外資系企業の相談状況について、人材紹介会社エンワールド・ジャパンでRPOサービス「enPower」の責任者を務める西沢サムエル氏は「採用コストの低減や採用期間の短縮を迫られている日本オフィスから、人材紹介に依存した採用手法やリクルーティングプロセスを見直したいという相談が増えています」と話す。
同社ではこうした相談に対して包括的なサービスで応えており、「グループ会社エン・ジャパンが運営する大規模な求職者データベースやHRテクノロジーのプロダクトを活用できる強みがあります。オンサイトリクルーターを顧客企業に派遣するだけでは成果を上げることが難しいため、ソーシングやデータ分析の専門家などを揃えた組織体制をオフサイトに構え、サポートの強化を図っています」と説明する。
RPOは一般的には採用代行とも言われるが、人材会社によってカバーする領域が異なるため、自社の採用の実情に合わせてサービス内容を見極めて活用することが必要だ。 本国から日本の採用コストの高さを指摘され、ダイレクト・リクルーティングに取り組み始める外資系企業も増えている。採用コンサルタントとして活動するキャリアエピソード社長の備海宏則氏はその現状を次のように話す。
「グローバル統一の人事管理システムの導入が進む外資系企業で日本オフィスに対する採用コスト低減のプレッシャーは強まっていますが、ダイレクト・リクルーティングで成果を上げている企業はまだわずかでしょう」
ダイレクト・リクルーティングに本格的に取り組んでいる企業は人材会社出身者を採用担当者として新たに採用するなど体制を拡充していることが多い。採用体制が不十分だったり、ダイレクト・リクルーティングだけで採用ができない場合は、その他の人材サービスを併用する必要がある。コストを低減したいという動機だけで取り組むと採用担当者の負担ばかりが増える。
特に高度人材の採用は困難を極めており、人材紹介会社でも候補者を確保するのに苦労している。人材紹介は成功報酬だからといって人材コンサルタントの専門分野を理解せずに求人を出していては、いつまで経っても採用は上手くいかない。
候補者の絞り込みをする人材コンサルタントには、求人内容や背景、社風やキャリアパスなどを正確に伝える必要がある。付き合いの浅い人材紹介会社に求人案件をメールで一斉送信しても意図はまったく伝わらず、優先的に人材を探し出してもらえるはずがない。
「デジタル分野をはじめ、より高度なビジネスに対応できる人材の採用が必要となっています。専門性の高い人材コンサルタントをパートナーとするためには、人材紹介会社の情報を常に収集し、コンサルタントと事業部門責任者とのミーティングを設定するなど、信頼関係を築くための地道で継続的な活動が欠かせません」(備海氏)
今、日本の採用市場は人材争奪戦で従来の採用手法だけでは応募者が集まらない。複数の企業からオファーを受ける候補者も多く、内定辞退も続出している。必要な経験やスキルを持った人材を獲得するためには、さまざまな採用手法を適切に組み合わせて自社の採用力を高めることが急務となっている。