by tommyandone
発毛・育毛剤などといった男性向けヘアケア分野の市場規模は日本だけで4430億円もあるとされており、ハゲは多くの人々の頭を悩ませる問題だということがうかがえます。そんな中、ウィスコンシン大学マディソン校の研究者が開発した「ウェアラブル育毛デバイス」は、帽子の下にかぶれるほど薄く柔軟な素材で、バッテリーや充電も不要だとのことです。
Self-Activated Electrical Stimulation for Effective Hair Regeneration via a Wearable Omnidirectional Pulse Generator | ACS Nano
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsnano.9b03912
Electric tech could help reverse baldness
https://news.wisc.edu/electric-tech-could-help-reverse-baldness/
以下の画像は、ウィスコンシン大学マディソン校で工学を研究するXudong Wang教授らが開発したウェアラブルな育毛デバイスのプロトタイプです。全長数cmほどで、曲げることも可能なほど柔軟な素材でできているので、頭皮に貼り付けてその上から帽子をかぶることができます。
![](https://image.news.livedoor.com/newsimage/stf/9/6/96dde_88_c651f4de73e4ebe2a7294cf64e29ccd2.jpg)
実際に男性の頭にデバイスと帽子を被せた様子がこれ。左側の人物が開発者のXudong Wang教授です。
![](https://image.news.livedoor.com/newsimage/stf/9/a/9ae83_88_b07b83a2f9c63c2e157b537b85772ce2.jpg)
このデバイスは2つのパーツで構成されています。1つは電気パルスで皮膚を刺激する電極です。この電極が皮膚に低周波の電気パルスを放出すると、新しい血管の形成に関係する血管内皮細胞増殖因子と、皮膚を構成する主な細胞である角化細胞(ケラチノサイト)の増殖に影響するケラチノサイト増殖因子の分泌が促されます。その結果、毛包の数が増加し、毛髪が再生されるとのこと。
Wang教授は実際に、遺伝子操作により毛がない状態にしたマウスの発毛に成功しています。以下のマウスの画像のうち、上段は四角形の電極を装着させ、下段はW字型の電極を装着させたものです。装着から2週間が経過した一番右の列のマウスを見ると、上段のマウスは電極を貼った耳と耳の間に満遍なく毛が生えていて、下段のマウスはW字型に毛の房が生えていることから、実際に電極の効果によって毛が生えていることが分かります。
![](https://image.news.livedoor.com/newsimage/stf/6/0/60569_88_d4240c1803d52053de68d05ad849e924.jpg)
この電極から発せられる電気パルスは非常に低エネルギーで、皮膚のごく薄い表層にしか作用しないので、性欲減退などの副作用がある「フィナステリド(商品名:プロペシア)」などの薬剤と違って副作用はほとんどなく、しかも2種類の市販薬より効果が高いことが実験で確かめられています。あくまで休眠した毛包を再活性化させるため、既に完全にハゲになってしまった場合には効果が望めませんが、脱毛が進行中である場合は大きな効果が見込めるとのことです。
そして、デバイスを構成するもう1つのパーツが電極に電力を供給するナノ発電機です。このナノ発電機が「装着者の体の動き」から電気を集めて電極にエネルギーを供給するため、バッテリーやケーブルが不要な「ウェアラブル育毛デバイス」が実現しました。
Wang教授は「電気刺激には多くの効能がありますが、私たちがこのデバイスを開発するまで、効果的な刺激を与えられる薄型デバイスの実現につながるソリューションはありませんでした」と話し、体表に貼り付けるだけで使えるウェアラブルデバイスにはさまざまな用途への活用が期待できるとの見方を示しました。