スマートフォンやパソコンの購入・利用で、何がもっとも重要なのか?
性能? 機能? デザイン? 価格?
否、それは「サポート」なのだ。
・高性能、多機能
・優れたデザイン
・低価格、高コストパフォーマンス
これらを実現した製品でも、動作不調や故障など、トラブルに見舞われた際にサポート体制が脆弱であれば、利用者は製品に失望し、満足度も大きくさがる。
さらにメーカーについても、信頼度や評価も下がってしまう。
特に日本のように、サポートの品質=メーカーの評価に繋がる国や社会では、サポートはビジネスが成功するために重要なファクターと言える。
昨年3月、
ASUS JAPANは、日本初の旗艦店「
ASUS Store Akasaka」(東京・港区)をオープンした。
ASUS Store Akasakaでは、
・修理相談
・パソコンのメモリー増設
・英語キーボードへの換装
など、利用者と対面でのサポートに対応するカスタマーサービスセンターである。
また、対面によるサポートサービスを受けられるだけでなく、最新のスマートフォンやパソコンをいち早く体験して、そのまま購入することもできる。
今回、
・
ASUS JAPANシステムマーケティング部のシンシア・テン氏
・同カスタマーサービス部のゲンキ・チュウ氏
「
ASUS Store Akasaka」、
ASUSのサポートに対する姿勢を聞いた。
■日本で認められる! このことの価値は高い![]( https://image.news.livedoor.com/newsimage/stf/d/d/dd70570925e9650c17a6ebe5d477b226.jpg)
システムマーケティング部 シンシア・テン氏
スマートフォンのメーカーとして知られる
ASUSだが、もともとはデスクトップパソコンを構成するPC(いわゆる自作PC)向けのパーツを提供していたメーカーだ。
1989年、台湾の
ASUSTeK Computer Inc.(以下、
ASUS)が設立。
今年で設立30周年を迎える。
1999年、
ASUSTeK Computer Inc.は、日本法人
ASUS JAPANを設立。
シンシア・テン氏は、日本にサポート拠点を作った理由について、
「自作PCをやっている方は、アジアの中で日本は約2%でした。日本の人口からみると、2%でもかなりの数でした。当時、販売代理店が輸入品のカスタマサポートやマニュアルなどの日本語対応などを行っていました。カスタマサポートはメーカーのブランドイメージや信頼に直結すると理解していたため、2006年に初めてノートPCを日本に導入した際に
ASUS JAPANは本格的にサポートに力を入れたきっかけになりました。」
スーパーカーのランボルギーニとコラボした「ランボルギーニVX1」に
高級感あふれる本革を使ったノートPC「レザーコレクション S6F」は、PCユーザーを含め、日本市場で大きな注目を集めたが、尖った製品だけに一般層への普及には繋がらなかった。
そんな
ASUSにとって大きな転機が訪れたのは、いわゆるネットPCと呼ばれる小型ノートパソコン「Eee PC」だった。
![]( https://image.news.livedoor.com/newsimage/stf/b/c/bc8aad684ddf6c3153b7736b7df9a5fe.jpg)
Eee PC(画像提供=ASUS JAPAN)
シンシア・テン氏
「2008年1月ですね。当時100円パソコンとか、PCに詳しくない方も購入していただいたので、Eee PCはひとつの大きなマイルストーンになったと思います。」
Eee PCの登場で、日本での「
ASUS」の認知度は一気に上がった。
現在でも3万円台の低価格帯の小型ノートパソコンはラインナップされ続けている。
シンシア・テン氏は、
ASUSにとっての日本市場についてこう語る。
「弊社はグローバルで展開していますが、日本の方はアジアの中でもデジタル(製品)に対する目が肥えていると認識しています。
日本の方に製品を購入してもらうのは非常に重要なことだと考えています。」
日本人は、ソニーやシャープ、東芝といった国内メーカーの高品質な製品に小さい頃から囲まれてきたことでデジタル製品に対する目が肥えているというのだ。
ASUSは、製品の品質に厳しい日本は非常に重要な市場と考えている。
ASUSの会長ジョニー・シー氏が、日本で開催される
ASUS新製品の発表会に来日するのも日本市場を重要視している現れだ。
シンシア・テン氏
「ZenBook(ゼンブック)やZenFone(ゼンフォン)の『ゼン』は、日本語の『禅』が由来です。
『美しく』
『力強く』
『シンプル』
という弊社の物作りは、日本を意識していることが多いのです。」
2008年
ASUSグループは、OEM部門とブランド部門を分社化している。
それまででも、OEM事業では、
日本企業との取引が多く、日本のトヨタ自動車が確立した生産現場における考え方「トヨタ生産方式」に強くインスパイアーされたそう。
シンシア・テン氏
「(日本は)すごく厳しい市場ですが、台湾ブランドだからこそ、開発や価格設定など、日本で販売する製品を考慮してかなり工夫しています。やることはたくさんあります。」
■人気の2in1PCはASUSから始まった -新しいモノとマーケットを作り続けるシンシア・テン氏
「我々はコスパがよいというイメージが日本で根付いたことて、かなりのシェアを獲得することができました。
TransBookという、キーボードと液晶が取り外せる2in1PCは
ASUSが初めて市場に提供した製品なんです。
Googleの7インチのタブレットNEXUSをGoogleと共同開発したのも弊社です。
そういった今までにないマーケットを開拓していくのは得意です。
我々の強みは、日本市場に柔軟に対応できるところです。」
そのほか、これまで市場になかった新しい製品といえば、「PadFone」という製品もあった。
これはスマートフォンを合体させることで、タブレットとしても使えるユニークなデバイスだった。
シンシア・テン氏は、こうしたチャレンジする製品を生み出せる理由の一つをこう語ってくれた。
「ZenFoneのコンセプトには、
『誰でも気軽に堪能できる、ワンランク上の贅沢』
というのがあります。
それを意識しながら物作りをしています。」
■対面サービスは重要! そして旗艦店「ASUS Store Akasaka」をオープンした赤坂に旗艦店「
ASUS Store Akasaka」を出店した理由や目的について聞いてみた。
![]( https://image.news.livedoor.com/newsimage/stf/c/1/c1b8348a2f9e9b0386462877f8a80d4d.jpg)
ASUS Store Akasaka
シンシア・テン氏
「コンシューマー向けの製品を提供する上で、サポートは非常に重要にキーになります。
たとえば、スマートフォンを修理に出して3日間使えない。
というのは、(利用者にとって)かなり大きなストレスになります。
日本市場では、競合他社のPCメーカーは自社の修理拠点があり、浸透しています。
・face to face(フェースツーフェース)
・Quick Repair
これらのサービスが(
ASUSにも)必要と考えました。」
旗艦店「
ASUS Store Akasaka」の計画。実は2年も前から描いていたそう。
しかし東京では立地する場所を探し、確保するのも苦労したが、ようやく昨年3月にオープンできたという。
旗艦店「
ASUS Store Akasaka」をオープンするまでは、
・利用者がコールセンターに電話をする
・
ASUSに製品を発送する
といった手順が必要であり、修理を開始するまでも時間を要していた。
ASUS Store Akasakaをオープンすることによって、修理時間の短縮が図れたという。
ゲンキ・チュウ氏
「修理対応での物流のロスタイムは、お客様にとって大きな時間の無駄となります。
お客様のメリットを考え、対面でお客様対応を行うべきと考えました。
電話などによるコールセンターでの対応では、お客様が発生した製品の症状を全て把握することは困難です。修理依頼された案件の半数では、OS・ソフトウェア設定の問題であり、再設定やOS初期化などですぐ解決できるものでした。現在、来店してくださったお客様の約3割はその場で解決できています。
コールセンターは、様々な問題に対して解決方法を案内しております。しかしお客様の中には、弊社製品に不慣れな方もいらっしゃいます。できる限り、伝わりやすい案内を心がけておりますが、中には冷たい対応と感じてしまう方もいらっしゃるそうです。
一方、フェイスToフェイス(対面対応)可能な実店舗は、お客様の問題を正確に確認・判断でき、解決できます。
また、お客様から不具合現象以外の質問をいただく場合もあり、あわせて解決方法の提案を行っております。」
対面によるサポートは、利用者の気持ちを直に感じとることができ、更によりよいサービスを提供することを可能にしているとのこと。
利用者のメーカーに対するイメージを変えることにも役に立っているという。
![]( https://image.news.livedoor.com/newsimage/stf/4/5/451da1c3c7087813b5759cb6078f9082.jpg)
カスタマーサービス部 ゲンキ・チュウ氏
ASUS Store Akasakaの利用者には、海外の方も多いという。
「日本のユーザー」と「海外のユーザー」
両者での違いはあるのだろうか?
ゲンキ・チュウ氏
「日本のユーザー様は安心感があれば、愛着心を持っていただける方が多い傾向にあると思っています。
故障箇所についても、日本のユーザー様は『どうして壊れたの?』と問いかけてきます。
それに対して、外国のユーザー様は『修理時間がかかる場合は、すぐ利用できるようと、手頃な価格の買替製品があるか』と聞いてきます。
そういう意味で両極端の立ち位置だと思います。」
日本人は、モノに対する愛着が強いと言われることが多い。
たとえば、2008年に発売されたEee PC。
今でも大事に使っている方がいるという。
ゲンキ・チュウ氏
「日本と海外のお客様とでは、対応の時間でも結構なギャップがあります。
日本のお客様は、不具合になった原因と解決方法などを細かく質問してこられます。
そこを大切にして説明しないと、お客様に不安を与えてしまうことになります。
安心感から(製品やメーカーへの)愛着が湧くかたちになりますので。」
ASUS JAPANは、
ASUS Store Akasakaのオープンまでに、九十九電機にのみサポートの窓口を用意していた。
修理などで来店される客は、買い物などのお客様とお互いに気を遣うことで、
お客様が満足できる対応を得られないという不安があったという。
ASUS専用のサポート拠点となる実店舗を持ったことで、サポートや顧客に集中できる。
この違いは大きいそうだ。
ゲンキ・チュウ氏
「場所や交通の便を考慮したうえで、赤坂を選びました。
来店客数は物販を含めて、1日で約150名いらっしゃいます。
オーフィス街及びホテルが近隣しており、サラリーマン及び外国観光客が多くいらっしゃいます。」
海外購入した製品は、日本で購入した製品のように販売店を経由してサポートに出すことはできない。
これまではコールセンターに連絡し、対応してもらうしか方法はなかった。
また旅行で日本を訪れた方の場合は、滞在期間に制限があり、時間のかかるコールセンター経由で修理に出すことができないケースも多い。
現在、
ASUS Store Akasakaのサービス拠点があるので、外国語(英、中)対応できるスタッフが常在して対応することができる。
![]( https://image.news.livedoor.com/newsimage/stf/9/6/968a5ab37f22da32d04a022f4da4a8a2.jpg)
ASUS Store Akasaka 店内カウンター
現在、
ASUS Store Akasakaにサービス依頼した製品は、カウンタースタッフの対応にて修理進行になるのは1割程度となります。
ゲンキ・チュウ氏
「(利用者からの質問で)多いのは、Zen Foneを例にすると、通信面の相談ですね。
・SIMカードの設定が急に消えたとか、
・昨日まではメールができたのに電話しかできなくなったとか、
・APNの設定とか、
そういうのが多いです。
アプリケーションをアップデートしたら、以前作成及び保存したファイルが開けなくなったという質問も多いです。
修理に進むのは、物理的な破損(画面割れなど)といったケースが多いです。」
■スマホのバッテリー問題 -独自機能で安全を担保最近のスマートフォンのトラブルは、破損や水没だけでなく、バッテリー問題も注目されています。
ゲンキ・チュウ氏
「(スマートフォンの)バッテリーは、駆動時間や充電回数が増え、技術が進歩していますが、
一番実感したのは、お客様の使用環境によって、かなり違いが生じることです。」
お客様の使用方法及び環境は、充電しながらスマートフォンを利用していることが多い。
また湿気が多い環境での使用する場合、充電などの端子が腐食することもあり、バッテリー劣化が早くなる原因にもなるという。
ゲンキ・チュウ氏
「24時間充電しっぱなしだと、バッテリーが過充電で膨張する場合もあります。
しかし(バッテリーの膨張)をお客様が認識していないことが多いです。
理由としては(バッテリーが)1mm(膨張)したとしても、その違いをお客様が判断することができません。
お客様に安心利用していただくため、バッテリーのみに関わらず、修理を受け付けた際に全体検査を行っております。
バッテリーにダメージがあった場合には、保証期間内であれば、無償でバッテリーを交換しています。保証期間外であっても、必ずお客様にご連絡を行い修理をお勧めしております。」
2年以上使用し、保証期間が切れたスマートフォンの場合は、
・バッテリーを交換したほうがよい
・新しい機種に買い換えたほうがよい
などの案内をしているという。
バッテリーの問題は、各メーカーも頭を悩ませている問題だ。
ASUS JAPANでも、かなり気を遣っているそう。
ゲンキ・チュウ氏
「製品のバッテリーにはセーフティー回路が付いています。バッテリーがある程度、膨張した場合には、基本的には充電できないような仕組みとなります。」
バッテリーが膨張する現象は、
電解液の変化などの外部要因から発生するガスによって発生する。
そこで
ASUSのスマートフォンでは、バッテリーにセーフティーを措置している。
この機能により万が一のときでお、利用者は安心して使用できる。
またバッテリーの注意喚起は、コールセンターや弊社のサポートサイトを通じて行っているという。
ゲンキ・チュウ氏
「現在、大きく悩まされているのは、純正のACアダプター以外の使用となります。
サードパーティーのACアダプターなどが販売されており、利用している製品のワット数(ACアダプターによって)と違う仕様が多く販売されております。
スマートフォンは繊細な部品が装着されており、
製品の仕様と違うACアダプターを使用することにより、バッテリーに対する負荷などが早期劣化の要因となります。
弊社のサポートサイトなどで(純正のACアダプター利用の推奨など)注意喚起はしていますが、利便性を重視するお客様もいます。この辺はしっかり対応していきたいと考えています。」
■2019年中に関西店を! -ゆくゆくは全国でサポート展開へサポートの重要な拠点でもある
ASUS Store Akasakaだが、そんなサポート拠点は東京以外にも出店する予定はあるのだろうか。
ゲンキ・チュウ氏
「予定はあります。年内に関西地域でオープンしたいと考えています。」
ASUS Store Akasakaの利用者には、関西から出張で東京に来たという人もいるという。
そこで関西での出店も検討中なのだそう。
また、量販店とパートナーシップを結び、量販店でのサービス向上にもつとめたいとしている。
![]( https://image.news.livedoor.com/newsimage/stf/e/f/eff43d81776bf02426b5819ea9cff572.jpg)
シンシア・テン氏
「最終的には日本全国でのl(サポートに)力を入れて行きます。
優先順位として、関東の次に関西というかたちです。」
■30周年 原点に戻って再出発ASUS JAPANでは、ほかの海外メーカーの動向をどのように見ているのだろうか。
シンシア・テン氏
「(ほかのメーカーの)研究はしますが、各メーカーの体力も違います。
弊社はエンジニアリング思考なので、あまり派手なことをやらないです。
地に足を着けて、しっかりと踏み込まないといけないと考えています。
ASUSは自分のできるところを、地道にやっていくということです。
まだやるべきことはたくさんあります。」
また、昨年、HUAWEI(ファーウェイ)のニュースが話題となったが、その影響はないのだろうか。
シンシア・テン氏
「まったくないですね。バックストーリーは違いますので、ビジネスに何も影響はないですし、コメントできることもないです。」(シンシア氏)
もっとも新しい「ROG Phone」の取り組みについても聞いてみた。
シンシア・テン氏
「おかげさまで差別化できる製品なので、今までリーチできなかったお客様にもリーチができて、かなり話題になった製品です。
驚いたのは、有名なYouTuberが開封レポをやってくれて、ほかの部署から『どうやって、YouTuberに連絡できたんですか?』と言われたことです。」
実は、
ASUS JAPANから有名なYouTuberにコンタクトを取ったわけでないという。
有名なYouTubeが自腹購入して取り上げてくれたのだという。
ROG Phoneは、販売価格が10万円を超えるゲーミング・スマートフォン。
SIMフリースマートフォンの市場において、高価格帯のスマートフォンは売れにくいと言われているが、実際に
ASUS JAPANではどの価格帯が売れ筋なのだろうか?
シンシア・テン氏
「どのメーカーにも言えることですが、2万円から3万円、2万円台が一番売れています。あと弊社のZen Fone 5は4万円台ですが、けっこう売れています。」
なお、大手通信キャリアからの販売はないかを聞いたところ、シンシア・テン氏は。「それは弊社の決めることではありませんが、できることなら入りたいです。」と率直に答えてくれた。
シンシア・テン氏
「今年の抱負を一言でいえませんが、我々はPCが基盤です。今はタブレットやスマートフォンとか、多岐に渡って製品開発していますが、今年は会社設立30周年です。
原点に戻って再出発するというのがひとつのテーマと考えています。
30周年をきっかけにもう一回PCを中心とした戦略を考えています。」
![]( https://image.news.livedoor.com/newsimage/stf/2/0/207cd137c663ff0521766a435ab2bebd.jpg)
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ASUS JAPAN執筆:ITライフハック 関口哲司
撮影:2106bpm