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新R25
【土屋敏男(つちや・としお)】1956年生まれ。1979年に日本テレビに入社。『進め!電波少年』『ウッチャンナンチャンのウリナリ!!』などの人気番組をプロデュースする。現在は、東京大学大学院情報学環教育部で非常勤講師も。2019年7月7日から、大阪城COOL JAPAN PARK OSAKA SSホールにて吉本興業が開催する超新感覚エンタテインメント「NO BORDER」でも企画・プロデュースを務めている
天野:今日は、「若者のテレビ離れをどうしたら食い止められるのか」を、土屋さんに考えてもらおうと思ってきました!
土屋さん:その質問自体、古いと思うけどなあ。
天野:え…古いですか…!
まずい、質問が刺さってない
土屋さん:届ける“ルート”はどうでもいいんじゃない?テレビの前に座ってもらって、○時に見てもらうっていうスタイルでも、YouTubeみたいに見られるスタイルでも。それぞれに合わせて、面白いもの作ればいいだけだと思ってやってるけどな。
天野:最近は、テレビのようにリアルタイム視聴する「AbemaTV」なども話題になりますが…そこはどう見ていますか?
土屋さん:「Abema」が若い人に向けて商売の目があるというのは、それはそれでいいんだけどさ。でも、「Netflix」が来てる、「Disney+」や「Apple TV+」がこれから出てくる、っていうときに、オレらからすると、メジャーリーグが話題になってるときに「国内球団もう1個つくってる」って言ってるようにしか聞こえないのよ。そう思わない?
天野:え…、いや、どうなんですかね? ノーコメントで!
※『新R25』はAbemaTVと同じサイバーエージェントグループで運営されています
土屋さん:そうじゃなくて、面白いことを考える「企画者」でいたいよね。
天野:それは失礼しました…どうしたら面白いものを考えられますかね? 仕事で企画を提案しなきゃいけないビジネスマンのために、教えてほしいです。
土屋さん:まず、「アイデアを提案する」っていう姿勢がすでに違うと思うなあ。提案なんかしてちゃダメなのよ。自分の役割を判断して、黙ってやる。
さすが、「企画」の話はどんどん出てきます…!
土屋さん:日本ってすぐ「報連相」っていうじゃない。報告、連絡、相談。あれがダメ。バカじゃないんだから自分で決めればいいんだよ。報連相からイノベーションが生まれると思う?
天野:そう言われればそうですね…
土屋さん:『電波少年』のときも、誰にも相談なんかしてないもん。「議員会館にアポ無しで行く」とか。
※『進め!電波少年』では「村山富市の長い眉毛を切ってあげたい!」という企画で、議員会館をアポ無し訪問。眉毛の長さがトレードマークだった村山富市氏(当時日本社会党委員長、のちに首相)の眉毛をハサミで切るという企画をやっています。ヤバすぎるだろ…
土屋さん:「議員会館に刃物持って突撃してもいいですかね?」なんて相談してたら、絶対誰か止めるでしょ(笑)。“ストライクゾーン”のコーナーギリギリって、現場でしか狙えないんだよ。上に相談してたらダメだね。
天野:そのスタンスで、怒られたことってないんですか?
土屋さん:「ユーラシア大陸横断ヒッチハイク」のときは、技術の人たちに怒られた。あれ、猿岩石とディレクターの3人でヒッチハイクしてるんだけど、ディレクターが、運動会で撮るようなハンディカメラで撮影してるの。撮影部隊が行くと10人ぐらいになっちゃうからね。
天野:あれ、ほんとに3人で行ってたんだ…!
土屋さん:撮ってきたら、技術の人が「テレビの電波で、こんなクオリティ低い映像流せない」って怒るわけ。「プロとしてありえない」とか。でも、「そんなこと言われたってもうこれしかないですから!」ってなんとか押し切ったの。放送したら、「画質が悪い」なんて誰にも言われなかったよ。「面白い」としか言われなかった。
天野:カッコよすぎるエピソード…今いろんなバラエティであの手持ちのカメラ見ますよね。
土屋さん:今では当たり前でしょ? でも、オレが無謀なことをやったから、それで業界で当たり前になったわけ。だからあれ、いまだにアメリカとかほかの国ではやってないんだよ!
土屋さん:でも、怒られるより、怒られないことのほうがはるかに多い。これはオレの経験から言えるね。「え、これセーフなの?」ってことがけっこう多いのよ。怒られるだろうなと思ってやったのが、『いけ年こい年』でやった「21世紀になるカウントダウンの時間を2分間違える」ってやつ。
※『いけ年こい年』は、土屋さんがプロデューサーを務めた年末カウントダウン番組。2000年から2001年になるときに、時間表示をわざと2分早め、フライングで21世紀を祝った
土屋さん:問い合わせが殺到してね。オレは何も言ってなかったんだけどさすが優秀なヤツがいて、「あれは“電波少年”的年越しです」って文章を出したらしいんだけど、オレはそのころには成田空港に向かって高飛びの準備してた(笑)。でも、怒られもしなかったし処分もなし。そんなもんだよね。
天野:ほかに、アイデアを出す方法ってありますか?
土屋さん:誰に刺したいのかを、リアルに想像すること。『電波少年』は、ずっと「中学2年生の男の子」に向けてつくってたの。
天野:へえー! なぜ中2なんですか?
土屋さん:一番多感だし、それまでは「お兄ちゃんたちの“笑い”」を背伸びして見てるんだけど、中2ぐらいからは「自分たちの笑い」がほしくなる時期なんですよ。
天野:すごいわかる気がします。多くの会社員も、「仕事上のターゲットと自分の年齢が違う」って、よくあると思うんですが、それってどうしたらいいですかね?大人なのに、どうやって中2的な発想を持てるんですか?
土屋さん:見た目から自分を変えることだよね。金髪になるとか。
そこですか?
天野:だから土屋さんは金髪なんですか?
土屋さん:っていうと笑われるけどさ(笑)。でも自分の姿って毎朝鏡で見るじゃん。すっごく影響大きいと思うよ。鏡で見てる自分がジジイだと、もう自分のことはジジイとしか思えなくなっちゃう。なら、そこを変えるといいよね。
天野:土屋さんの経歴を調べたんですけど、最初バラエティの制作をやって結果が出なかったんですよね? それで編成に“飛ばされた”と。
土屋さん:そうそう。最初はね、上司に言われてパクリ番組を作ってたわけ。『ねるとん紅鯨団』(フジテレビ)のパクリで『恋々!!ときめき倶楽部』。『風雲!たけし城』(TBS)のパクリで『ガムシャラ十勇士』っていう。
名前からして…パクリ感がすごい
土屋さん:それが視聴率的にも大失敗して。でも、やれって言った人は責任取ってくれないんだよね。「土屋はダメだ」って言われるだけ。「そういうもんなんだ」と思ったよね。今考えると、この失敗から学んだことが大きいから感謝してるけどね。
天野:そこから、30代で別の部署へ異動になるんですね…そのときは何をしてたんですか?
土屋さん:当時の日テレって「振り返ればテレ東」って言われてたぐらい視聴率がボロボロで、足りないものばっかりだったの。だから、「伸びてる会社はどんな感じなのか」を見に行ってた。フジテレビに勝手に入り込んで、スタジオで番組収録してるのをずっと見てたわけ。
天野:え、ライバル局ですよね? いいんですかそれ。
土屋さん:どうなんだろうね(笑)。「ダウンタウンの松本を迎えにきた吉本のマネージャー」みたいな顔して行ったら意外と入れたんだよね。こうやってテーブルでお菓子とか食べてたけど平気だった。
これ読んでテレビ局に侵入しようとするヤツが出ませんように
天野:当時の日テレとフジテレビは何が違ったんですか?
土屋さん:空気が違った。自由でのびのびとしてて、現場が楽しそうに働いてるんだよ。そのとき、「組織が伸びるかどうかって、すべて空気で決まるんだな」と思ったんだよね。組織の空気が「閉じてる」か「開いてる」かって、ユーザーに伝わるの。ところがなぜか、だいたいの組織って負けはじめると管理が強くなって、“閉めはじめる”わけ。
天野:すごくわかる気がします。
土屋さん:それで35歳のときに、たまたま日曜夜の30分枠が3カ月だけ空いて、「土屋につなぎでなんかやらせろ」ってことになった。「もう絶対パクリはイヤだ」「やりたいことをやろう」と思って、『電波少年』をはじめたの。番組ってだいたい4月とかからはじまるんだけど、ほんとに「つなぎ」だったから、92年7月からはじまってるんだよ。
天野:ついに土屋さんの“やりたかったこと”ができるときがきたんですね!初回はどんな内容だったんですか?
土屋さん:「渋谷のチーマーを更正させる」っていう企画。あと、イランの言葉(ペルシア語)で「イラン人AD募集!」ってテロップを出してた。
天野:(…やっぱこの人めちゃくちゃだな…)
土屋さん:ちょっとさっきからテレビの話ばっかりしてない? 7月からやる「NO BORDER」の話もさせてよ。
天野:あっ、すいません…3Dスキャナで観客を撮影して、「自分の分身」がステージで踊るのを見られるパフォーマンスなんですね。
出典 Youtube
世界初のライブエンタメが誕生! 国境なし!年齢なし!性別なし! 「NO_BORDER」
土屋さん:そう、テレビは出演者をみんなが見てる状態だったけど、今はSNSで自分たちもプレイヤーになった。人が次に見たいものは何か?って考えたら「自分だろうな」って思ったんだよね。
天野:「NO BODER」っていうのはどういう意味なんですか?
土屋さん:今、トランプ大統領がメキシコとの国境に壁を造ってるじゃない。日本と韓国とか、EUにしてもどんどん「ボーダー」の話になってると思ったんだよね。「電車内で赤ちゃん泣くのが許せない」とかいう話題も、心の障壁だし。
土屋さん:政治家は「アイツは敵だ」「あの国は敵だ」と“閉じようと”してしまう。それを見てて「これはダメな組織になっちゃうんじゃないか」と思って。隣の人と手をつないで踊るようなステージを、エンタテインメントの側から発信していくべきタイミングだなと。やっぱり国でも会社でも、うまくいってないと閉じてしまう。逆に開いていかないと、イノベーションが起こらないから。
天野:なるほど…。テレビ局の組織の話を聞いて「開いていかないと」と感じてたので、すごく納得しました!
土屋さん:ちなみに、この企画も会社(日テレ)にはずっと黙って、1年ぐらいずっと準備してたんだよね。記者会見の1週間ぐらい前に、はじめて言ったから。本気の企画は、やっぱり黙って進めなきゃダメだよ!
天野:徹底してる…!!
〈取材・文=天野俊吉(@amanop)/撮影=土田凌(@Ryotsuchida)〉
土屋敏男さんが企画・プロデュースを務める「NO BORDER」。最新型3Dスキャナで撮影し、観客ひとりひとりのアバターを会場で生成。自分自身が踊り、演劇の一員になるという新感覚のライブエンタテイメントです!スケジュール、チケットは公式サイトから。
NO_BORDERhttps://noborder-earth.com/
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