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現段階でも守備要員として一軍戦力になっており、福留孝介、糸井嘉男と高年齢の外野手がいるチーム事情を考えると江越を手放したくない編成陣の思惑は理解できる。同様に2017年に20本塁打を放った中谷将大、快足ランナー・島田海吏も「もったいない」と思わせる実力者ながら、阪神にとって必要な戦力なのだろう。 それでも、球界屈指のロマンを秘める選手の仕事場が守備固めでは、あまりに寂しい。27歳の江越にとって、今が正念場だ。 江越をはじめ、「もったいない選手」には外野手が多い。まずはリストアップしてみよう。愛斗(西武・23歳)真砂勇介(ソフトバンク・26歳)釜元豪(ソフトバンク・26歳)田城飛翔(ソフトバンク・21歳)※育成選手田中和基(楽天・25歳)オコエ瑠偉(楽天・22歳)岩見雅紀(楽天・25歳)加藤翔平(ロッテ・29歳)菅野剛士(ロッテ・27歳)松本剛(日本ハム・26歳)淺間大基(日本ハム・24歳)立岡宗一郎(巨人・30歳)関根大気(DeNA・25歳)江越大賀(阪神・27歳)中谷将大(阪神・27歳)島田海吏(阪神・24歳)※選手の年齢は2020年7月6日現在(以下同) なぜ外野手に多いかと言えば、下記の要因が考えられる。?プロの一軍で内野守備をこなすには高い技術が必要になる(内野手は専門性が高く、外野手に比べて需要がある)?内野を守れる選手は、スーパーサブなど必然的に一軍戦力になりやすい?外野には3ポジションがあり、故障者・スランプの選手のバックアップとして多めに選手が必要になる=ライバルが多い?パ・リーグには指名打者制度があり、打撃偏重型の選手がだぶつきやすい
そんななか、注目は12球団最強の選手層を誇るソフトバンクである。 現時点で実績のある内川聖一、中村晃が一軍におらず、キューバからデスパイネ、グラシアルは来日すらしていない。そんな窮地にあっても、栗原陵矢というイキのいい若手が出現してしまうところにソフトバンクの恐ろしさがある。 今のところ外野陣は長谷川勇也、柳田悠岐、上林誠知がレギュラーを固め、前出の中村、グラシアルに、現在は指名打者として出場するバレンティンもいる。さらに快足の周東佑京、ドラフト1位ルーキーの佐藤直樹ら楽しみな若手もひしめく。栗原も外野をこなせる選手だ。 そんな壮絶なレギュラー争いに割って入るのは至難の業。中堅の域に差し掛かってきた真砂、釜元にとっては非常に苦しい状況だ。 真砂は身体能力が高く、パンチ力に優れた右打ちの外野手。185センチ、88キロの大きな体ながら昨季はウエスタンリーグで26盗塁(リーグ1位)を決めている。明るい性格で、一軍で活躍できればムードメーカーになりうる資質を持つ。 釜元は昨季86試合に出場し、11盗塁を記録して一軍定着への足掛かりをつかんだかに見えた。とくに昨年は盗塁技術の進歩を見せ、盗塁死はわずか1だった。意外性のある長打力も魅力だが、今季は同じ右投げ左打ちのドラフト5位ルーキーの柳町達が開幕一軍となり、釜元は二軍で調整している。
今回の「もったいない選手」は原則23歳以上の選手を対象にしたのだが、唯一例外としたのが田城である。というのも、田城は高卒4年目の育成選手。昨季はウエスタンリーグ112試合に出場して、打率.307(リーグ2位)をマークした。外角の変化球を拾ってヒットゾーンに運ぶ技術は出色だ。だが、走守に際立った武器がなく、同タイプの柳町が入団した現在は支配下登録へのハードルが上がった感がある。 育成選手は在籍3年で一度は自由契約になる。ソフトバンクの育成選手はレベルが高く、かつては亀澤恭平(現・琉球ブルーオーシャンズ)が自由契約になったタイミングで中日に移籍して活躍した。田城と同期入団の長谷川宙輝がヤクルトに移籍して今季プロ初勝利を挙げたように、他球団のほうがチャンスはあるかもしれない。 近年、積極的に補強に動いている楽天も、もったいない選手の宝庫である。一軍の外野陣が島内宏明、辰己涼介、ブラッシュ(またはロメロ)と固定されており、打線全体のバランスもいい。2018年の新人王・田中や、走攻守に爆発力があるオコエですら二軍でチャンスを待っている状況だ。 なかでも岩見は、現在はファームでも試合に出たり出なかったりの状況が続いている。慶應義塾大時代は東京六大学リーグ通算21本塁打(歴代3位)を放った巨砲も、プロ3年目に入った。性格的に十分に目をかけてもらって意気に感じるタイプだけに、二軍でもチャンスが限られる現状は歯がゆく映る。
セ・リーグでは、DeNAの外野層の厚さが目を引く。佐野恵太、梶谷隆幸、タイラー・オースティンとレギュラー陣が好調で、桑原将志、神里和毅と若く、レギュラー経験のある好選手も控える。ほかにも乙坂智、楠本泰史と打撃力のある左打ち外野手がひしめいている。 そんななか、宝の持ち腐れに感じてしまうのが関根である。シュアな打撃とアグレッシブなプレーが武器で、走守のレベルも悪くない。現在は故障離脱中ながら、復帰後も一軍に故障者が続出しない限りは出番が限られそうだ。 なお、関根が2013年ドラフト会議でDeNAに5位指名された際、もっとも熱心に追いかけていたのが当時、オリックスのスカウトを務めていた由田慎太郎さんだった。由田さんは現在、オリックスの二軍コーチを務めている。無責任な第三者としては、関根について「プロでセンターのレギュラーを獲れる」とまで語った由田コーチの元で再出発する姿を見たくなってしまう。 ここまで外野手ばかりを紹介してきたが、数少ないながら内野手にももったいない選手はいる。筆頭格は永江恭平(西武・27歳)だろう。入団当初から高い守備力を評価されてきたショートである。投手経験者らしく、この小さな体でどうしてそんなに強いボールが投げられるのかと思うほど送球が強い。 源田壮亮が入団後はポジション争いに敗れ、出場機会は減っている。だが、源田が故障した昨季はショートとして6試合に先発出場し、守備面の穴を感じさせない動きを見せた。課題は通算打率.153の打撃だが、ファームの試合ではそれなりに強いスイングができており、その点を含めてもったいない。
捕手では磯村嘉孝(広島・27歳)も居場所をつくってやりたい好選手だ。打席でのムード満点の強打に加えて、守備力も年々レベルアップしている。着実に出場機会を増やしているものの、新体制になった今季は春先に故障で出遅れた影響もあり二軍に甘んじている。 広島の捕手陣は層が厚く、32歳で働き盛りの正捕手・會澤翼がいる上、40歳の大ベテラン・石原慶幸も脇を固める。若手には坂倉将吾、中村奨成と未来を担う逸材が育ってきている。これだけ人材が豊富だと、ひとりくらい他球団に出しても……という気がしないでもない。「もったいない選手」という切り口でこれだけの選手名が挙がるのだから、日本球界にはそれだけ好素材がいるという証拠かもしれない。 また、コロナ禍の影響ですっかり議論が先送りされているが、新たな移籍制度「ブレークスルードラフト(現役ドラフト)」を導入するのであれば、本稿に登場するような選手が対象にならなければ大きな意義を生まないだろう。 本稿で紹介できなかったなかにもファンの間で「もったいない」と感じる選手はいるはずだ。その熱い思いがいつか実ること、そして球界の人材活性化につながることを期待したい。