2.5次元舞台、脱出ゲーム、山手線ジャック……制作陣が目指す“『FGO』のある生活”

2004年発売のPCゲーム『Fate/stay night』より始まった、ゲームブランド「TYPE-MOON」による『Fate』シリーズ。

2015年7月末に配信されたシリーズ初のスマホゲーム『Fate/Grand Order』(以下、『FGO』)は、これまで『Fate』シリーズに登場したサーヴァント(魔術師たちが使い魔として召喚した、過去の英雄や伝説上の存在)たちが一堂に会するという、お祭り的な側面を持つ。

ストーリーは、主人公である「マスター」が人類を絶滅から救うため、「特異点」として存在する歴史の歪みに時間遡行し、修正していくというもの。その過程で織り成されるキャラクターとの出会いや別れ、歴史や神話を題材とした壮大で美しいストーリーも評判に。シリーズ未経験ながら、この作品を機に“Fate沼”にハマったユーザーも少なくないという。

リリース4周年を迎え、国内で1,800万ダウンロードを越えている。日本を代表するスマホゲームのひとつとなった本作は、毎年のアニバーサリーイベントも大規模で開催している。さらにはリアル脱出ゲームや2.5次元舞台など、「リアルイベント」も次々と開催し、注目を集めている。

今回は『FGO』の宣伝を担当する株式会社アニプレックスの金沢利幸氏と、ディライトワークス株式会社の“バスター石倉”こと石倉正哲氏にインタビュー。トップクラスの売上を誇る『FGO』が、リアルの場でも積極的にイベントを開催する意図を聞いた。

撮影/西田周平 取材・文/原 常樹
▲『Fate』シリーズの軌跡を追ったムービー。『FGO』では各作品で活躍したサーヴァントたちがオールスターで登場する。

『FGO』リリース時の宣伝担当は、僕らふたりだけでした

金沢利幸(かなざわ・としゆき)
1982年生まれ、東京都出身。2007年、株式会社アニプレックスに入社。現在は企画制作第2グループの課長として、『Fate/Grand Order』の宣伝を担当。過去に携わった作品に、『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』、『魔法少女まどか☆マギカ』など。
    石倉正啓(いしくら・まさひろ)
    1974年生まれ、神奈川県出身。2014年、ディライトワークス株式会社に入社。現在は「FGOスタジオ」のスタジオ長として、『Fate/Grand Order』の開発・運営・宣伝の責任者を担当。同作のイベントに登壇する際には、マーケティングディレクターとして「バスター石倉」名義を使用。
      今回は『Fate/Grand Order』宣伝担当のおふたりにお話をうかがっていきます。まずはこのプロジェクトにいつ頃から携わっているのか、改めて教えてください。
      石倉 ふたりともゲームがサービスインする前からですね。宣伝周りでいえば、アニプレックスでは金沢さんが最古参ですし、ディライトワークスでもやっぱり僕がいちばん古い。

      『FGO』プロジェクトの発表会があったのが2014年7月。僕はまだ別の会社にいたんですけど、現社長の庄司(顕仁氏)に見に来てほしいと言われて発表会に参加しました。そのあと、ディライトワークスに入社することになって。当時の宣伝担当は、僕と金沢さんのふたりだけでした
      金沢 正直、当時はここまでの規模のものになるとは思っていませんでしたね……。
      石倉さんの「マーケティングディレクター」という肩書きについては、文字どおり宣伝マーケティングの責任者という捉え方でよいのでしょうか?
      石倉 そうですね。会社では開発に携わるなど別の顔もありますが、イベントなどで使用している“バスター石倉”としては、まさにそういった役割を果たさせてもらっています。
      金沢 僕はもともとアニプレックスの中でアニメの宣伝をやっておりまして、TVアニメ『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』を、高橋祐馬さんという宣伝プロデューサーと一緒に担当していました。他にもいろいろな作品を担当していましたが、今は『FGO』が中心になっています。
      アニプレックスとディライトワークス、それぞれの会社でひとつのタイトルの宣伝をしているという形なんですね。
      金沢 2社に分かれて宣伝をする形式だと、それぞれ得意な部分を活かせるというメリットがあるんです。
      石倉 アニメを使ったCMやTVアニメそのものを作るのはアニプレックスさんの十八番ですし、一方でウェブ周りはディライトワークスが担当しています。リアルイベントに関しては合作ですね。

      数万人の方が足を運ぶフェスともなると規模も違うので、チームとして一緒にやらないと手が回りません。宣伝周りのスタッフは、両社合わせて10人くらいになりましたかね?
      金沢 最初はふたりだったことを考えると、だいぶ増えました(笑)。

      フェスでは“FGOらしさ”を感じてもらえなければ意味がない

      アニバーサリーイベントは、2周年を迎えた2017年以降は「Fate/Grand Order Fes.」として、幕張メッセにて2日間にわたり開催。リアルイベントならではのアトラクションも多く、毎年、数万人のユーザーが参加している。1年でもっとも盛り上がるリアルイベントともいえるだろう。
      「FGO Fes.」の準備は、いつ頃から始めるのでしょうか?
      石倉 まずは企画よりも先に会場をおさえます。1年くらい前におさえておかないと埋まってしまうので……。さらに来年はオリンピックイヤーなので、輪をかけて大変です(笑)。
      金沢 なるべく考えないようにしています……。
      石倉 今年のフェスは終わったばかりですが(※取材が行われたのは9月中旬)、例年の流れであればそろそろ「冬のリアルイベント」の準備もしなければいけません。さらに「京まふ(京都国際マンガ・アニメフェア)」や「マチ★アソビ」もあって……となるとやることは山積みで。
      それらのイベントでも、ユーザーを喜ばせる新情報を大量に発表していますよね。毎回大きな話題となりますし、準備も大変そうです…。
      石倉 はい。なので来年のフェスの企画に本格的に着手できるのは、年末から年始にかけてですね。
      金沢 3月末には「AnimeJapan」もあるのでそちらも同時進行になりますが、フェスのために稼働できるのは、実質8ヶ月くらいでしょうか。
      石倉 それくらいですね。コンセプトは、「冬のリアルイベント」の仕込みが終わったあたりから考え始めます。
      今年のフェスは「テーマパーク」が題材ということで、これまでにない魅力にあふれていたかと思います。
      金沢 昨年と同じことをやるのではなく、作品の広がりにあわせて宣伝としての切り口も広げられるように、今回もさまざまな新しい試みを盛り込みました。
      石倉 テーマパークといえば、“日本の東と西にある大規模なアレ”をイメージする人が多いだろうと(笑)。そのイメージから大きく外れてしまうとテーマパーク感がなくなってしまいますし、かといって“『FGO』らしさ”もなければいけない。両者の融合がいちばん苦労したところかと思います。
      金沢 本来のテーマパークと比べてしまうと、ホール内という閉鎖的な環境は見劣りしてしまう部分ではありましたが、いかにそう感じさせないかにはとくに気を遣いました。結果的に、多くの方に満足していただけたんじゃないかと思います。
      ▲左上に見えるのが「グランドキャッスルステージ」。キャストトークや新情報の発表が行われたりと、全来場者の注目が集まるステージだ。画像の右手奥にも、展示エリアに物販コーナー、フードコートなど、魅力的な空間がまだまだ続いている。
      テーマパークといえば、昨年に開催されたゲーム内のハロウィンイベント「神秘の国のONILAND!! 〜鬼の王とカムイの黄金〜」を連想した方も多いかと思います。
      金沢 「ONILANDを再現しているのでは?」と思われないよう、コンセプトの見せ方・ロゴなどから趣向を凝らしました。ゲームとは違ったベクトルで楽しみを提供できればいいかなと。
      石倉 フェスはあくまで、お客さまに楽しんでもらう場の提供でしかありません。会場にあるさまざまなコンテンツを通じて、お客さまに『FGO』らしさを感じてもらえなければ意味がない、と思っています。

      だからこそ、各コンテンツは毎年ギリギリまで調整を続けていますね。施工周りは、わりと早めに決まるんですけど、中に置くコンテンツや映像作品が完成するのはだいぶあと。とくにステージは直前まで煮詰めます。
      金沢 (ステージイベントで使用する)台本やスライドもギリギリまで調整しますし。
      石倉 会場に入ってからスライドの修正をすることもあるんですよ。

      入場に時間がかかるなら、せめて快適な時間を提供したい

      今回のフェスで、とくにユーザーから支持されたコンテンツはありますか?
      金沢 今回のフェスでは独立したエリアとして、ボイスコンテンツなどが楽しめる「カルデアパレス」、ゲーム内イベントの世界観を実体化した「ルルハワアイランド」や「ハロウィン★タウン」、関連ゲームを遊べる「バトルアリーナ」を設けました。

      これらのエリアについては、ユーザーアンケートの結果をチェックしてみたところ、キレイにバラけましたね。やっぱりいちばんは、ステージですけど。
      石倉 キャストさんも出演しますし、初出のゲームの情報もあるのでステージが人気なのはわかります。そこを除けば、突出して人気が分かれたわけではなく、平均的に他のブースを楽しんでいただけたのかと思います。
      金沢 どこにも楽しんでもらえるポイントがあったようでホッとしています。
      石倉 テーマパークという形を考えても、人気が分散するというのは成功といっていいでしょう。
      上段:グランドキャッスルステージ
      下段左から:バトルアリーナ、ハロウィン★タウン
      上段左から:カルデアパレス、ルルハワアイランド
      下段:ウェルカムストリート
      イベントを成功に導くためには、安全面のケアも必要だったかと思います。熱中症対策としてヒヤロンやうちわを配布したのも、そういった意味合いがあったんでしょうか?
      石倉 そうですね。ヒヤロンとうちわは去年も配布していたんですが、そもそも台風が直撃していたので、じつは暑さよりも雨風をいかにしのぐかが大変だったんです……。でも、今年はおかげさまで天候にも恵まれまして。
      金沢 同時に熱中症の危険性も増しましたからね。お客さまは安全が確保されなければ楽しめませんし、そこのケアは最優先事項だと考えています。
      石倉 万が一の事態を発生させるわけにはいかないので……。だからこそギリギリまでお客さまのことを考えます。待機列の導線もトコトン詰めますし、どこに並べばお客さまが涼しいのかということも考えつつ。
      快適に並べるように?
      石倉 はい。来場者の数がここまで多くなると、入場まで時間がかかってしまうという状況は、さすがに防ぎようがありません。だとしたら、その時間をどうやって快適に過ごしてもらえるのかが大事かな、と。
      同時に、スタッフさんの安全確保も大きな課題になるのでは?
      石倉 もちろんです。そこも何かあってはいけないので、イベント中も徹底して分析しています。
      途中で改善が必要なところが見つかった場合は、どのように対応されているんでしょうか?
      石倉 リアルタイムで発生している問題点はインカムで共有して、その日のうちに対処できる部分はアップデートしていきます。ただ、実際にお客さまが入ってみないとわからなかった問題点も出てくるので、洗い出しも重要な作業ですね。
      ミーティングも密に?
      石倉 2日間、朝礼と終礼を設けて「問題点と、改善方法や対策」を共有します。指揮系統でいえば、各エリアに配置したリーダーが40人くらいで、僕ら委員会のメンバーを加えると50人くらい。そんな大人数が1部屋に集まって、待機列からブースのことまで問題点を洗い出していきます。
      金沢 そして翌日までには改善すると。実際、今回のフェスも1日目と2日目でオペレーションが変わっていたりします。
      来場した方はTwitterなどでも多く感想をつぶやかれていると思います。SNSをチェックして改善のヒントにすることもあるんでしょうか?
      石倉 はい。なるべくチェックするようにしています。
      金沢 たとえば、「ここにもっとイスがあればいいのに」みたいなツイートを見つけられれば、ホスピタリティの面で、よりフェスを充実させられる。なので、時間があるときはタイムラインを追いかけるようにしています。

      さすがに100%チェックしてケアすることはできませんが、多くの方が同じことをつぶやいていれば、それだけ目に留まって改善に動きやすくなります。良いことでも悪いことでも、つぶやいてもらえることがありがたいですね。
      石倉 フェスに限った話ではありませんが、盛り上がったお客さまが、自発的にSNSでコンテンツについてつぶやきたくなるという構図こそが、僕らの理想です。
      お客さまに自発的に動いてもらう。
      石倉 そうですね。逆に、僕らがお客さまにこう動いてほしいと思っても、その通りにはいきません。だからこそ、常に新鮮な驚きを持ってもらえるように準備し続けるのが僕らの役割です。

      公式コスプレイヤーに大事なのは、サーヴァントへの理解

      オフィシャルのコスプレイヤーさんの再現ぶりも大きな話題となりました。こちらの選考基準がどうなっているのかも気になります。
      石倉 そこは僕が選んでいます(笑)。あっ、もちろん僕の一存というわけではなく、「今年はどのサーヴァントを追加しようか?」というミーティングはしますね。

      たとえば今回は、女性のお客さまが増えたことを鑑みて、男性サーヴァントを追加しようという話になりました。すでにギルガメッシュやロビンフッドという男性サーヴァントがいましたが、そこに追加するとなったら第2部から登場したサーヴァントが好ましい。さらに「メガネキャラっていなかったよね……?」という流れから、シグルドに決まったわけです。
      コスプレイヤーさんにも、複数人の候補がいたりするんでしょうか?
      石倉 そうですね。キャスティングをするうえで大切なのは、そのサーヴァントがお客さまにとって違和感がないほどに酷似していること。今年のシグルドは「似てる!」と大好評でよかったです。あとは、『FGO』をちゃんとプレイしているかというのも大きかったりします。

      オフィシャルのコスプレイヤーとなると必然的に注目も浴びますし、サーヴァントへの理解が浅いとポージングや立ち居振る舞いで粗が出てしまいます。そうするとお客さまにも違和感を与えてしまう……。だからこそ、手を振るような所作ひとつとっても、「そのサーヴァントがそこに実在している!」と思ってもらえることが大切なんです。
      金沢 僕も「おぉっ!!」となりました(笑)。アニプレックスの宣伝スタッフは5人全員が男性でコスプレなどにはくわしくないんですが、逆にディライトワークスさんは女性の宣伝スタッフが多く、コスプレに明るい方もいらっしゃるので、そこはお任せしようと。
      石倉 コスプレに関してはそうですが、リヨさんの「ぐだ子(※)」の着ぐるみを出そうって言い出したのは金沢さんですよね?(笑)今や世界を股にかけて大活躍じゃないですか(笑)。
      ※リヨ氏による『マンガで分かる!Fate/Grand Order』に登場する女性マスターの通称で、2頭身で描写されており、ゲームや運営に毒を吐きまくるなど、カオスな言動を繰り返す。
      金沢 いやぁ……(笑)。当初はあそこまでデカくなると思っていなかったんですけど。
      スタッフに襲いかかったりするなど、あのフリーダムな動きを見ていると、マンガの中から本当に出てきたのかと思わせられますね。
      金沢 (笑)。いずれにしても、イベント会場の場にいるのはお客様もスタッフも作品のことを愛してくださっている方ばかりなのは、間違いありません。
      2020年もどんなフェスになるのか楽しみです。今年の夏イベントは『水着剣豪七色勝負/ラスベガス御前試合』。カジノみたいなエンターテインメントも入れられたら、おもしろそうですが(笑)。
      石倉 ああ、そうですね(笑)。
      金沢 そのまま海をテーマにしちゃうのもアリでしょうか。
      石倉 まぁ、とにかく会場しだいです!(笑)

      24時間365日、“『FGO』がある生活”を提供するために

      近年の『FGO』は、フェス以外にもさまざまなリアルイベントを展開している印象です。2.5次元舞台やリアル脱出ゲーム、オーケストラコンサート、コラボカフェなどジャンルが多岐にわたっているのは、もっと多くの人にコンテンツを知ってほしいという意図があるからなんでしょうか?
      金沢 はい。タッチポイントをさまざまな部分に作ることで、まだゲームを遊んだことがない方にも「プレイしてみようかな」と思ってもらえたらなと……。一方で、すでにゲームを遊んでくださっている方には、こういう魅力もあるんだよと紹介したかったんです。
      石倉 僕らの理想を言うならば、“『FGO』がある生活”を提供していきたいんです。

      ゲームの『FGO』はみなさんが魅力的に感じてくれているとはいえ、小さなスマートフォンの画面でしか楽しめません。でも、リアル脱出ゲームだったら、謎解きを通じて、マスターとなる感覚をリアルに肌で体験してもらえる。アニメだったら、『FGO』の世界を別の角度からも覗ける。

      そんな感じで、24時間365日、『FGO』を楽しんでもらえたらいいなと。
      『FGO』が緻密に作り込まれた物語・世界観だからこそ、さまざまな展開が可能だというのもわかります。ただ、設定が精巧だからこそ、落とし込むのが難しい媒体もあるのでは?
      石倉 そこはもう、1つひとつこだわっていくしかありません……。『FGO』から派生したスピンオフであればまた話は別ですが、本来の世界観をベースにするときはそれを崩さないことが大前提。そういう意味でも、『Fate/Grand Order THE STAGE』なんかは落とし込むのが大変だったと思います。
      ▲左から、2017年上演の『Fate/Grand Order THE STAGE -神聖円卓領域キャメロット-』、2019年上演の『Fate/Grand Order THE STAGE -絶対魔獣戦線バビロニア-』。
      金沢 いや、本当に……。あの世界を実体として具現化するためにはどうすればいいのかと舞台制作チームは悩みも多かったと思います。そのうえでも必要だったのが、役者さんたちの理解。コスプレイヤーの話ともつながりますが、登場キャラを演じていただく役者のみなさまにはあらかじめしっかりゲームをプレイしてもらったと担当から聞いています。
      現役プロレスラーとして活躍している赤井沙希さんを、ルチャリブレを愛するという設定のケツァル・コアトル役に抜擢したのも、サーヴァントの卓越した戦闘能力を表現するうえで、最高のチョイスだと感じました。
      石倉 いやー、本当に華麗な空中殺法を見せていただきました! 作品の理解と肉体的な技術、両方が備わっているからこその役どころというか。
      金沢 赤井さんに限らず、関わってくださる方1人ひとりが作品に真摯に向き合ってくださっているのは本当にありがたいです。

      脱出ゲームでは、リアルな体験を提供することを重視

      SCRAPさんとのコラボレーションであるリアル脱出ゲームも、毎回注目度の高い公演となっています。
      石倉 これまで2回公演をさせていただきましたが、いかにマスターとしての体験を提供できるかを、とくに重視しているコンテンツです。

      SCRAPさんの中にも『FGO』を愛してくださっているスタッフがいるので、「このサーヴァントはこういうスキルを持っているので、こういうタイミングで活躍できると思うんです」みたいな提案もいただくようになってきました。
      舞台をベーカー街、ピラミッドにしたのも、SCRAPさんからの提案なんでしょうか?
      ▲左から、2018年開催の「謎特異点Ⅰ ベーカー街からの脱出」、2019年開催の「謎特異点Ⅱ ピラミッドからの脱出」。
      石倉 そこはいただいたアイデアをもとに、ディスカッションを重ねた結果ですね。

      まず「謎特異点Ⅰ ベーカー街からの脱出」は、何よりホームズとモリアーティがいるという点を重視しました。謎解きという分野ともマッチしますし、彼らのライバル関係をうまく使えばお客さまもスッと(世界観に)入れるだろうと。

      「謎特異点Ⅱ ピラミッドからの脱出」は、「その空間から脱出する想像ができるか?」という観点からピラミッドを選びました。

      第1弾のときに、『FGO』を知らない人には「ベーカー街」といってもあまりピンと来なかっただろうなという反省点があって。それならば第2弾ではもっと間口を広くして、「『FGO』は知らないけど、何かおもしろそうだな」と感じてもらえるようにしたかったんです。
      たしかに『FGO』とは関係なく、「ピラミッドからの脱出」という謎解きゲームがあってもおかしくはありませんし、イメージもしやすいです。
      石倉 開催地域を5都市から8都市に増やしたので、新しいお客さまにも遊んでいただきたいなという気持ちもありました。
      次回の公演も楽しみです。そろそろ日本のサーヴァントの活躍も見たいような……?
      石倉 そうですね(笑)。
      金沢 ユーザーアンケートでも「日本のサーヴァントを見たいよー」という声はいただいています。そういった意見を参考にしつつ、次のことを考えるのは僕らも楽しいですね。
      そして、アナログゲームでは、フィギュアとボードゲームを融合させた「Fate/Grand Order Duel -collection figure-」も大きな評判に。
      金沢 アニプレックスの商品化企画としてコレクションフィギュアの企画がありまして、そこにボードゲームの企画を『FGO』プロジェクトのクリエイティブディレクターである塩川(洋介)さんが考えられていて、このふたつを掛け合わせられないかということで誕生しました。

      海外でも多くの方に支持していただいているようで、新たな楽しみを提供できたのではないかと思っています。
      石倉 海外はアナログゲームに対する熱量がとくに高いですよね。ロサンゼルスで単独イベントをやらせていただいたときも、このためだけに1〜2時間待ちができたみたいで。
      金沢 相手がいないと遊べないゲームなので、対戦を主目的にイベントに来場する方もいらっしゃるんです。コアなユーザーに対して「場所」を提供できたという点でも、イベントの意義を確認できました。

      知名度を使って『FGO』を売るつもりは、まったくない

      新規層を開拓するという意味では、『FGO』を知らない人に向けてのインパクトがあるアピールも大切かと思います。とくに、8月の山手線ジャックに遭遇して驚いたという方は多いのではないでしょうか。
      金沢 あれは4周年だからこそのプロジェクトでしたね。
      石倉 過去に2周年のタイミングで、山手線のラッピングトレインもさせてもらっています。当時はまだホームドアが行き渡っていなかったので、ホームからラッピングもキレイに見えました。ただ、最近はほとんどの駅でドアがついているので……。それなら、今度は内側を飾ろう!と。
      金沢 かなりこだわりましたよね。
      石倉 「電車に乗りながら『FGO』を感じられるような形を提供できたらいいよね」という気持ちで、中吊り広告はもちろん、壁面やモニターの映像に至るまでこだわりました。映像なんかは、山手線で流すには異例の長さなんですよ。何分でしたっけ?
      金沢 フルで観たら20分ぐらいはかかります。
      石倉 半周近くしないと終わりません(笑)。ただ、山手線は環状線だから行って帰ってくる必要もないし、乗りっぱなしでずっと堪能することもできます。そして、利用されている方が多いので生活の中にも溶け込みやすい。あらゆる意味で“『FGO』のある生活”にはうってつけでした。
      映像といえば、『FGO』のCMには芸能人がいっさい起用されていないのも特徴的です。これは『FGO』のマーケティングと合わないということなんでしょうか?
      石倉 そうですね。芸能人の知名度を使って売ろうという考え方は、最初からまったくありません
      金沢 CMを打ったときに最初に目にするのは、普段からゲームを遊んでいるユーザーですので、ファンの方に寄り添わないことをするのはよくないなと……。

      これまでお話してきたリアルイベントもそうですが、作品の世界観をちゃんと残せていないと「何か『FGO』が変なことやってるぞ」と、マイナスな印象を与えかねないなと感じたんです。
      石倉 そういう意味では、声優さんに関しても前面に立たせるようなPRはしていません。もちろん、ゲームを始めてキャラクターのプロフィールを見ればちゃんとCVの記載はありますが、初出の段階からむやみに出すようなことは避けています。

      決して、芸能人や声優をキッカケにコンテンツへ引き込むやり方を否定するわけではありませんが、『FGO』のターゲティングはあくまで“作品の世界観を好きになってもらうこと”。とにかくそこを徹底しています。
      それが、美麗なアニメーション映像を用いたCMに集約されているわけですね。
      金沢 アニプレックスとしてもアニメーション制作のノウハウこそが強みなので、他のゲームタイトルにはないくらいアニメーションを活かしていこうと。なので、CM映像の種類もかなり多いほうです。

      イベントなども含めると1年間で4〜5本は作っていますし、汎用のゲーム紹介も1年ごとに更新していますね。曲もすごくキャッチーなものばかりなので、引き込まれる方も多いのではないでしょうか。

      不具合もご意見も届くSNSは、運営にとって大きな存在

      フェスの話の中でSNSの話題が出ましたが、スタッフのみなさんは普段からSNSをチェックされているんでしょうか?
      石倉 Twitterで『FGO』に関するどんなことがつぶやかれているのか、1日に何回もクローリングしてまとめるような仕組みがあるんです。

      これだけ多くのユーザーがいると、たとえQAやデバッグをしていても、お客さまの決まった環境下でなければ起きないゲームのバグもあったりします。そういった情報を収集するうえでも、SNSは大きな存在です。

      不具合だけではなく、内容に対するご意見もこちらの耳に届くので、それが今後のアップデートに活かされることもあるかと思います。
      新情報が発表されるやいなや、『FGO』に関連するワードがトレンドを席巻することもあります。時間帯的には18時以降が多いですが……。
      金沢 18時の情報更新は狙っていますよね(笑)。
      石倉 ユーザーのみなさんも時間を覚えているので、(18時に情報が発表されることで)安心感もあるだろうと(笑)。

      ニコニコ生放送やイベントなどの特殊な状況は別にして、ゲーム内で何かをアップデートするときも18時に合わせて出すようにはしています。ただ、メンテナンスの中で調整しきれない不具合があると、間に合わなくなってしまいますが……。
      新章をフィーチャーした特集番組の終了と同時に、ストーリーが配信されることも増えてきましたよね。
      ▲『Fate/Grand Order カルデア放送局 Vol.11 黒き最後の神 配信直前SP』より、編集部によるスクリーンショット
      石倉 あれは大変なんですよ……。
      金沢 本当に大変で……。開発チームの方ががんばってくださるおかげです。

      リアルでも「好き」を共有できれば、より強い絆が生まれる

      今や1,700万ダウンロードを超えて、さらに伸びていく勢いですが、具体的に、新規層のユーザーはどれくらいの速度で増えているんでしょうか?
      石倉 今のユーザーの半数以上が、ここ1〜2年ぐらいで『FGO』を始めた人たちというくらいの比率になってきました。

      すでに4年経っているタイトルではありますが、今から始めるのだと遅いということはありません。ユーザーアンケートを取ってみると、「友達に勧められてプレイし始めた」というユーザーが、他の理由で始めたユーザーよりも圧倒的に多いんです。
      そうなんですね! これだけTwitterでも話題になっているコンテンツなので、SNS由来で始めるユーザーが多いのかと思っていました。
      石倉 僕らは『FGO』というタイトルを広めて浸透させることはできますが、最後のひと押しになるのは「やってみなよ。わからなかったら教えるから」という周りの言葉だったりするわけで……。

      「マーケティングディレクター」という偉そうな肩書きをいただいている僕からしたら、お客さま自らが作品を広めてくださっているという環境には感謝しかありません。
      新規層が増えた一方で、昔からシリーズを応援している根強いファンも多いはず。そうなるとユーザー間で温度差が生まれてしまう部分もあるかと思いますが……。
      金沢 たしかに配信開始から遊んでくださっている方と最近始めた方とでは、どうしてもプレイ環境やコミュニティでのレイヤーの違いは出てしまうと思います。だからこそ、リアルイベントでユーザー間の接点を作ることで、コミュニティを形成できるような環境を作れればいいなと思っています。

      それこそ遊んでいる期間に2年ぐらい差があったとしても一緒にイベントに行ったり、ゲームについてティーチングができたり。
      石倉 あとは「召喚」ですね! 社内でもそうなんですが、友達と一緒にガチャを回すと盛り上がれるはずです(笑)。
      金沢 たしかに、そこはキャリアとは関係なく横一線なので(笑)。
      お目当てのサーヴァントを狙う“リアル聖杯戦争”ですね(笑)。『FGO』は関係者の方々もサーヴァントを召喚したりと、自らも楽しみつつ周りに布教しているイメージがあります。
      ▲島﨑信長さん自身が、CVを務めるサーヴァントを召喚・育成したことを報告するツイート。
      石倉 4年という歳月の中で、多くのキャストさんたちも作品を遊んでくださって、しかも、非常にくわしいんですよね(笑)。そういった方々が『FGO』を広めてくださるのは本当にありがたいです。決して僕らがiTunesカードを渡しているわけではありません!(笑)
      キャストのみなさんの影響もありつつ、ファン同士で作品の話をする流れにもつながれば理想的だと思います。「このサーヴァントが好き」とか「このシナリオが好き」とか、そういう話ができるコミュニティがリアルで生まれていけばいいなと。
      なるほど。数々のリアルイベントは、「好き」を共有できるコミュニティを提供してくれるんですね。
      石倉 『FGO』に限った話ではありませんが、「好き」という気持ちを直接共有できる場所があれば、それだけ強い絆も生まれるんじゃないでしょうか。
      最後にぜひ聞きたいのですが、全体構成・シナリオ・総監督を務める奈須きのこ氏が、昨年末のインタビューで「『FGO』の大枠のストーリーが第2部で完結する」とお話されたことが話題になりました。宣伝を担う立場として、おふたりは“終わり”とどのような形で向き合っていますか?
      石倉 奈須さんは最近のインタビューで「第2部のあとのことも考えなきゃね」ともおっしゃっていたので、どうなるかはわかりません。
      金沢 終わりというと、2016年末に第1部の最終章を配信したときのユーザーの一体感がすさまじかったので……。
      石倉 ご存知ない方も増えてきたかとは思いますが、『FGO』のストーリーには、もともと「2016年を最後に、人類は絶滅する」というリアルタイム性が組み込まれていました。
      第1部の最終章が配信されたのは2016年12月22日。ゲーム内と現実の時間をシンクロさせていましたね。
      石倉 当時のユーザーたちは、人類史を終わらせないために協力してレイド形式のバトルに挑み、最終決戦をクリアすることで、リアルタイムでもゲーム内でも2017年を迎えるという、スマホゲームでは前代未聞のギミックが仕掛けられていました。
      金沢 第2部がどういった形で終わるのかはわかりませんが、同じような流れでフィナーレを迎えるというのであれば、その感動を共有できるお客さまがひとりでも多くなるように、僕らは宣伝を続けていきます。
      石倉 そうですね。そのために粛々と宣伝を続けていくだけです。常に新しい情報をお届けしていくので、今はニコ生やイベントを楽しみに……としか言えません!(笑)そちらを期待していただけると幸いです。

      ゲーム情報

      『Fate/Grand Order』
      公式サイト
      https://www.fate-go.jp/
      公式Twitter
      https://twitter.com/fgoproject

      「FGO Fes.2019」グッズプレゼント

      今年8月に開催された「FGO Fes.2019」のグッズを抽選で3名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

      応募方法
      ライブドアニュースのTwitterアカウント(@livedoornews)をフォロー&以下のツイートをRT
      受付期間
      2019年12月3日(火)18:00〜12月9日(月)18:00
      当選者確定フロー
      • 当選者発表日/12月10日(火)
      • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
      • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから12月10日(火)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき12月13日(金)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
      キャンペーン規約
      • 複数回応募されても当選確率は上がりません。
      • 賞品発送先は日本国内のみです。
      • 応募にかかる通信料・通話料などはお客様のご負担となります。
      • 応募内容、方法に虚偽の記載がある場合や、当方が不正と判断した場合、応募資格を取り消します。
      • 当選結果に関してのお問い合わせにはお答えすることができません。
      • 賞品の指定はできません。
      • 賞品の不具合・破損に関する責任は一切負いかねます。
      • 本キャンペーン当選賞品を、インターネットオークションなどで第三者に転売・譲渡することは禁止しております。
      • 個人情報の利用に関しましてはこちらをご覧ください。
      ライブドアニュースのインタビュー特集では、役者・アーティスト・声優・YouTuberなど、さまざまなジャンルで活躍されている方々を取り上げています。
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