現在のキッズケータイと呼ばれるモデルは、
タッチパネルを搭載した機種やカメラを搭載した機種、さらに話題の「eSIM」に対応した機種まで登場しており、この進化は意外と知られていない。
そんな最新機種のうち、NTTドコモの最新キッズケータイ「SH-03M」はeSIMに対応しているのだが、この機種を選ぶにあたりの注意点、そしてメリットを今回はご紹介していく。
○「eSIM」は便利だけど不便?
キッズケータイ SH-03MはNTTドコモが販売する携帯電話として、初めてSIMカードスロットなしかつeSIMに対応したモデルである。
eSIMとは、
これまで使われてきたプラスチック製SIMカードとは異なり、携帯電話の側面やバッテリーパック部に、SIM情報を電気的に記録するようにしたもの。
当然、取り外しはできない。その代わりに、スマートフォンなどでeSIMに対応する機種は複数のeSIM情報を本体内に記録することもできるようになる。
例えば
・国内ではAの番号で通話と通信、海外ではBの番号で通話と通信
・Aが圏外になったらCの番号で通話と通信
このように、複数枚のSIMカードを入れ替えて使うような使い方を、スマートフォン内の操作だけで切り替えて使えるというメリットがある。
しかし、キッズケータイ SH-03Mはスマートフォンではない。
名前の通り「子ども向け」の携帯電話だ。
子ども向けである以上、頻繁にSIMカードを抜き差して利用することはない。
海外に行くにしてもキッズケータイのターゲットである小学生が、海外に一人で行くようなことは非常に特殊なケースであるため、SIMカードを交換できないことでのデメリットは少ない。
ただ、小学生でも高学年になってくるとデメリットが出てくる可能性がある。
筆者の周りの話にはなるが、
最近では小学生でもスマートフォンを持つ子どもが増えている。その多くは親のお古に、それまで使っていたキッズケータイのSIMカードを差し替えて使っている。
こうしたケースでは、eSIMを採用したキッズケータイからスマートフォンにステップするには「ショップでの手続き」が必要になってしまう。
またスマートフォンへのステップアップに限らず、eSIMを採用しているキッズケータイでは本体が故障した際にSIMカードを取り出し、ほかのキッズケータイや携帯電話に差し替えて利用するといったこともできない。
eSIM採用のキッズケータイでは、何かトラブルが発生すると、必ずショップを利用して、プラスチック製のSIMカードを発行してもらうなどの手続きが必要になる。
このことは覚えておきたい。
○「もしも」があってもeSIMならば安心キッズケータイにeSIMを採用するデメリットは、
・将来的なスマートフォンへのステップアップ
・故障時に手続きが必要な手間
こう指摘したが、
キッズケータイを利用中であれば。eSIMであることはメリットのほうが大きい。
キッズケータイは元々バッテリーやSIMカードの取り外しに際し、専用の治具を使わなければリアカバーを外すことができない。
こうした仕組みになっている理由は、
犯罪などに巻き込まれた際に、バッテリーやSIMカードを抜かれてないためである。
本体操作で電源をオフにしても、設定次第では完全にオフになることはなく、バッテリーが空になるまでの間は一定時間毎に現在地を送信する仕組みがキッズケータイには備わっている。
また子どもが、親に居場所を知られたくないからと、電源をオフにしたり、バッテリーを外してしまおうしたりすることもある。
こうしたケースでも専用の治具(小さい六角レンチ)が必要なので簡本には本体を開けることはできないのだが、治具を入手する方法が全くないとは言い切れないため「蓋を外してバッテリーやSIMカードを取り外す」行為を完全に防ぐことは難しい。
しかしeSIMであればSIMカードが物理的に存在していないので、本体を開けて取り外す必要がない。
つまりeSIMキッズケータイでは、バッテリーも含め利用者が交換できる構造にする必要がないため、より安心・安全のための携帯電話としての役割が全うできるのである。
「eSIM」は、2018年にiPhoneで採用されたことで注目を浴び、国内でも楽天モバイルから発売された「Rakuten mini」のようにeSIM専用のスマートフォンが登場するなど、これから対応するスマートフォンも出てくるだろう。
また最近ではMicrosoftの2in1 PC「Surface」でeSIMを搭載するなど、携帯電話以外でもモバイル通信に対応するためにeSIMを搭載する製品が登場している。
今時点では、キッズケータイからスマートフォンにステップアップする際にeSIMからSIMカードへの変更手続きという手間が必要になるが、数年もすればキッズケータイのeSIMをそのままスマートフォンに移せるようなサービス対応が登場する可能性も大いにある。
なによりデメリット以上に、子どもの安心のために持たせるキッズケータイとして、そこにeSIMを組み合わせるのは最良の組み合わせだと筆者は考えている。
数年先のステップアップは「まだ先の話」だからこそ、今時点の安心のためにeSIM専用になった新しいキッズケータイを我が子に買ってあげてみてはどうだろうか。
執筆 迎 悟