YouTubeに投稿された「専門家たちが
著作権について解説したムービー」が
著作権侵害の申し立てを受けたとして、ムービーを投稿したニューヨーク大学(NYU)ロースクールが、
YouTubeにおける
著作権侵害申し立ての問題についてを報告しています。
How Explaining Copyright Broke the
YouTube Copyright System | NYU School of Law
https://www.law.nyu.edu/centers/engelberg/news/2020-03-04-youtube-takedown
著作権侵害の申し立てを受けたムービーは、2019年にアメリカのエンゲルバーグセンターで開催された知的財産に関するシンポジウムで撮影されました。法学者であるジョセフ・フィッシュマン氏が司会を務め、音楽学者のジュディス・フィネル氏と法医学音楽学者のサンディ・ウィルバー氏が、「
著作権と音楽における類似性の証明」についてプレゼンテーションとディスカッションを行った際のムービーです。
以下のムービーは問題となったムービーと同じ内容で、音楽が使用されたのは16分57秒から。マーヴィン・ゲイの「GOT TO GIVE IT UP」の一部が使用されています。
Proving Similarity -
YouTubeシンポジウムの主な目的は、
著作権訴訟の観点から音楽を分析する方法を説明することでした。パネルディスカッションの冒頭で、「音楽を分析するためにどのようなアプローチをしているか」についてプレゼンテーションを行った際、例を示すために、楽曲の一部分だけが流されました。
2019年6月、シンポジウムを記録したムービーが
YouTubeのNYUロースクールのチャンネルに投稿されました。同年8月に、プレゼンテーションのスライドのみを修正したムービーが投稿されています。どちらのムービーでも、プレゼンテーションで使用した楽曲は同じものでしたが、8月に投稿したムービーのみ、
YouTubeのコンテンツIDシステムによって、複数の企業から
著作権侵害の申し立てを受けました。
以下のメールは、実際にユニバーサルミュージックグループから
著作権侵害を申し立てられた際に、
YouTubeからNYUロースクールへ送られたメールです。
NYUロースクールは、ムービーの内容は
著作権の侵害に当たらないとして、
YouTubeに対して
著作権侵害の異議申し立てを行いました。結局、
YouTube側から「なぜ
著作権侵害の申し立てを受けたのか」という明確な説明は得られなかったものの、異議申し立てから数週間後、ムービーに対する申し立ては削除されたと知らされました。
NYUロースクールによると、ムービーの撮影が行われたシンポジウムには、聴衆にも世界でトップクラスの知的財産学者や、大規模なオンラインプラットフォームを運用してきた人々など、
著作権に深く関わる人々が集まっていたとのこと。しかし、専門家が多く集まる場で行われた
著作権侵害を解説するムービーであっても、
YouTubeでは
著作権侵害申し立ての対象にされてしまったことから、NYUロースクールは
YouTubeの自動化されたコンテンツ確認機能の不完全さを指摘しています。
「既存の著作物との一致だけで
著作権侵害を断定するシステムは不完全であり、例外に対処するためのプロセスを取り入れるべきです。自動化によってあらゆるチェックが可能になったとしても、情報に基づいた公平な人間によるレビューが必要です」とNYUロースクールは主張しています。