『ペダステ』から『アルキメデスの大戦』へ。鈴木拡樹×宮崎秋人が歩んだ道のり

同じ汗を流し、同じ苦しみを味わい、同じ喜びを分かち合い、同じ時を過ごす。そんな経験を共にした相手は、きっと何年経っても、どれだけ遠く離れても、心の奥でつながっている。

鈴木拡樹と宮崎秋人は、自分たちの関係を「同じ部活を一緒に励んできた人たち」と形容する。舞台『弱虫ペダル』シリーズ(『ペダステ』)で共演。チームメンバーとして見えないペダルをしゃにむにこぎ続けた。

そんなふたりが、ひさびさに共演を果たす。それが、舞台『アルキメデスの大戦』だ。原作は、『ドラゴン桜』などで知られる三田紀房の同名コミック。2019年には菅田将暉主演で映画化も果たし、話題を呼んだ。

巨大戦艦建造をめぐる、天才数学者と帝国海軍の息つく間もない攻防を、実力者たちが濃密な会話劇で見せる。役者にとっては、腕の鳴る演目だ。自分の道を一途に歩み続けたふたりの男が、今、4年ぶりに相まみえる。

撮影/アライテツヤ 取材・文/横川良明
スタイリング/中村美保【鈴木】、上田リサ【宮崎】 ヘアメイク/AKI【鈴木】、仲田須加【宮崎】

メラメラした炎を感じるところが、秋人くんの魅力

今回、久しぶりの共演を知って、率直にどう感じましたか?
鈴木 4年ぶりらしいんですよ。というのも自分で調べて、もう4年経ったことを知ったんですけど。随分長く会っていなかったのですが、それまで長い期間ずっと一緒にやってきたのもあって、そんなに会ってない感覚もなく。きょう会ったときも、すぐに昔の感覚に戻りました。
宮崎 すぐ思いましたもん、ああ、拡樹くんの声だって。
鈴木 本当?
宮崎 はい。僕としてはやっとこのタイミングが来たなっていう気持ちです。初めて共演させてもらったのが2011年のことなんですけど、僕が初めて舞台で名前つきの役をもらった作品なんですよ。
鈴木 その頃を知っている人間というのは貴重ですよね。ちょっと特別というか。
宮崎 そうなんです。そのときから拡樹くんにはずっと見てもらっている感覚があるので。こうして新しい役をやっている自分を見てもらえるのはうれしいです。
鈴木 当時から今も秋人くんに対する印象はずっと同じで。メラメラした炎を感じるところが、秋人くんの魅力。今回演出をされる日澤(雄介)さんもおっしゃっていましたけど、まっすぐというイメージが強いです。
宮崎 舞台『弱虫ペダル』箱根学園篇 〜眠れる直線鬼〜(以下、「直線鬼」)のとき(小林)且弥さんに言われたんですよ、「テクニックは勝手に身につくから求めなくていい」って。その言葉を信じて、そのまんまテクニックを求めずにやってきたら、ただただ“まっすぐ”が磨かれただけになりました(笑)。
鈴木 豪速球だ(笑)。
宮崎 小手先とか一切わからないです(笑)。まっすぐしかない。
鈴木 でもこうやって話を聞いていても、あの頃持っていた魅力がさらに進化して。なんだろう、あの頃とは出方の違う炎を感じます。
宮崎さんの目には、出会った頃の鈴木さんはどんなふうに映っていましたか?
宮崎 変わらないですね。初めて会ったのが2011年だから、拡樹くんは25、6歳だったと思うんですけど、当時から大人だなと思っていましたし、それは今も変わらなくて。
鈴木 あんまりしゃべるタイプでもないんで、大人っぽく見えるのかもしれないですね。
宮崎 座組みの居方も変わらないなって思いますし。俯瞰で見ているというか。
鈴木 それはあります、すごく。
宮崎 でもみんなは拡樹くんをど真ん中に置いているんです。俯瞰で見ているからといって外にはいない。拡樹くんがいたら絶対中心は拡樹くんなんですよ。

「直線鬼」の千秋楽では拡樹くんの肩を借りていた

お互いの印象深い思い出といえば?
鈴木 やっぱり「直線鬼」で主演として立っている姿ですかね。あの舞台で主演に抜擢された人間は、ワンシーンは必ず地獄を見るという(笑)。
宮崎 ありますね(笑)。
鈴木 でもみんなが全力で応援してくれるから、走らないわけにはいかないという。
宮崎 物理的にも精神的にも本当に支えてもらっていました。袖でもいっぱいサポートしてもらいましたし。千秋楽のときは僕が本当に立てなくなっちゃって、拡樹くんの肩を借りてましたから。
鈴木 そうだったね。
宮崎 逆に僕は舞台『弱虫ペダル』箱根学園篇 〜野獣覚醒〜で主演として立っている拡樹くんの姿が忘れられないです。他の作品と重なっていたのもあって、すごく忙しそうで。あれだけいろんな意味で余裕がない拡樹くんを見たのは初めてだったし、この人も人間なんだなってちょっとホッとしました(笑)。
鈴木 頭の中がグチャグチャになっていた時期もありましたし。そういう苦しい時期をひと通りくぐってきたからこそ、状況的に追いつめられたときにどう立ち向かっていけばいいのか考えられるようになった。そういう意味では、いい経験材料になったと思います。
あの年齢、あの時代だからこそできたことなんでしょうね。
鈴木 なかなか経験できることではないでしょうし、自分の限界を知ることができたという意味でも経験できてよかったのかなと思います。
宮崎 お互いのキャパを超えたところを見合っているというのは、なかなか稀有な存在だと思います。
言葉にすると、お互いはどんな関係なんでしょう?
鈴木 仲間、とはまた違うんですよね。いちばん近いのは、「同じ部活を一緒に励んできた人」っていう。
宮崎 そうですね。
鈴木 そのうえで、役者としては個々にリスペクトを持っていますし。
宮崎 お互いに深い尊敬と信頼がある。しょっちゅう会ったりとか、連絡とったりとか、ベタベタした間柄ではなくて。
鈴木 数年に一度、ご飯会をやろうかという連絡が来る、みたいな。それぐらいの距離感が自然なんだと思います。

櫂も拡樹くんも他人の物差しじゃ測れない

そんなふたりが今回、『アルキメデスの大戦』で再び同じ板の上に立ちます。鈴木さんが演じるのは、数学の天才にして変わり者の櫂 直(かい ただし)。宮崎さんから見て、鈴木さんの中に櫂っぽいところってありますか?
宮崎 変わり者なところじゃないですか(笑)。
鈴木 まさにそうだと思います(笑)。
宮崎 櫂も拡樹くんも他人の物差しじゃ測れない。本人が見ている世界と、他の人が見ている世界は全然違うなって感じます。
鈴木 変わっている部分が似ているということではなく。櫂くんも変わり者だし、僕も変わり者っていうところですね。
宮崎 自分が変わり者だから変わり者を演じるのは大丈夫っていうわけじゃないですからね。櫂の変わっている部分をどう表に出すのかは難しいだろうなと思います。
鈴木 僕自身、ひとつのことにのめりこんだらそれを延々考えるタイプ。だから、僕にとって今いちばんの興味の対象が櫂なんです。コミックスを読んでも、この人どんな人物なんだろうって気になる存在だったし、映画版を観るとコミックスとはまた違う興味が湧いてきて。今、櫂のことを考えるのはすごく楽しいです。
宮崎さんが演じるのは、櫂の部下となる海軍少尉・田中正二郎。鈴木さんから見た、宮崎さんと田中の共通点はどこですか?
鈴木 まっすぐ、でしょうね。このまっすぐも、秋人くんのまっすぐと田中のまっすぐではまた違うんでしょうけど。
宮崎 わかります。
鈴木 個人的に楽しみにしているのが、最初にふたりが出会うシーン。田中は絶対に櫂のことをよく思っていないんだろうなって(笑)。生真面目に軍人をやってきた田中にとって、悪気はないにせよ軍人のことをバカにしているような発言もちらほらしてくる櫂の存在は面白くないに決まってる。そんなふたりの激突も楽しみです。
宮崎 田中って面白い男ですよね。なんか好きなんですよ、田中のこと。なんだかんだ言って、いつの間にか櫂のこと大好きになってる。すげえ計算手伝うじゃんっていう(笑)。そんな田中の可愛げをちゃんと出せたらと思います。

この4年ですごいピュアな俳優になりました(笑)

今回の舞台化で楽しみなところは他にもありますか?
鈴木 現時点で僕が想像がつかなくて楽しみなのが、会話以外で見せる部分。戦争のシーンが直接出てくるお話ではないですけど、当時の様子を想像してもらうためには、何かしらそういった演出が必要になってくるのかと思いますし。作品の根幹にある戦艦の大きさや重厚感をお客さんに体感してもらうにはどうしたらいいんだろうとか。

いろんな方法は想像できますが、日澤さんがどれを選ぶのかワクワクしているし、どれを選んでもとても難しいだろうなと。
宮崎 僕はとにかく役を自分の中で掘り下げて、どう拡樹くんと会話していくかですね。役って、やっぱり相手と会話をすることによってできていくものだから。拡樹くんとの会話を通して、田中がどう膨らんでいくのかは楽しみです。

今はシンプルにお芝居を楽しもうという気持ちが強くて。たぶん何年か前の自分だったら、もっとあれこれ違うことを気にしていたかもしれないですけど、いろんな出会いがあってここまで来て、すごいピュアな俳優になりました、僕は(笑)。
鈴木 削ぎ落として削ぎ落として。
宮崎 はい。人と向き合うことだけのシンプルな男になりました。
鈴木 仏に近づいているね(笑)。
宮崎 本当にそうですよ。人と目を見て話す。以上。僕が芝居でやるべきことはそれだけで。ちゃんとそこに嘘なく田中として存在しようと思います。

秋人くんは予想を上回るまっすぐで来るのが面白い

そう考えると4年ぶりの共演ですが、4年前とはまったく違うものがふたりから生まれてくるんでしょうね。
宮崎 そうですね。今までは足を止めて会話することもなかったんで(笑)。
鈴木 そうだね。足を止めて話した記憶がない(笑)。
きっと久しぶりに一緒に芝居することで、ふたりがこの4年で培ってきたものが見えると思うんですね。そこに対する気持ちは楽しみですか? それとも恐怖?
鈴木 僕は楽しみのほうが勝っています。早く一緒に稽古がやりたいなって。
宮崎 僕も同じです。
相手と芝居をやっていて、いちばん楽しいところは?
鈴木 やっぱりまっすぐなところなんでしょうね。まっすぐってわかっていても、さらにその予想を上回るまっすぐで秋人くんは来る。こんなに力のあるまっすぐができるのはスゴいことだと思うし、だから印象に残るんだと思います。
宮崎 拡樹くんは、どんな球を投げてもキャッチしてくれるので、その安心感はあります。なので、田中としてどんな球を投げようかなって今から考えていますし。拡樹くんの球を僕もそろそろキャッチできるようになっているんじゃないかなって思っているので。一緒に芝居をして安心できる俳優になったと拡樹くんに思ってもらえるようになりたいです。
鈴木 (微笑んで聞いている)

目標に向かっているときのヒリヒリする感覚が心地いい

どんな球を投げても受け止めるって、言葉にするのは簡単ですけど、実際にやろうとするのは難しいと思うんですね。なぜそれを鈴木さんはできるんでしょう?
鈴木 単純に受け取らないと物語が止まっちゃいますからね。

これは人によって考えは違うかもしれないですけど、生モノとして演じている以上、その回が始まったら、たとえ何が起きても、それはその回の人生。想定外のことが起きても、今回の時系列ではそうなる運命だったと僕は考えているんです。だから、拾わないという発想が僕にはなくて。
役者さんによってはイレギュラーなことが起きたとき、それを無視して、あらかじめ決められた通りの反応をしちゃう人もいると思います。
鈴木 なので、決め込まないというのは、板の上に立つうえで大切にしていることのひとつです。決め込んでしまったら反応できないし、たとえできても反応速度が遅れる。仮にもし相手が決められた通りの返しで来たとしても、僕はそれが正解だと思って反応すればいい。このあたりに関しては、昔より肩の力が抜けたところかもしれないです。
宮崎 その肯定力がスゴいと思います。拡樹くんの人に対する肯定力は本当にスゴい。目の前で起こったことに対して全部肯定してから、じゃあ自分はどうしようって考える。それって怖いですからね。自分に力量がないとできない。でも拡樹くんはそれを楽しんでできているんじゃないかなと思うし、さすがだなと思います。
早くふたりの共演が見たいです。
宮崎 僕も拡樹くんとやれるのが楽しみですし、何より『アルキメデスの大戦』という素敵な作品に参加させてもらえることが楽しみです。この作品の持つパワーを信じて、拡樹くんを中心にみんなで作品をつくって、届けたいかたちでお客さんに届けられたらと思います。

スタッフさんも、共演者のみなさんも素晴らしい方ばかりで、いい作品をつくるための環境は整っている。あとは、僕自身が自分の役をまっとうするのみです。
鈴木 中には舞台化を早いと思われた方もいるかもしれませんが、映画が話題になって、作品に注目が集まっているこの時期に舞台版を世に出せることはすごくうれしいです。きっといろんな方が「舞台版はどうなの?」と期待してくださっていると思うので。

もちろん期待はプレッシャーでもあるんですけど、プレッシャーと向き合うことが自分の力に変わる。期待を超えてやろうという目標に向かって突き進んでいるときのヒリヒリするような感覚が、僕はすごく心地いいんです。コミックスも映画も成功している中での舞台化なので、舞台版ならではの『アルキメデスの大戦』を届けられるように頑張ります。
鈴木拡樹(すずき・ひろき)
1985年6月4日生まれ。大阪府出身。AB型。2007年、俳優デビュー。舞台での主な出演作は、舞台『弱虫ペダル』シリーズ(荒北靖友役)、舞台『刀剣乱舞』シリーズ(三日月宗近役)、舞台「幽☆遊☆白書」(蔵馬役)、ミュージカル『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』(主演 シーモア役)など。映像では、映画『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』(笹岡 一役)などに出演。東映ムビ×ステ『死神遣いの事件帖』(主演 久坂幻士郎役)が公開予定。
宮崎秋人(みやざき・しゅうと)
1990年9月3日生まれ。東京都出身。O型。2011年、俳優デビュー。舞台での主な出演作に舞台『弱虫ペダル』シリーズ(新開隼人役)、舞台『青の祓魔師』シリーズ(奥村雪男役)、舞台『光より前に〜夜明けの走者たち〜』(円谷幸吉役)、舞台『阿呆浪士』(スカピン役)、舞台『冬の時代』(飄風役)など。今後の待機作に、映画『私がモテてどうすんだ』(芹沼拓郎役)など。

公演情報

舞台『アルキメデスの大戦』
6月30日(火)〜7月16日(木) 日比谷シアタークリエ
7月19日(日) 呉信用金庫ホール(呉市文化ホール)
7月21日(火) 清水文化会館マリナート
7月25日(土)〜7月26日(日) 御園座
7月29日(水)〜7月31日(金) メルパルクホール大阪
最新の情報は公式サイトをご確認ください
https://www.tohostage.com/archimedes/

サイン入りポラプレゼント

今回インタビューをさせていただいた、鈴木拡樹さん×宮崎秋人さんのサイン入りポラを抽選で3名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

応募方法
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受付期間
2020年5月15日(金)12:00〜5月21日(木)12:00
当選者確定フロー
  • 当選者発表日/5月22日(金)
  • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
  • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから5月22日(金)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき5月25日(月)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
キャンペーン規約
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