「GO TO THE WORLD」の文字がバックスタンドに浮かび上がり、両ゴール裏からは割れんばかりの「We are Reds」のコール――。埼玉スタジアムは、
浦和レッズの逆転でのアジア制覇に向けた機運が最高潮に高まっていた。
この光景に、前日の練習取材で、「僕らはこれまでもたくさんのドラマを埼玉スタジアムで起こしてきた」と語っていた浦和のDF槙野智章の言葉を思い浮かべながら、「本当に何かが起こるのではないか」という高揚感を覚えていた。
だが、その高ぶりは試合が進むとともに小さくなっていった。
優勝に向けて最低でも2点が必要な浦和に対し、アル・ヒラルは球際での強さ、随所で見せる技術、ありとあらゆる面で上回り、攻守で圧倒。試合後に槙野が「久々にコテンパンにやられた」と語るほどに明確な差がそこにはあった。
ファイナルという大舞台で、2度の優勝経験を誇る浦和に何もさせなかったアル・ヒラル。なかでも違いとなっていたのは、前線に君臨したアンドレ・カリージョ、セバスティアン・ジョビンコ、バフェティンビ・ゴミスの助っ人トリオだ。
3人の凄みが顕著になって現われたのが、74分にサレム・アルドゥサリが先制ゴールを決めた場面だ。
興梠慎三からエヴェルトンへのパスを奪ったカリージョが右サイドを一気に突破すると、バイタルエリアに立っていたサルマン・アルファラジへ。ここからエリア内左へパスが送られると、そこでフリーとなっていたジョビンコがダイレクトで中央へ折り返し、サレムがフィニッシュした。この時、浦和のCBを引き連れ、エリア内にスペースを生み出していたのは、ゴミスのオフ・ザ・ボールの動きだった。
いずれも欧州のトップリーグでのプレーした経験を有するアル・ヒラルの助っ人たちの実力を目の当たりにした浦和の選手たちも、そのプレーに圧倒されていた。前述の得点シーンで、カリージョと対峙して完璧に弾き飛ばされてしまった関根貴大は、こう語る。
「カリージョ選手に入る前にうまく守備ではめていければっていうのは話してましたし、入った後も二枚で挟んだりっていうのは意識してました。ただ、チームとしても出来上がってましたし、そこに外国人選手も上手くかみ合って、連係が取れていた。そこが東アジアとは違うなと感じました」
そんな24歳のドリブラーの考えに、エースストライカーの興梠も同調する
「一人ひとりの個人能力は素晴らしい能力はありましたけど、そのなかでも外国人の質は非常に高かった。とくにサイドですね。カリージョ。あの選手を抑えられなかった。ふたりでディフェンスしても切り裂かれていくというか。
数的優位で守備をしてもそこを剥がしていかれる。なかなか止めづらかった。やっぱり自分たちもああいう状況のなかで、ひとりふたりでかわせる力を身につけていかないと」
思い返せば、浦和の2度に渡るアジア制覇の時には、常に傑出した個の能力を有した助っ人外国人がいた。2007年であれば、ロブソン・ポンテとワシントン。2017年はラファエル・シルバだ。
そんな彼らと比べても、ファブリシオとエヴェルトン、それからベンチで戦況を見守っていたマウリシオとメンバーから外れたマルティノスは、明らかに実力で見劣ってしまう。ましてや、アル・ヒラルの3人とはかなりのクオリティーに差があったのは、言うまでもない。
もちろん、全責任が助っ人選手にあったなどと言うつもりはない。だが、本来チームのクオリティーを高め、欠点を補うべき存在である彼らが、アル・ヒラルの3人は対照的にまったくと言っていいほど存在感を発揮できなかったことが、完敗の主因の一つになったのは、間違いないだろう。
近年の浦和は、クラブOBのポンテ氏がゼネラル・ディレクターを務めるポルティモネンセから3シーズン連続で助っ人を補強している。だが、そのパイプが結果に結びついていない以上は、違う路線に舵を切る必要性があるのではないだろうか。
それは結果論ではないかという意見もあるだろう。だが、試合後の取材で、「チームとして、外国籍選手の枠っていうのを上手く使って、強化していく必要性が今後あるのかなと思います」と語った槙野の言葉からも、再び世界へ羽ばたくために、浦和は来るオフシーズンに実力派助っ人を迎え入れる必要があると、筆者は考える。
取材・文●羽澄凜太郎(サッカーダイジェストWeb編集部)
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