなくて、「私は人見知りだけど、このままじゃきっとよくないから、自分で自分を変えよう!」って。

だから朱里の、自分のよくないところをよくないままにするんじゃなくて、変えていこうとする姿勢は共感できるし、カッコいいなと思うし、好きなところでもありますね。
相手との距離の取り方や、思いの伝え方がちょっとずつ違う4人。浜辺さんご自身は4人のなかで誰に近いでしょうか?
ん〜…「朱里か由奈か」と聞かれることが多いので、そのときは「由奈」って答えているんですが。もともとしゃべったりするのが得意じゃないし、王子様が来てくれるのを待っているような(笑)、そういう乙女心もすごくわかりますから。

でも、4人のなかだったら…意外と理央にも似ているかもしれません。理央は自分の気持ちを伝えたいけど、伝えられる状況ではなくなって、モヤモヤしている時間が長いと思うんです。それでも、中途半端なことはしないじゃないですか。

モヤモヤしながらも、自分のなかで1か100かの答えが出るまで中途半端なことはしたくないし、きちんと答えを出したい。言いたいことは言いたいし、やりたいことはやりたい。そうしないと先に進めないし、自分のなかで解決しないよっていう理央の気持ちは、私もよくわかります。

たとえ失敗しても、自分が選択したことに後悔したくない

今作は、そういった「先に進む勇気」をそれぞれが持つことで、物語が少しずつ動いていきますが、浜辺さんは一歩先に踏み出すために必要なことは何だと思いますか?
考え方だけで言うと…「一歩踏み出さなかったことで、いつか後悔しそうだな」って思ったら、後悔しないほうを選ぶと思います。何かを「選ぶ・選ばない」の選択肢があったときに、人って“選ばなかったほう”のことをずっと考えてしまうと思うんです。でも、私はそれにとらわれるのがすごく嫌なんですね。

選んだほうの道で失敗したときに、「あのとき、あっちにしておけばよかった」ってずっと思い続けて、失敗した理由をそこになすりつけたくなくて。自信を持って選んだもので失敗したとしても、それを選んだこと自体は後悔したくないなと思うんです。

たとえば、私は女優になりたいと上京し、高校から東京の学校に通いました。その選択についても…もちろん不安はありましたが、「あのとき上京しておけば、成功したかもしれないのに」ってあとで思うくらいなら、上京して失敗したほうがいいなと。やってみたうえで失敗したことに後悔するほうが、ウジウジしないかなと決意しました。
「女優になりたい」と思って高校から上京するほど、強い夢や目標があった浜辺さん。朱里にとっての和臣のように、夢や目標を語ることができる相手はいましたか?
中学校から仲の良い女の子たちはいましたが、その子たちとはあんまり将来のことを語らなくて。純粋に楽しい女子トークをするだけのことが多かったんです(笑)。

それで、高校に入って…そこでひとりだけ、そういう話ができる友達がいましたね。新しくできたお友達だからこそなのか、なんでもお互いにしゃべれる相手で。

「このお仕事が決まったよ」、「おめでとう!」って純粋に言い合える友達は、そこで初めてできたかなと思います。なかなか会う時間はとれていないのですが、いまでもその子とはめちゃくちゃ連絡を取り合っています(笑)。

「北村さんは独特な雰囲気のある、とても絵になる方」

『君の膵臓をたべたい』(2017年)でダブル主演を務めた北村さんと、再び共演されていますが、今作での北村さん演じる理央はいかがでしたか?
理央のあのちょっと大人っぽい、何を考えているのかわからない余裕な感じを、北村さんが的確に表現されているなと感じました。もともと私は、原作だと理央がすごく好きだったんです。それで、北村さんが理央を演じると聞いたときには、「絶対に素敵な理央ができるんだろうな」と思っていて。

予告編にもある、理央を象徴するような「しーっ」って人差し指を立てるシーンなんかも、イメージ通りでした。北村さんが演じたことで、絵のなかの理央に命が吹き込まれたというか…現実に落とし込まれた、素敵な理央だったなと思います。
北村さんは浜辺さんのことを“戦友”のような存在だとお話されていましたが、浜辺さんから見た北村さんはどんな役者さんですか?
戦友と思ってくださっているのは嬉しいですね。声のお仕事(映画『HELLO WORLD』)を含めると、共演は3回目になりますが、北村さんは独特な雰囲気がある、とても“絵になる方”だと思います。北村さんだけの何かを持っていらっしゃるというか…。

いろんなことについてきちんと深く考えていらっしゃる方だからこそ、佇まいにもそういった人柄が出ているんだと思います。すごく趣のある方だな、という印象ですね。
北村さんが現場にいることで影響を受ける部分はありますか?
北村さんはご自身のペースを絶対に崩さないんです。あんなに忙しい方で、睡眠もとれていなかったら少し暗くなったり、ヒステリックになったりすることもあるんじゃないかと思うんですが、そういったこともまったくなくて。

いつも一定のペースで安定していらっしゃるので、現場でお会いすると安心しますね。いつもと変わらない北村さんでいてくださるから「きょうは元気かな?」とか「きょうは大丈夫かな?」といった心配をしなくていいというか。とてもラクな気持ちにさせていただけます。
共演を重ねるなかで、距離感も縮まってきましたか?
距離感は、ちゃんと近くなってきたような気がします。『君の膵臓をたべたい』で共演したときは、一緒のシーンも多かったし、プロモーションでも長い時間一緒にいましたが、お互いあんまり会話がなくて。「何を話したらいいんだろう?」っていう距離感があったんですね。

それがいまでは…私たち、プライベートの話は全然しないんですけど、それでも笑い合える仲になったのは、少し不思議な気がしますね。でも、最初から無言でいるのが全然嫌じゃない距離感でもあったので、それは変わらずかなと思います。
おふたりでのお芝居の掛け合いにも、変化はありますか?
これは最初にご一緒したときからなんですが、私たちって「こうやろうと思うんだけど、どう?」みたいな打ち合わせをまったくしないんです。だから毎回「あ、これやってみようかな」と、気軽にお芝居のニュアンスも変えたりしています。北村さんも同じ感じで。

今作でも、中学校からの同級生で、義理の姉弟になってからは一緒に住んでいるという距離の近さは、お互い無理せず作れたかなと思います。
では、本作で浜辺さんが新たに得たものを教えてください。
私は青春を謳歌してこなかったタイプだし、とりわけ恋愛はしてこなかった人間なので、クランクインするまでは「自分がこの世界観で、朱里と一緒になって青春を生きられるのかな?」と不安に思っていました。だけど、作品に身を任せてみんなで物語を作り上げていくなかで、そんな心配はいつの間にか忘れていて。

そういう意味でも今作では「自分の経験にとらわれず、物語の世界観に飛び込んでいったら、自然とお芝居ができるんだな」と、新たに発見できました。この感覚は新しかったですね。

…本当に私、「もう自分には青春モノは無理かな〜?」って、すごく心配だったんです(笑)。でも、実際には全然そんなことはなくて。これまで経験したことのない、わからないと思っていた気持ちでも、役を通して知ることができるんだなって、この作品に参加させていただいて気づくことができました。

ずっと女優を続けるために、障害になることはやりたくない

『君の膵臓をたべたい』では透明感のある美少女を演じた浜辺さんですが、『賭ケグルイ』ではギャンブル中毒のクレイジーな役を演じ、『センセイ君主』では変顔を惜しげもなく披露されています。「どれだけ不細工に映っても気にならない」という発言もありましたが、そこまで思いきって演技に打ち込める理由とは?
ふふふ(楽しそうに聞いている浜辺さん)。

私はお芝居で恥ずかしがったりすることのほうが嫌なんです。「この役だったら当然こういう顔をするよね」というのを、全力で演じたい。そうやって全力で演じることで、新たな機会をいただけるほうが嬉しいですから。

「このお仕事をずっと続けていきたい」という思いがいちばんにあるので、その障害になりそうなことはやりたくないんです。
とくにどういう瞬間に「この仕事って楽しいな」と思うのでしょうか?
やっぱり本番の力ってスゴいなと思います。段取りをやって、テストをやって、本番を撮るまでに何度も練習するじゃないですか。

そうやって本番に向かってみんなの力を注いでいくので、やりきったときは嬉しいですし、「どんなふうになってるのか早く観たいな」ってワクワクするようなものが撮れたときは、とくに達成感があって楽しいですよね。
新型コロナウイルスによる影響で、多くの映画やドラマ、舞台などの制作が延期や中止になりました。エンターテインメント業界に身を置くひとりとして、改めて思ったことはありますか?
撮影は全部止まってしまいましたが、世の中は動いていたので、「エンタメって、生きていくうえで必要のない仕事なのかな…」と一瞬思ったりもしたんです。でも、そんななかでもみなさんが動画配信サービスなどで、映画やドラマを観てくださっているのを知って、娯楽の必要性を改めて感じました。

…と同時に、もちろん過去作品の再放送もいいですが、それだけじゃなくて、いまの時代に作ったものをもっとたくさんの方に観ていただきたいとも思いましたし、みなさんの気分転換になるような、観たら少しでも気分が軽くなるような作品をお届けしたいなと、改めて思いました。
浜辺美波(はまべ・みなみ)
2000年8月29日生まれ。石川県出身。B型。2011年、第7回「東宝シンデレラ」オーディションでニュージェネレーション賞を受賞し、女優として活動を開始する。主な主演作として、映画『咲-Saki-』、『君の膵臓をたべたい』、『賭ケグルイ』など。『君の膵臓をたべたい』では、第41回日本アカデミー賞新人俳優賞などを受賞した。今後もドラマ『私たちはどうかしている』(日本テレビ系)や、映画『約束のネバーランド』など、主演作が控えている。

    作品情報

    映画『思い、思われ、ふり、ふられ』
    8月14日(金)全国ロードショー
    https://furifura-movie.jp/

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    応募方法
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    受付期間
    2020年8月13日(木)12:00〜8月19日(水)12:00
    当選者確定フロー
    • 当選者発表日/8月20日(木)
    • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
    • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから8月20日(木)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき8月23日(日)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
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