24時間365日“体操のお兄さん”でいるために。小林よしひさは“プロ意識”の塊だった

1959年から放送が始まった日本を代表する長寿番組であり、令和を迎えた今も、小さな子どもたちに大人気のNHKの教育番組「おかあさんといっしょ」。

「おかあさんといっしょ」のお兄さん、お姉さんは替えのきかない存在であり、体調管理の徹底を求められる。いつどこで誰に見られているかわからないため、イメージを守るために、休日であっても気を抜くことはできない。とても大変な仕事だ。

その体操のお兄さんを歴代最長となる14年間務めたのが、“よしお兄さん”こと小林よしひさ。2019年3月に番組を卒業し、現在はバラエティ番組でも活躍している。

在任期間について「当時、番組を見てくれていた子どもたちが高校生になっていることを考えると、驚きです」と話すが、「今の自分があるのは『おかあさんといっしょ』があったから」と感謝も忘れない。

トレードマークとなった変顔で、子どもたちを笑顔にしていた“よしお兄さん”に、体操のお兄さんとしての14年間を振り返ってもらった。

撮影/曽我美芽 取材・文/馬場英美 制作/iD inc.

仕事が休みの日も、“よしお兄さん”でいないといけない

きょうの撮影では変顔もたくさん披露していただき、ありがとうございました。
いえいえ。単純に、みなさんに喜んでいただくのが好きなので。
それは子どもの頃からですか?
小さい頃は引っ込み思案で人見知りが激しく、おとなしい子どもでした。それがなぜだかわからないけど、小学5年生ぐらいのときにいきなりスイッチが入って、人前に出て笑わせることが好きになりました。

そのときが“よしお兄さん”誕生の瞬間だったのかもしれません(笑)。
「おかあさんといっしょ」では、2005年4月から2019年3月まで、じつに14年ものあいだ、体操のお兄さんを務められてきました。歴代のお兄さん、お姉さんの中でも最長記録だとうかがっていますが、ご本人的にはどのように感じられていますか?
14年という数字を聞くと、ものすごく長く感じますよね。番組の対象年齢が2〜4歳なので、私が体操のお兄さんを始めたときに見てくれていた子たちが、今では高校生になっていることを考えると、本当に長い期間やらせていただいたんだなと思います。

でも、自分としては1年ごとに新しい挑戦が必ずあったので、あっという間の14年でした。
月曜から金曜にかけて番組のリハーサルと収録、週末にはイベントに参加されることもあり、本当に「おかあさんといっしょ」漬けの14年間だったと思います。その多忙な日々を振り返って、思うことはありますか?
14年間、ずっと寝ても覚めても“よしお兄さん”でいないといけないという感覚はありましたね。

これは私だけに限ったことではないのですが、「おかあさんといっしょ」のお兄さん、お姉さんは替えのきかない存在なんです。なので、つねに“よしお兄さん”でいられるように体調にも気を遣っていました。たとえお仕事が休みの日でも、個人という意味の“小林よしひさ”として休めた日はあまりなかった気がします。
プロ意識が高いですね。くじけそうになったことはないのでしょうか?
体調を崩しそうなときなど、身体的にキツいと思うときはありましたが、精神的なキツさはなかったです。

私が根っからのポジティブ人間なのもありますが、収録に行くと子どもたちがいるし、みんなからものすごく前向きなパワーをもらえるんですね。それは本当に大きかったです。

泣いている子がいても、強引に輪の中に引き入れたりはしない

子どもの持つパワーは底知れないものがありますね。
以前、「ぱわわぷたいそう」のロケで、真夏の海に行ったことがありまして。そのときに集まってくれた子どもたちを4つの組に分けて、合わせて16回やったんです。

真夏でしたし、日陰もそんなにない大変な撮影だったのですが、16回目の撮影が終わった後に、試しに子どもたちに「もう1回やる?」と聞いたら、みんな元気に「やるー!」と答えたんですね。

そのときにやっぱり子どもは底知れないパワーを持っているんだなと思いました。
その状況だと、体力的なことを含めて、“よしお兄さん”のほうが悲鳴をあげそうです(笑)。
子どもたちが「やるー!」と言った瞬間に、私は「イヤだ〜!」と言っていました(笑)。
番組収録に参加しているのは、公募によって集められた子どもたち。その場になじめないお子さんもいたのでは?
3、4歳だと自我が芽生えていますし、会話もできるのでイヤなことはイヤだと言いますよね。ただ、収録に参加してくれた子たちは、すでに番組を見てくれていた子たちだったので、そういう意味での壁は低かったのかなと。
それでも泣いてしまう子もいたのでは?
収録現場の雰囲気や、親から離れる不安で泣いてしまう子は毎回必ずいましたが、無理に引き離して輪の中に入れてもダメなものはダメなんですよね。お兄さんになったばかりの頃は気にしてエネルギーを注いでいたんですけど、なかなかうまくいかなくて。

それで、いろいろな方にお話を聞いたり、自分が番組内で経験してきたことを考えてみたりして、結局は大人が楽しそうにしていれば、子どもは自然とその輪に入ってきてくれることに気づいたんです。

強引に輪の中に入れるよりも、自分の足で一歩踏み出せるようにするのがいちばん重要だなと思い、私としては収録の現場をいかに楽しくするかを大切にしていました。

歌の内容を子どもたちに伝えたい。変顔を始めたきっかけ

小林さんと同時に卒業された上原りささんについても聞かせてください。上原さんが身体表現のお姉さんに就任されたとき、小林さんは体操のお兄さん8年目でした。
私が最初にご一緒させていただいたときの彼女は、大学3年生だったと思います。

学生ながら仕事もしている時点で、とても尊敬して見ていましたし、「おかあさんといっしょ」のお姉さんとして最初から存在してくれていたので、とても頼りがいがあるなと思いました。
そこから7年間、番組でご一緒されて、“りさお姉さん”の成長を感じることもあったのではないでしょうか?
もちろんありました。今では番組で変顔をするのは当たり前のようになっていますが、彼女がオーディションに来たときは、それができなかったんです。
今や、よしお兄さんの変顔は、番組においてとても重要なものになりましたよね。
当時僕は、それほどセリフの量が多くなく、とくに音楽が流れているあいだは、声を出さずに映ることがほとんどでした。そのときに、ただ普通の顔で映るのではなく、顔の表現によって歌の歌詞や内容をより多く子どもたちに伝えたいと思ったのが、変顔を始めるきっかけでした。

その後、「ぱわわぷたいそう」で(「いないいないばあ」のような振りのときに)顔を出すたびに表情を変えていたら、子どもたちが「よしお兄さんが変な顔をしている!」と盛り上がってくれていたみたいで。

3、4歳の子どもたちにとって、最初に入ってくるのは視覚的な情報なんですよね。やっぱり変顔には興味を持つんだと思って、「ぱわわぷたいそう」の後の「ブンバ・ボーン!」でも取り入れたら、最初はカメラのほうを向いていた子どもたちがそのシーンの近くになると「次、どんな顔をするんだろう?」という期待の目を私に向けてくるようになりました。それをシメシメと思いながらやっていました(笑)。
子どもにとっての変顔は、理屈ではない楽しさがあるんでしょうね。
かつ、私を含め大人が楽しんでいれば、子どもたちも安心して楽しむことができるんだと思います。

娘が産まれたことで、子どもたちと接する感覚に変化が

プライベートでは1児の父である小林さん。ブログにお子さんの写真もアップされていますが、ご自身が出演された「おかあさんといっしょ」のDVDを見せることもあるのでしょうか?
それはまだですね。娘の年齢的にはまだ「いないいないばあっ!」を見るぐらいなのですが、たまに私がテレビに映ると指を差したりしているので、もしかしたらなんとなくわかっているのかも(笑)。
お嬢さんの前で変顔を披露するときも?
つねにやっています。表情を大きく変えると娘もゲラゲラ笑っているので、やっぱり「変顔は強し!」ですね(笑)。
これまでも多くの子どもたちと接してこられましたが、ご自身にお子さんができてから変わったことはありましたか?
もともと子どもが好きだったので、そんなに変わらないのかなと思っていたら、これが思った以上に感覚的な変化がありました。

子どもが産まれた日も収録があったのですが、出産にはギリギリ立ち会うことができまして。産まれてきた子どもを見て、当然ですが、とても可愛く思えたんです。

それからは、番組収録に来てくれた子どもたちは、それぞれの親にとっての“いちばん”なんだと改めて感じ、より宝物のように見えてきました。

そのときは私が体操のお兄さんになってから13年半経っていましたが、自分としての新たな成長を感じたときでもありました。だからこそ、自分の子どもが産まれたことは、人生において、とても大きな経験だったと思います。

「おかあさんといっしょ」の現場は、故郷のような安心感がある

1月24日公開の『映画 おかあさんといっしょ すりかえかめんをつかまえろ!』は、「おかあさんといっしょ」の映画としては2作目です。前作に続いての出演となりましたが、撮影は番組を卒業されてからだったそうですね。
撮影自体は、卒業から3ヶ月ほど経った頃でした。前回、映画というものを初めて経験させていただいて、本当にうれしかったのですが、番組を卒業してからの出演はさすがにないだろうと思っていたので、お声がけいただけてすごくうれしかったです。
“よしお兄さん”の感覚はすぐに取り戻せましたか?
もともと演じるというよりも、自分の素に近かったので、違和感なく戻ってこれたような気がします。

ただ、番組を卒業してからの3ヶ月間が、私にとってはとても濃密で。新たな挑戦をさせていただいた期間だったので、「おかあさんといっしょ」の現場に戻ったときは懐かしさも感じましたし、故郷に戻ったような安心感がありました。
本作は、スクリーンからお兄さんやお姉さんが劇場にいる子どもたちに声をかけたり、クイズを出したりする参加型の映画になっています。
お子さん連れで映画館に来やすいというのが素敵ですよね。小さい子と一緒に行くと、騒いでしまったらどうしよう、周りに迷惑をかけてしまったらどうしよう、という不安が少なからずあると思います。

でも、この映画は“お互い様”という状況なうえに、みんなで一緒に動いて声を出そうという内容になっているので、安心して楽しんでいただけると思います。
映画の上映中も照明がそれほど暗くならないなど、配慮がされているのも安心ですね。
劇場が子どもたちの遊び場になる要素もあるので、映画館デビューにぴったりだと思います。私の娘にとっても本作で映画館デビューとなると思うので、みなさんと一緒に楽しめたらうれしいです!
小林よしひさ(こばやし・よしひさ)
1981年6月29日生まれ。埼玉県出身。AB型。NHKの教育番組「おかあさんといっしょ」で、2005年に11代目体操のお兄さんに就任。2019年に番組を卒業するまで、歴代最長となる14年間、体操のお兄さんを務めた。昨年末からYouTubeチャンネル『よしお兄さんとあそぼう!』を開設するほか、バラエティ番組などでも活躍中。

映画情報

『映画 おかあさんといっしょ すりかえかめんをつかまえろ!』
1月24日(金)ロードショー
https://eiga-okaasan.jp/2020/

歌って踊って、クイズにチャレンジ! 親子で楽しめる約60分!
“映画館でいっぱい遊ぼう!”のコンセプトのもと、お兄さんお姉さんたちと歌ったり踊ったり、参加型のクイズなど、お楽しみがいっぱい!
番組を卒業した、よしお兄さんとりさお姉さん、だいすけお兄さん、そして俳優の賀来賢人さんが登場!
お兄さんお姉さん、豪華なゲストたちとの共演にも注目!
そして、番組の人気キャラクター“すりかえかめん“と“すりかえお嬢”が大騒動を巻き起こす! 映画館デビューにぴったりな親子で楽しめる体験型映画。

出演:花田ゆういちろう 小野あつこ 福尾 誠 秋元杏月
/小林よしひさ 上原りさ 横山だいすけ/賀来賢人
チョロミー ムームー ガラピコ
声の出演:吉田仁美 冨田泰代 川島得愛

©2020「映画 おかあさんといっしょ すりかえかめんをつかまえろ!」製作委員会

サイン入りポラプレゼント

今回インタビューをさせていただいた、小林よしひささんのサイン入りポラを抽選で3名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

応募方法
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受付期間
2020年1月27日(月)18:00〜2月2日(日)18:00
当選者確定フロー
  • 当選者発表日/2月3日(月)
  • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
  • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから2月3日(月)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき2月6日(木)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
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