舞台の魅力を改めて実感した1年――鈴木拡樹と振り返る2019年の仕事録
11月初旬、秋の深まりを感じさせる都内の公園を、ゆったりと歩いてもらった。
この日の撮影のコンセプトは「休日」。とはいえこの1年、鈴木拡樹がゆったりと公園を散策できるような時間を何日も持てたかというと、答えは「NO」だ。
舞台『No.9 −不滅の旋律−』に始まり、ほぼ時を同じくして、主演作『映画刀剣乱舞-継承-』が公開。さらに『どろろ』ではアニメと舞台の両方で主人公・百鬼丸役に臨み、『PSYCHO-PASS サイコパス Virtue and Vice』、『幽☆遊☆白書』といった話題の舞台にも出演。
その隙間を縫うように数々のドラマにも参加し、映画『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』への出演も決まり……とまあ、例年以上と言えるハードな日々を送り、活躍の場を広げた。
目まぐるしく過ぎたこの1年で、鈴木拡樹は何を考え、何を手に入れたのか? じっくりと振り返ってもらった。
スタイリング/石橋修一 ヘアメイク/AKI
衣装協力/コート¥52,000、パーカー¥18,000(ともにSToL/藤原慎太郎事務所 tel.03-6418-6279)、パンツ¥25,000(wjk/wjk base tel.03-6418-6314)、その他スタイリスト私物
声優も務めた『どろろ』。自分が声を吹き込む意味を考えた
- 前回、鈴木さんに登場いただいたのは、ほぼ1年前の11月でした。
- そうみたいですねぇ。もう1年が経ったって「そんなバカなっ!」って気持ちです…(苦笑)。
- この1年を振り返っていただきますが、2018年の大みそかにはミュージカル『刀剣乱舞』の刀剣男士たちが『第69回NHK紅白歌合戦』に“出陣”しました。鈴木さんは長く舞台版に出演されてきましたが、彼らの雄姿はご覧になりましたか?
- もちろん見ました。ついに実現したというお祝いムードでしたね。(舞台版で鈴木さんが演じる三日月宗近役をミュージカル版で演じている)黒羽麻璃央くんには「頑張って」とメールをしました。
- ついにここまで来たか、という感慨も?
- もちろんありました。加えて、(紅白出場を)有言実行した力がスゴいなと。とにかく何よりもうれしかったですね。パフォーマンスも見事でした。
- 1月には鈴木さんが百鬼丸の声を務めたテレビアニメ『どろろ』も放送され、3月には舞台版の上演もありました。
- テレビアニメでの声のお仕事は初めてだったので、最初はマイクとの距離感もわからない状態でした。アフレコブースに何本かマイクが並んでるんですけど、「ん? これはどこに立ったらいいんだろう?」という状態で…(苦笑)。
周りのみなさんはプロですから、すでにやり方を心得ていて、打ち合わせもなく自然にスッと入っていかれるんですね。アニメの収録って基本、映像を流しながらみんなで声を当てていくんですけど、最初にドライ(リハーサル)があるんです。そこでいろいろ学ばせていただきました。 - 現場ではどんなことを意識されていましたか?
- 当初は「どういう雰囲気の声がいいか?」と考えながら現場に行ってたんですけど、そもそも声だけでお芝居をするなら、最初からプロの声優さんを起用すればいいわけで。
僕を呼んでいただけたのは、テクニックを感じさせない素の声を乗せることを求められていたからだと思うんです。そこで「どうにかしてうまくやらなきゃ」という考えを捨てて臨めたし、やはりやってみて「そうだよなぁ」と感じました。
アニメにばかり気をとられていたんですけど、そうしたら舞台の稽古も始まって、気づいたら舞台の本番が終わってから、最終話に向けてのアニメの収録があったりして。アニメで始まって、舞台になって、またアニメの収録に…という逆転現象がすごく印象的でした。
- 頭の中が混乱しそうですね。
- 舞台を終えて、アニメの収録に行ったら「あ、このシーン、舞台でやった!」とシンクロする部分もあって不思議な気持ちでした。
- アニメにおける役作りが、舞台での百鬼丸に影響を受けた部分はありましたか?
- 参考にした部分もありました。アニメでは、百鬼丸の日常はどういうものなのか?という点が映像の中で丁寧に描かれていたんですよね。
たとえば(身体のパーツがほぼ作りものである)百鬼丸は戦いのときに(刀を取り出すために)義手を投げ捨てるのですが、目が見えていないのに後々、義手を拾いやすくするように投げていたりして。
「あぁ、百鬼丸はこういうふうに育ってきたんだ」とアニメで学ばせてもらったことが、舞台での細かい動きにつながったなと思いますね。
蔵馬役では、緒方恵美さんの声の特徴を取り入れた
- その後も『PSYCHO-PASS サイコパス Virtue and Vice』、『最遊記歌劇伝−Darkness−』と主演舞台が続きましたが、『幽☆遊☆白書』では蔵馬役を演じました。2.5次元作品ではひさびさに主演以外の役柄でしたね。
- たしかに主演がずっと続いてましたね。それもあって、現場に入るとき、いい具合に肩の力が抜けていたのかなぁと思います。ただ、力が抜けていた要因は、その直前まで映像作品の撮影がずっと続いていて、しばらく舞台の現場がなかったことにもあるんです。
舞台の現場に入って、(映像作品という)新しいことに集中していたんだなと改めて気づいたんです。だからひさびさの舞台の稽古が楽しくて楽しくて(笑)。これまで長く舞台に立たせていただいてきて、ある種のホーム感みたいなものを抱いていたんだと気づきました。決して劇団というわけじゃないし、作品も初演なのに、どこかで舞台を自分の居場所と感じていたんだなと。
そういう思いも含めて、この作品はずっと楽しかったですね。とくにD-BOYSの荒木宏文さん(コエンマ役)とはいつか共演したいと思っていたんですけど、実際にご一緒させていただいて、すごく面白かったです。普段から気遣いが見える瞬間があって、「あぁ、カッコいい大人ってこういうことだな」って感じさせてくれる素敵なお兄さんでした。
- 舞台における鈴木さんの“声”も、ファンを魅了する大きな要素だと思います。蔵馬を演じるにあたっては、緒方恵美さんの声を意識された部分もあったのでしょうか?
- 作品によって(声を)意識する割合は違うし、自分に出せる声質と出せない声質があるんですけど、僕もアニメシリーズをずっと見ていた人間で、緒方さんの蔵馬の声ってすごくカッコいいんですよね。
最初に考えたのは、同じ声にはできないけれど、緒方さんの声のよさや緒方さんがされていた役作りを自分も取り入れることで、アニメを見ていた方にとっても舞台が見やすくなるかもしれないなということ。緒方さんの声の特徴は、感情によって抑揚が変化する部分だと感じたので、そこは勉強して取り入れるようにしました。 - 鈴木さんなりの蔵馬を演じるうえで大切にされていたことは?
- 原作が長編なので、今後舞台も続編を作っていくことは可能ですし、僕らはそれを望んでもいます。ですが、南野秀一(妖狐である蔵馬が人間界で肉体を借りている存在)の中学時代を描けるのは今回の作品だけなんですよね。
この頃はまだ(浦飯)幽助(演/崎山つばさ)とも飛影(演/橋本祥平)とも出会っておらず、ある意味“運命の分岐点”と言える時期だったのかなと。自分が妖狐であることを打ち明けることなく、人間としてうまくやっていけるんじゃないかといった蔵馬の繊細な思いを表現したいと考えていました。
同時に、蔵馬を魅力的に感じたのもこの部分。「もしかしたら、このまま平穏に暮らせる未来があるんじゃないか?」という淡い期待を抱いていたのに、運命が変わっていくシーンと、母親とのシーンですよね。母親に「(僕は)ここにいるよ」と言うシーンがあるんですけど、蔵馬にとってはめずらしい発言なんじゃないかなと、大切に演じました。
2.5次元に対する認知が広がったのはうれしい
- 舞台の合間を縫って、映像作品にも次々と出演されました。WOWOWでのドラマ『虫籠の錠前』、地上波での『カフカの東京絶望日記』と、いずれも主演のドラマでした。
- 『映画刀剣乱舞』の頃から、映像の世界でもお芝居する機会をいただけて、しかも撮影時期がまとまっていたことが僕にとってすごく大きかったですね。
これが年1回くらいの出演になってしまうと、さすがに前に学んだことを活かすには時間が空きすぎてしまうのでね。タイトなスケジュールの中で映像作品に挑戦して気づいたこと、勉強させていただいたことが確実にありました。
テレビでの動きって画角を考えているので、普段の生活での動きよりも小さくなっている部分があると思います。それとカット割りがあるので、一連でしゃべっているように見えるシーンでも、実際はいくつもの角度から何回も撮っているんですね。カットがかかって、気持ちをもう一度作って…とやっていくんですが、舞台だと一連なので。
同じお芝居を積み上げていく映像のほうが、僕にとっては難しいんですが、そこが魅力でもあると思います。 - 近年、2.5次元作品に出演されていた俳優さんが、地上波のドラマや映画に出演する機会が増えたと思います。こうした流れについてはどのように受け止めていますか?
- 昔から「映像をやりたい」という人は多かったので、それが実現するのはいいことですよね。全体的に、多くの人が望む道にシフトしているのかなと思います。それだけ、この1年で2.5次元というジャンルに対する認知が広がったということでもあり、すごくうれしいですね。
作品を見てくれる人に「演劇は素敵な世界だよ」と伝えたい
- 演劇というジャンルの中でも、さまざまなジャンルの作品に出演される機会が増えてきました。3月にはミュージカル『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』が控えています。
- もともと、僕は幅広い作品に挑戦したい思いを持って活動してきました。ミュージカルというジャンルは初挑戦で、未知の部分が多いのですが、僕の作品を見に来てくださるお客さんにとっても、新しい世界を見ていただく機会になるのかなと思います。とにかく「演劇は素敵な世界なんだよ」ということを届けたいです。
どうしても敷居が高く感じてしまい、「行ってみたいけど、なかなかひとりじゃ…」と一歩が踏み出せない方が多いと思いますし、ミュージカルに対してもそういう思いを抱いている方って多いと感じます。それを取り除きたいのが第一にありますね。
そういう意味で、最初に演劇を見てもらうきっかけとして、2.5次元はいい架け橋になっていると思うんです。そこで育ててもらった人間として、今度はミュージカルを通して業界に貢献できればうれしいですし、個人的にもこの作品をきっかけに成長できたらと思います。 - 具体的にどんな成長を遂げたいですか?
- 僕自身、ずっと「歌は苦手」と言い続けてきたのでね…。いまも苦手意識はあるんですけど(苦笑)。いま歌の練習をさせてもらって、昔よりは楽な気持ちで歌えるようにはなっていて、モチベーションを高く保てているので、すごくいい傾向だなと感じています。
- Wキャストで主人公の青年・シーモアを演じるのは三浦宏規さん。おふたりが同じ舞台に立つことがないのは残念ですが、同じ作品に出演されるということで、いかがですか?
- じつはまだ三浦さんにお会いしたことがなくて、早く会いたいです! 僕にとっては、ミュージカルの“先輩”ですから、学ばせていただくことが多いだろうと思います。僕は人見知りタイプなので、今回、最初に打ち解けたい方でもありますね(笑)。
- さらに、来年2月公開の映画『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』への出演も発表され、舞台以外で鈴木さんを見る機会があることもうれしいですね。
- 『虫籠の錠前』や『カフカの東京絶望日記』とは異なり、主演とは違うかたちでいい意味でリラックスして作品に臨むことができました。
前作も話題になっていましたが、何より、成田 凌さんのお芝居が心に引っかかったんですよね。あの狂気がスゴいなと。僕の役は…まだ言えないこともあって自分のことは置いといて(笑)今作はパワーアップしています! すごく刺激的で引き込まれますよ!
30代になり、現場での頼られ方が圧倒的に変わった
- 前回のインタビューの際、2018年は「勉強の年だった」とおっしゃっていました。改めて2019年はどんな1年でしたか?
- 去年から引き続き、新しい挑戦が多かった年であり、加えて新しい“発見”が多かった年だったのかなと思います。これまでに経験したことのない現場で学べたこともあったし、先ほども言いましたが、舞台の魅力を改めて実感した1年だったのかなと。
- ここ数年「30代になっていかがですか?」と聞かれることが多かったかと思いますが、気づけば来年で30代も折り返しです。
- ここまで来ると30代が少しわかってきたかなという気がしますね。なった直後に「いかがですか?」と聞かれたときは驚きしかありませんでしたが(笑)。
- どんな変化を感じていらっしゃいますか?
- やはり現場での頼られ方が圧倒的に変わったのかなと思いますね。以前はそこまで先輩・後輩の差を感じていなかったけど、いま、20代半ばの俳優さんと共演すると「10歳も離れてるんだな」というのを20代の頃よりも実感するようになりました。それに、そこで先輩としてしっかり応えられる言葉を用意しないといけない年齢なんだなと感じるようになりました。
- 最後に、プライベート面での2020年の抱負を教えてください。
- 何でしょうね…。「旅行」と言ってもたぶん実現しなさそうなので(苦笑)、実現できるものがいいなぁ…。
来年はオリンピックイヤーだから、気になった競技を調べて、実際に趣味にできるかどうか検討してみたいと思います!
- 鈴木拡樹(すずき・ひろき)
- 1985年6月4日生まれ。大阪府出身。AB型。2007年、ドラマ『風魔の小次郎』(TOKYO MXほか)で俳優デビュー。2009年に『仮面ライダーディケイド』(テレビ朝日系)で剣立カズマ/仮面ライダーブレイドを演じる。舞台では、『最遊記歌劇伝』シリーズ、『刀剣乱舞』シリーズ、劇団☆新感線の『髑髏城の七人』Season月≪下弦の月≫、舞台『No.9 −不滅の旋律−』や、アニメと舞台で展開した『どろろ』に出演。ドラマ『虫籠の錠前』(WOWOW)、『カフカの東京絶望日記』(MBS)と映像作品でも主演を務めた。2020年は出演映画『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』が2月21日に公開され、主演ミュージカル『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』が3月に上演される。
サイン入りポラプレゼント
今回インタビューをさせていただいた、鈴木拡樹さんのサイン入りポラを抽選で3名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。
- 応募方法
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— ライブドアニュース (@livedoornews) December 17, 2019
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・応募〆切は12/23(月)12:00
インタビューはこちら▼https://t.co/IxX7EcEjin pic.twitter.com/zC2ICTHqhp- 受付期間
- 2019年12月17日(火)12:00〜12月23日(月)12:00
- 当選者確定フロー
- 当選者発表日/12月24日(火)
- 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
- 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから12月24日(火)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき12月27日(金)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
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