ここまで6試合での出番は2試合。ターンオーバー布陣で臨んだグループリーグ第3節ウズベキスタン戦(○2-1)の先発と、逃げ切り態勢の時間帯に投入された準々決勝ベトナム戦(○1-0)だけだ。「悔しい思いはあるが、日本が勝つこと、優勝することが一番」という葛藤がありながら大会中を過ごしている。
ただ、その「一番」に向けた努力は欠かさない。苦戦が続いたグループリーグでは戦術的なアドバイスを送り、ベンチから声を張り上げて鼓舞する場面が見られた。決勝トーナメントに入ってからは、サブ組だけで行う試合翌日の練習を率先して盛り上げ、SNSも駆使しながらチームの雰囲気を高めている。
「自分もこの大会では全然試合に出ていないし、やれていることが少ないし、貢献度は少ない。でも、やれることはそれだけじゃない。試合の中だけじゃないと思っている。ちょっとでもチームの中で貢献できれば良いと思っている」。試合に出る準備は重ねつつ、決勝進出を果たしたチームを陰で支えている。
そんな姿を見たDF長友佑都は30日、ある裏話を明かしていた。「ロッカールームを試合に出ていない選手が掃除しているんです。こないだも槙野や乾が率先してほうきで掃除をして、洗濯物をまとめてくれていた。後輩だけどリスペクトするし、出ている自分たちはやってやろう、絶対に勝つんだという気持ちになる」。
決勝を翌日に控えた31日、この件を問われた乾は真意を明かした。「W杯で圭佑くんや、マキくん(槙野)もそうだし、(年齢が)上の選手がやっているのを見てきた。W杯はたまたま試合に出られていたけど、今回は出られていない。そういうところを自分たちは見てきたので」。ロシアW杯での一体感はこうして新チームにも受け継がれている。
もちろん、試合に出られていない現状に悔しさはある。それでも、自らの役割を果たすべくチームを支えている。そして、そんな思いがピッチ内の選手たちに伝わり、6連勝という結果につながっている。「優勝したい気持ちはすごくある。プロになって初めてのタイトルなので獲りたい」(乾)。どんな形であれ残り1試合、陰で支える背番号10はあらゆる役割に全力を注ぐ。
(取材・文 竹内達也)