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「あえて終電を逃す女」28歳男が驚愕した彼女の恐ろしい思惑
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空虚なデートの翌日、目を覚ましたら、待ち受けていたまさかの展開
◆これまでのあらすじ
アブサンを飲んで身体が入れ替わってしまった女子大生・麗奈と商社マン・凌。麗奈は身体が入れ替わった状態で自分の女友達とデートすることに…
▶前回:「こんなの初めて…」28歳男の前で、女が本当の自分をさらけ出せた夜
麗奈:史上最強に気が乗らないデート
「あ〜♡凌くん。しつこく誘っちゃってごめんなさい!」
今日はいろんなことがあってクタクタで、もう寝たい気分だったのに、美波とバーで軽く飲むことになってしまったのだ。
-美波との予定なんかドタキャンしてくれたら嬉しかったのに…
「凌くん、この間すぐ帰っちゃったから、もっとゆっくり話がしたくて…」
美波は目をキラキラと輝かせ、朝まで飲めますよ♡というオーラを放ちながら、会話をポンポン打ち返してくる。
「あの後、麗奈大丈夫でした?なんか…凌くんって麗奈狙ってるのかなーって」
「あ、あぁ大丈夫だったよ。うん、まぁ…麗奈ちゃんは綺麗だなぁって思うよ」
「麗奈、超美人ですよねぇ、でも…」思わず耳を疑った…性悪港区女子・美波が繰り出した“ありえない話”とは…?
「でも、麗奈…いじってるらしいですよ」
「えっ…?」
眠そうなオーラを放ちながら適当に会話を進めていたが、突如、聞き捨てならない話が浮上した。
-いじってる…!?
歯列矯正と眉毛のアートメイクをしたことはあるが、顔に何かを注入したりメスを入れるような整形はしたことはない。
断じてない。
友達だと思っていた美波に、突然自分を蹴落とすような発言をされて怒りよりも悲しみが勝ったが、気を取り直して美波をチクリと刺し返した。
「いや、麗奈ちゃんは天然美人だと思うなぁ。いじってたとしてもちょっとくらいでしょ。ほら、美波ちゃんが涙袋と唇をぷっくりさせてるみたいにさ」
「やだなぁ、これは天然ですよ。小さい頃、たらこ唇ってからかわれてコンプレックスだったんですけど、最近になってやっとこの唇を好きになれたんですよね」
-出た、コンプレックス商法。
この女のコンプレックス話にはうんざりだ。
このまま話を進めていけば「巨乳がコンプレックスだった」という話を嬉々として語り始めるはずだ。
「それに、麗奈ってバックにおじさまいるらしいですよ。家まで送っていきましたよね、見ました?あのマンション」
私が整形しているだの、バックにおじさまがいるだの、良くない噂が流れていることに悩んでいたが、真犯人がこんなに近くにいることに驚いた。
「それって証拠あるの?僕は本人の口から聞いたことしか信じない主義だからさ。そんなことぶっちゃけどうでもいいわ、それより友達の悪い噂を男に吹き込む方がどうかと思うな」
「そういうわけじゃなくて、凌くん良い人だから何も知らずに騙されてたらかわいそうだなって思って」
-なんかもう疲れちゃった…。もう誰も信じられない。
友達のことも…、自分のことも…、身体が入れ替わっているこの状況も…、全てに嫌気が差して投げ出したい気分になった。
「ごめん、明日早いしそろそろ帰ろっか」
美波とは1時間程度話しただけなのに、会計は2万円だった。
季節のフルーツカクテルが1杯2千円、チーズの盛り合わせが3千円、テーブルチャージにサービス料も乗っていた。
真夜中に呼び出され、くだらない話を聞かされ、お酒を2、3杯飲んだだけで2万円も払わなければいけないことに憤りを感じた。
ーこれで、可愛らしく“ご馳走様でした”と言ってくれれば少しは救いがあるというのに。
美波は目の前でスマホをいじり続けている。それも、不機嫌そうなオーラを放ちながら…。
あまりの態度の悪さに腹が立ち「ごめん、1万円もらえるかな?」と割り勘を打診してみると、美波はムッとした顔をして席を立った。
「私、現金持ち歩かないんですよ。今時電子マネーですから」
私たちは無言で店を出て、左手をあげるとすぐにタクシーが止まった。
「家、近いよね?じゃあね」
すると、なぜか美波はタクシーに乗り込まずにこちらをじっと見つめてきた。
「なに…?」美波が発した驚愕の一言とは…?港区女子の恐ろしい本性が剥き出しに
「なにって…タダで帰すつもりですか?私、家埼玉なんですけど。凌くんのためにわざわざ終電逃したのに、それはないんじゃないですか?」
脈なしと気付き、美波は凌を切り捨てた。その損切りの鮮やかさたるや…思わず感服しそうになる。
埼玉までのタクシー代3万円は美波を不機嫌にさせた慰謝料というわけだ。
しかし、私は美波の友達だ。美波が麻布十番に住んでいることも、彼氏が六本木に住んでいることも、もう1人の彼氏が恵比寿に住んでいることも知っている。
友達である私の悪い噂を吹き込み、嘘をついて男にたかるような美波が、同じ女として許せなかった。
「あのさ、君が麻布十番に住んでることくらい知ってるから。嘘ついてタク代せびるなんて、プライドないの?」
美波を乗せるはずだったタクシーに一人で乗り込み、ドアを閉めるよう運転手を急かした。
今まで見たこともないような悲惨な顔をして立ち尽くす美波を置き去りにして、タクシーは発車した。
「あんな可愛い子置き去りにしちゃってどうしたんですか」
「性格は可愛くないんですよ。運転手さん、西麻布に向かってください」
男たちが“港区女子”を毛嫌いする理由がわかった気がした。むしゃくしゃした私は1人で飲みたい気分になり、西麻布のバーに向かった。「お兄さん1人なのぉ〜?」
バーに到着するやいなや、素性のわからない女たちがどこからともなく湧いてきた。
「一緒に飲みましょ〜!テキーラ10杯お願〜い!」
年齢不詳、出身大学もわからない、もしかしたら大学すら出ていないのかもしれない、なんの仕事をしているのかもわからない、そもそも名前すらわからない。
-何も知らなくたって可愛ければオッケーなのだろうか…この場が楽しければなんだってオッケーなのだろうか…
西麻布の空虚さが自分の悩みと重なる。
何も知らない相手とお酒を飲み交わして何が楽しいんだろう。きっと、寂しさ、悲しみ、イライラ、あらゆる負の感情を忘れるために、みんな西麻布に引き寄せられて記憶を失うまで飲むんだろうな。
「カンパーイ」
テキーラを飲むと喉が灼けるように熱くなり、凌と初めて出会った日にアブサンを飲んだあの日のことを思い出す。
-もう嫌だ…早く自分の身体に戻りたい
「お兄さん、タイプ〜♡」
何杯飲んだのだろうか、気付けば自分の膝の上に女が1人乗っている。隣には酔いつぶれてパンツが丸見えな女が1人。
-こんな時、凌だったらどうするのかな。
持ち帰ってしまうだろうか。いや、きっと凌は『据え膳食わぬ男』彼なら親身に介抱してタクシーに乗せてあげるだろうな…。
「あ、お会計、こちらになります」
-5万円
素性も知らない女たちの飲み代も負担させられているようだ。思い返せば、今まで西麻布で飲んでお金を支払ったことなんて一度もなかった。
むしろ、タクシー代をもらってプラスになることが常だ。
「男も大変だなぁ…」
男に入れ替わって初めて痛感する。今なら全ての男に対し「ご馳走様です。ありがとうございます」と、深々とお辞儀をして回りたい気分である。
凌と初めて会った日のデートでの無礼を謝りたい…そんな気持ちを抱えて凌が待つマンションへ向かった。
だが次の日、この奇天烈な日々をなんだかんだ楽しんでいた私たちは最悪の修羅場を迎えることになる。
微かに芽生え始めていた凌との絆に大きなヒビが入ってしまうなんて、この時はまだ知る由もなかった。
凌のあんな顔見たくなかった…。
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凌と麗奈に降りかかる史上最悪の修羅場とは…?-
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