「18歳の一松は、かつての自分に似ている」福山 潤、本音を隠して過ごした高校時代

大人になった6つ子の姿を描いた、TVアニメ『おそ松さん』。2015年の第1期放送時から、ニートでダメすぎる6つ子たちの姿と、ドタバタな日常劇で人気を集めた。

第1期のDVD&Blu-ray1巻の売り上げは、発売初週であわせて約8万枚を記録し、2016年には新語・流行語大賞にノミネートされたほどだ。その人気に応えるように、2017年には第2期も放送された。

そして2019年3月に、劇場版となって再び描かれる。3月15日に公開される『えいがのおそ松さん』は、6つ子が不思議な世界に迷い込み、18歳の自分と出会う、自身を見つめるストーリーだ。

ライブドアニュースでは6つ子キャストから、櫻井孝宏(おそ松役)、福山 潤(一松役)、入野自由(トド松役)の3名にインタビュー。

福山に改めて一松の魅力を問うと、「おそらく6つ子のなかでもっとも共感を得られる人だと思うんですよね」と語り始める。彼の口からとめどなくあふれる言葉に、一松に対する思い入れの深さを実感した。

・おそ松役・櫻井孝宏のインタビューはこちら
・トド松役・入野自由のインタビューはこちら

撮影/祭貴義道 取材・文/とみたまい 制作/iD inc.

掛け合ってわかる“面白さ”は『おそ松さん』ならでは

完全新作の劇場版と聞いたときの心境を教えてください。
嬉しい気持ちはもちろんありましたが、「いつ収録するのか」、「いつ公開なのか」、そして「内容はどんなものなのか」といったところが気になりましたね。

TVアニメの1期・2期で好評もいただきましたし、僕らも楽しくやらせていただきましたが、長編作品となると少し事情が変わってくるので……。

ひとつの物語を展開させるのか、はたまたTVシリーズのようにショートストーリーの集合体にするのかわからなかったのですが、(脚本の)松原(秀)さんが「(シナリオは)ちゃんとできていますよ、僕の頭のなかでは」と煙に巻くので(笑)。台本が手元に届くのをとにかく待っていた感じですね。
台本を読んだときはどのように感じましたか?
恐怖と不安を感じました。「何をやらされるんだろう?」ということと、「この内容は、みんなが納得いくようなものかな?」と。

というのも、TVシリーズからずっとそうだったんですが、『おそ松さん』って台本だけだとよくわからないんですよ。もちろんストーリーはわかるんですが、ちょっとしたニュアンスみたいなものは現場でやってみないとわからない。

台本と映像を見て「ああ、なるほどそういうことか。面白いけど……わからないなあ」って思って現場に行って、みんなと掛け合ってはじめて「あ、こんなに面白いんだ!」ってわかるんですよね。これはTVシリーズの頃から変わらないし、そうやって計算して作っている藤田(陽一)監督と松原さんはスゴいなと思いますね。
その “面白さ”とは?
チョロ松(声/神谷浩史)のセリフって、台本で文字情報として読んでいるだけでは何が面白いんだかわからないんですが、神谷さんが演じたらハンパなく面白いんですよね(笑)。

今作でも、とあるパワーワードが出てくるんですが、台本で読んでいる段階ではべつに面白くないんです。それが、声に出した瞬間、ものすごく面白く聞こえる。そういったところは『おそ松さん』のあなどれないところですよね。

家では台本を読むだけ。収録現場で初めて一松の声を出す

久しぶりに6人のキャストで肩を並べてみた感想は?
“久しぶり感”や新鮮さはまったくないなぁと(笑)。普段から顔を合わせているメンツだからではなく、TVシリーズのときに現場でどんなことを話したのかも覚えていないんですが、“みんなでワチャワチャと楽しんでいた”っていう感覚だけはしっかり覚えているので。空間的な親和性が高かったです。それはみんなも同じだと思います。
6人でいるときの一松を演じる際に、意識している点はありますか?
TVシリーズの頃から本当に自由にやらせていただいていますね。というのも、周りの人たちには申し訳ないですが、みんなが演じるキャラクターが地続きでいてくれるから、一松が全然違うことをやっても成立するんです。
というと?
たとえば、ティンカーイチ(1期の第17話で登場。ティンカーベルの格好をした一松)って、一松の要素ゼロで演じましたし、じょし松さん(6つ子が女装した姿)では一松だけキャラクターを大胆に変えているんです。
©赤塚不二夫/おそ松さん製作委員会
それでも一松だと思ってもらえるのは、みなさんが演じる6つ子があって「残ったひとり」というところでわかってもらえるからだと思うんです。

ですから今作でも、みなさんが演じた土台を拝借して、自由にやらせていただいた感はあります。18歳の若いみんながワーッとしゃべっているところがあるんですが、ひとりだけ聞き慣れないヤツがいると思うんですよ。それが一松です(笑)。
みなさんのお芝居とのバランスを見ながら?
「どんな塩梅でやろうかな?」っていうのは、現場のバランスを見ながら考えています。「やりすぎないように」、そして「やらなさすぎないように」と思いながら演じました。

それに、ほかのみなさんがどう演じてくるのかはTVシリーズを経て肌感覚としてなんとなくわかっていますので、今回に関しては18歳という年齢感だけがポイントで。ほかの人たちのお芝居から年齢感を掴んで…。
「あ、この人たちはこういう18歳で来るんだな」と?
そうですね。ただ、想像を超えてくる人たちではあるので(笑)。現場で大いに楽しませてもらっています。

僕、ほかの作品では家で声を出して練習するんですが、『おそ松さん』に関しては、家では読むだけにして、現場で初めて声を出すんです。今回の劇場版でも同じですね。“初めて声を出す感覚”を現場に持ち込みたいと思って、そうしました。

高2までは真面目で成績優秀…でも、高3から変化が!

18歳の一松については、どのように感じましたか?
TVシリーズで演じた二十歳を過ぎた一松は、僕と似ているところが1ミリもないと思いますが、18歳の一松は18歳時の僕と似ていましたね。上辺で友達と付き合うところとか(笑)。

「学校のなかで、いかにして自分のキャラをキープしたままやり過ごすか」に注力していたので、一松の気持ちはよくわかりました。家に帰るときに目が死んでるっていうのも、大いにありましたし(笑)。
そういう意味では、今回の一松は演じやすかった?
そうですね。ほかの6つ子はいろいろと工夫しないといけない部分があったと思いますが、僕の場合は“普通の人”でしたから。特段工夫する必要もなく、むしろキャラを作らないほうがいいくらいの感じでした。
「18歳の一松は自分に似ている」とのことですが、福山さんはどんな高校生活を送っていたのですか?
キャラを作っていた時期もありましたが、とりあえずみんなと波長を合わせて、文化祭の準備とかも精一杯していました。でも、高校2年生の頭から声優の養成所に通っていたので、文化祭当日は参加できなくて。養成所を休もうかとも思いましたが、「いや、それは違うな」と思って…。
後悔はなかった?
まったくないですね。僕は「10年後にできることを今やろう」とは思わないけれど、「今しかできないことは、今やろう」と思うんです。

文化祭も学生のときにしかできないことではありますが、当時の僕にとって「養成所に通う」のも“今しかできないこと”だった。なのでそちらを選びました。
本作では6つ子が同窓会に参加しますが、福山さんは同窓会に参加したことはありますか?
行ったことないんですよ。そもそも、呼ばれたことがないんですよね。僕は同窓会に行きたいんです。だからもし僕の同級生がこれを読んでいたら、誘ってほしいです。……まあ、仮に僕の連絡先を知っていたらの話ですけど(笑)。
同窓会のお知らせは来なかったのですか?
高校を卒業して何年かはあったんですが、うちの母親がうさんくさいセールスと勘違いして全部断っていたんです。「潤くんいらっしゃいますか?」「うちに潤はいません」「高校のときに同じクラスだった……」「潤はいません」みたいな受け答えをしていて。

それ以来、同窓会の連絡が来なくなりました(笑)。
できることなら同窓会に行きたい、と。
はい。いま、同窓生がどうなっているのか知らないですからね。幼稚園と中学が一緒だった友人とは今でも交流がありますが、高校のときの友達で今もたまに連絡をとってるのは数人ですかね。
その方たちから同窓会の情報は入ってこない?
同窓会ってだいたい、高校3年生のときのクラスでやるじゃないですか。彼らはほかのクラスだったので……。僕、そのときの友人関係が希薄でクラスでは空気のような存在でした(笑)。

高校3年生の頃は、僕のなかでは“トライアル”な時期だったんです。
トライアルですか?
ええ。3年生になったら進路を決めないといけないですよね。僕は「東京に行く」という第一の目的があったので、地元での就職は考えなかった。それで進学を考えましたが、行きたいのは演劇科だったんですね。

当時は、演劇科がある学校は学費が高いところばかりで。それは嫌だなと思って、「じゃあもう、進学もしなくていいや」って……。その途端に自分にとって、学校に行く意味がなくなった感じがしたんです。だから「今までやったことのないことをやろう」と思って…。
そういう意味での「トライアル」なんですね。
僕、それまではすごく真面目に学校生活を送っていたんですよ。悪ガキのなかにいながら、テストでは常に80点を取れるような人間だったんです。授業だけ真面目に受けて、ほかに勉強はしなかったんですが……。
成績優秀だった福山少年は、たとえばどんなことにトライしたのでしょう?
隣のクラスで授業を受けてみて、「いつバレるか」って試してみたり(笑)。
優等生の急変に、周りは驚いたと思います。
それがですね、やっぱりイメージって急に変わらないようで……。もちろん、心配してくれた先生もいますが、それ以前に「(授業を受けていないのに)福山はいるものだ」と思われていたことも多くて(笑)。

高校2年のときに体育で学年トップの成績をとったんです。そのせいか、3年の体育の授業に出なかったのに、出席になっていて。そんな高校生活でした(笑)。

僕らのパーソナルな部分がキャラクターに反映されている

TVシリーズから一松を演じてきて、キャラクターへの理解がより深まったと思うのですが、改めて福山さんが感じる一松の魅力とは?
一見、ほかの6つ子よりもエキセントリックなんですが、おそらく6つ子のなかでもっとも共感を得られる人だと思うんですよね。彼の「うまく人と付き合えない」みたいな部分って、多感な時期にみんなが陥りやすいものなんじゃないかと思うんです。

だからいま、「過去の自分もそうだった」という自覚がある人たちが見たときに、妙な既視感や共感を覚えるのが一松の魅力だったりするのかな?と思います。
TVシリーズの一松だけを見ていると「どうしてこんな性格になっちゃったんだろう?」と思っていたのが、今作で18歳時の一松を知ることで腑に落ちた部分も大きいです。
そうですね。そもそも僕は、1期の『おそ松さん』の収録が始まるときに「どういったキャラクターを作っていこうか」って、そんなに細かくは考えてなくて……。

じつは、1話から5話まではキャラクターを統一していなかったんです。「5話以降からキャラクターに色を持たせよう」って最初から決めていて。

そんななかで、トド松(声/入野自由)が一松のことを「狂人を装った普通の人」と揶揄するセリフがあったんです。それってまさに僕が「こういう人物にしていこう」と思っていた一松像で。

どのタイミングでシナリオに入ったのかはわかりませんし、あらかじめ用意されていたのかもしれませんが…。あるいは僕の意図するところを制作陣も考えていたのかもしれませんね。
みなさんのお芝居を見て、松原さんが当て書きした部分もあるかもしれない?
大いにあると思います。「“いい声”の声優に、叫ばせたり、キャッチーな言葉を言わせたら面白い」っていうことに気付いたのはたぶん、中村(悠一)のカラ松の芝居を見たからだと思いますし。でないと、「イグニッション」なんて言わせないと思うんですよね(笑)。

あと、自由くんが叫んだら面白いって気付いたのも、チキチキマシンの回(1期の第18話)からだと思いますし、十四松(声/小野大輔)が三振かホームランだけっていうのはたぶん、アフレコ現場での小野大輔を見て思いついたのかなとも思ったり(笑)。

チョロ松もあそこまで“痛い”キャラになったのは、神谷さんの知的な声とご本人の隙のなさがあってこそだと思うので……。

最初のキャラクターからブレていないのって、おそらくおそ松(声/櫻井孝宏)だけだと思います。
なるほど。
だから、なんだかんだで僕らのパーソナルな部分が、キャラクターに少なからず反映されている部分もあるかもしれないです。嬉しい反面、ちょっと気恥ずかしいですけど(笑)。ただ、今作に関しては、包み隠さず僕の思うところを入れさせてもらったつもりです。
福山 潤(ふくやま・じゅん)
11月26日生まれ。大阪府出身。A型。1997年に声優デビュー。主な出演作に『コードギアス 復活のルルーシュ』(ルルーシュ・ランペルージ)、『青の祓魔師』(奥村雪男)、『デュラララ!!』(岸谷新羅)、『PERSONA5 the Animation』(雨宮 蓮)、『BANANA FISH』(李 月龍)など。アーティスト活動もおこなっており、2018年11月に2ndシングル『Tightrope』をリリースした。

    映画情報

    『えいがのおそ松さん』
    3月15日(金)ロードショー
    https://osomatsusan-movie.com/

    ©赤塚不二夫/えいがのおそ松さん製作委員会 2019

    サイン入りポラプレゼント

    今回インタビューをさせていただいた、福山 潤さんのサイン入りポラを抽選で1名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

    応募方法
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    受付期間
    2019年3月13日(水)12:00〜3月19日(火)12:00
    当選者確定フロー
    • 当選者発表日/3月20日(水)
    • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
    • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから3月20日(水)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき3月23日(土)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
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