役を演じることは、「神田沙也加」からの健全な逃避なのかも――彼女が舞台で輝く理由

ピンク大好きのブロンド・ポジティブ女子エル・ウッズが、弁護士を目指して奮闘するサクセスコメディー映画『キューティ・ブロンド』。2017年、そのミュージカル版の日本初演で主役のエルを演じ大好評を博したのが、神田沙也加だ。

歌手、女優、声優と幅広い分野で才能を発揮する彼女は、このミュージカルでも抜群のキュートさを見せる。あれから2年、いよいよ“神田エル”に再会できる!

ミュージカル界には、知る人ぞ知る魅力的な存在がまだまだいっぱい! そこで、ライブドアニュースでは、「ミュージカルの世界」特集と題して、今注目の、ミュージカル界の逸材たちをご紹介する。

撮影/増田 慶 取材・文/栗原晶子 制作/アンファン

「ミュージカルの世界」特集一覧

大地真央さんの舞台を観なかったら、私は今ここにいない

神田さんは、2004年に宮本亜門さん演出のミュージカル『イントゥ・ザ・ウッズ』に出演して以来、『レ・ミゼラブル』のコゼット役や『マイ・フェア・レディ』のイライザ役を務めるなど、いまではミュージカル界に欠かせない存在ですね。この世界で頑張ろうと思ったのはいつ頃から?
うちは芸事の家系だったので、小さい頃から「ケーキ屋さんになりたい」というような、普通の女の子が見るような夢を持ったことはほとんどなかったんです。漠然と芸事の世界にいくのかなと。

ただ芸事の中でも舞台をやっていくとは全然思ってなかったですね。デビューもCMでしたし。舞台をやりたいと思ったのは、やはり自分が観劇したことがきっかけでした。
そのときのことは強く印象に残っていますか?
そうですね、12〜3歳ぐらいの頃、大地真央さんの舞台『風と共に去りぬ』を観たときに衝撃を受けて。それから、大地さんのお芝居もミュージカルもいろいろ追いかけて観るようになりました。あの日、あの公演を観なかったら、今こうして私が舞台に立たせていただくことはなかっただろうなと思います。
大地さんが長年演じられてきた『マイ・フェア・レディ』も、昨年出演されましたね。ホントに可愛いイライザでした。
ありがとうございます!ずっと憧れの役でしたので、夢がかなうとはまさにこのことだなぁと。

初演一幕ラストの拍手と喝采は忘れられません

そして次の舞台は、2月から始まる、2017年に上演されたミュージカル『キューティ・ブロンド』の再演ですね。初演千穐楽当日に再演が発表されました。当時のお気持ちを聞かせてください。
本当に幸せな気持ちでした。毎日、満員のお客さまに観ていただき、上演の終わりが近くなると惜しむ声もいただくなかで、「じつは、次にまた同じ作品、同じ役でお会いできます!」と言える幸せ! こんなに幸せなら、もう、いっそのこと、言わずにずっと幸せを味わっていたいくらい(笑)。

とてもうれしくて光栄でしたが、じつは、安堵の気持ちのほうが強かったかもしれません。「わーい!!」と手放しで喜ぶより、「ああ、初演、成功したんだ…」という安堵。初演の成功がなければ再演は叶わないことでしたから。

再演決定は、この作品の日本初演に関わったすべてのスタッフ・キャストにとって、ものすごく大きな成果だったと思います。
東京・日比谷のシアタークリエでの公演を経て、全国7ヶ所でも上演されました。各地での反応はいかがでしたか?
『キューティ・ブロンド』って不思議な作品で、カンパニーが信じられないくらい仲がいいんです。ひとつのクラスみたいな感じで、みんなでずっと一緒にいて。それが観ている方に伝わるのか、どこに行ってもとても盛り上がっていただけました。もちろん、ちょっとした笑いどころの違いはあるんですけど、一幕ラストの喝采は、どの土地でもいただくことができました。

私自身が十数年前にブロードウェイで『Legally Blonde』(『キューティ・ブロンド』の原題)を観た際の、客席の「ワーー!!」とか「フーーーッッ!!」みたいな盛り上がり方って、日本のお客さまはしないイメージだったんです。

それが、日本でも起こって。そういう日本っぽくない歓声というか、ヒューヒュー系の盛り上がり方をしていただけたのは驚きでしたし、うれしかったですね。作品のよさが伝わり、ハッピーになっていただけたからこその、あの割れんばかりの拍手と喝采…忘れられません。
主役のエル・ウッズは、神田さんのハマリ役として話題となり、第43回菊田一夫演劇賞も受賞されました。役作りでは何か工夫をされましたか?
やはり映画のイメージが強いと思いましたので、初演時はたっぷり参考にさせていただきました。具体的には、しぐさや歩き方、ふてくされ方や、愛犬ブルーザーに対する可愛がり方とか、みんなが知ってるエルの「コレコレ!」っていう感じがしっくりくるようにしたかったんです。

持ち物にもこだわりましたよ! 舞台でエルが使うパソコンは、映画で使われていたのと同じ、オレンジ色のスケルトンのiBookを探してもらったんです。

エルは、ダークサイドからブライトサイドに引っ張ってくれる

エルは喜怒哀楽が表に出る人、神田さんはその逆だと初演時のコメントにありましたが、現在はどうですか?
ありがたいことに、エル役は私にぴったりだと言ってくださる方が多いんですが、私自身はエルとはすごく遠いと思っていますね。もちろん現在も(笑)。今回のチラシやポスターのエルの姿を見て、自分が扮しているのに、「あぁ、すごい別人だ」と客観視できちゃうほど。
役柄から影響を受けた部分はありますか?
公演が終わってからしばらくのあいだは、「ええぃ、もうあんまり考え込んでもしょうがないや!」みたいなポジティブなメンタルになりました(笑)。まぁ、その後、戻っちゃったんですけどね。だからエルのような役柄は、私を、ダークサイドからブライトサイドに引っ張ってくれる存在だなと思います。
ということは、実際の神田さんは……。
すぐダークサイドに行っちゃうんですよ(笑)。
この作品では、コメディエンヌ・神田沙也加の誕生も印象づけられましたよね。周りの方の反響はいかがでしたか?
長くやらせていただいているラジオ番組のディレクターさんから、「長年一緒に仕事してても、まだ聞いたことない声を持ってるんだなと思った」と言われたのを覚えてますね。普段使わない声を使えていたのだとしたら、それは役柄がそうさせたんだろうなって。私の中に役の存在が生まれていたことを、客観的に教えてくれた言葉でした。

主人の助言も。ブルーザーが“本当の家族”になるまで

舞台に登場したチワワのブルーザーは、初演の後、実際に神田さんの家族になったことも知る人ぞ知るお話です。どういった経緯だったのですか?
「稽古のあいだ、慣れさせるためにも私のお家で一緒に寝ます」ってお願いして、連れて帰らせてもらっていたんです。ドッグカートに乗せたり、寒い日はおくるみして抱っこしたりして一緒に稽古場に通ったんですね。

でも本番が近くなった頃、東宝さんから「ここからは本番に向けてこちらで預かります」って言われたんです。えっ、まだいいのに……と思って、「じゃあ今夜一晩は連れて帰ります」って言ったその日の帰り道に、もう涙が出てきて、落ち込んじゃって。

そのあまりの落ち込みようを見て主人が、「そんなに落ち込むくらいなら、“飼いたいです”って相談してみたら?」と言ってくれて。それで、ブルーザーを我が家で飼えることになったんです。今度の公演にも登場しますし、今、チラシやパンフレットに写っているのもうちの子なんですよ! (チラシを指して)これこれ! ここに写ってる。親バカですね(笑)。
今回も名優ぶりを発揮してくれそうですね。
初演時は本当にまだ小さくて、カゴの中でプルプルしたりジーッとしていることが多かったんですが、今度はだいぶ大きくなったので、いい演技をしてくれると思います(笑)。

ちなみに、ブルーザーを入れているカゴを振り回すけっこう激しいダンスシーンがありますが、そのときは、じつはぬいぐるみになってます。はい、これはネタバレしても全然OKです。動物愛護の観点からもそこはちゃんと考慮してますので、ご安心ください(笑)。

甘いものを食べれば、大体のプレッシャーは何とかなる

神田さんは、さまざまな作品で主演を演じたり、プレッシャーもスゴいのではないかと思いますが、神田沙也加流のプレッシャーの吹き飛ばし方は何かありますか?
プレッシャーの吹き飛ばし方…そうですね、舞台で役を演じるときって、「神田沙也加」でいることからの健全な逃避だと感じているんです。入れものを変えさせてもらっている感じというのかな? 役替えセラピーみたいですよね。たとえば、神田沙也加だったら感じてしまうプレッシャーも、エルなら感じない。

これまでも、いろいろなキャラクターを演じさせていただきましたが、それを経験して帰ってくるたびに、神田沙也加という人間の性格を多面的に見られるようになっているのを感じます。
ということは、『キューティ・ブロンド』のあいだは、かなりボジティブになりますよね。持ちものもピンクのものが多くなったり?
なりますね〜(笑)。ピンクに寄りますし、リアクションがいつもよりだいぶ大きくなるとも言われますね。

まぁ、あとは物理的なプレッシャーの吹き飛ばし方と言えば、大体甘いものを食べれば何とかなるって感じです(笑)。
神田沙也加(かんだ・さやか)
1986年10月1日生まれ。東京都出身。A型。2001年、芸能界デビュー。2002年、歌手としてシングル『ever since』をリリース。2004年、ミュージカル『イントゥ・ザ・ウッズ』で舞台初出演後、舞台を中心に女優としてのキャリアを積み、『キューティ・ブロンド』にて第43回菊田一夫演劇賞受賞。声優としては、ディズニー映画『アナと雪の女王』で日本語吹替版アナ役を担当し、第9回声優アワード主演女優賞を受賞。その他にも映画、テレビアニメ、ゲーム、ラジオパーソナリティーとして多岐にわたり活動中。

「ミュージカルの世界」特集一覧

出演作品

『キューティ・ブロンド』
東京公演/2019年2月11日(月・祝)〜28日(木)@シアタークリエ
山形公演/2019年3月3日(日)@やまぎんホール
静岡公演/2019年3月6日(水)@静岡市清水文化会館マリナート 大ホール
愛知公演/2019年3月9日(土)〜10日(日)@刈谷市総合文化センター アイリス 
大ホール
大阪公演/2019年3月14日(木)〜18日(月)@梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
広島公演/2019年3月20日(水)〜21日(木・祝)@はつかいち文化ホールさくらぴあ
大ホール
福岡公演/2019年3月23日(土)〜24日(日)@久留米シティプラザ ザ・グランドホール
長野公演/2019年3月27日(水)〜28日(木)@ホクト文化ホール 中ホール
富山公演/2019年3月31日(日)@オーバードホール
音楽・詞:ローレンス・オキーフ、ネル・ベンジャミン
脚本:ヘザー・ハック
翻訳・訳詞・演出:上田一豪
音楽監督:小澤時史
出演:神田沙也加、平方元基、植原卓也、樹里咲穂、新田恵海、木村花代、長谷川初範ほか
http://www.tohostage.com/lesmiserables/

サイン入りポラプレゼント

今回インタビューをさせていただいた、神田沙也加さんのサイン入りポラを抽選で3名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

応募方法
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受付期間
2019年1月29日(火)18:00〜2月4日(月)18:00
当選者確定フロー
  • 当選者発表日/2月5日(火)
  • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
  • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから2月5日(火)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき2月8日(金)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
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