ニューストップ > ライフ総合ニュース
新R25
ライター・田中:つぶやきさんは、現在はどんなお仕事が多いのでしょうか?
つぶやきシロー:ありがたいことに、ナレーション業や執筆業などが増えていますね。2011年には『イカと醤油』(宝島社)、2016年には『私はいったい、何と闘っているのか』(小学館)という2冊の小説を書かせていただきました。
ライター・田中:そうだったんですね!失礼を承知で伺いますが、『ボキャブラ天国』で大ブレイクしたあと、テレビの露出がかなり減った気がします。なにか焦りなどはなかったのでしょうか?
つぶやきシロー:うーん。それはないかな。テレビの露出が減ったことにマイナスな印象を抱かれるかもしれませんが、ボクはホッとした気持ちのほうが強かったです。
ライター・田中:どうしてですか?
つぶやきシロー:毎日がしんどかったんですよ。テレビへの憧れはもちろんありましたけど、たくさんの番組に出させてもらっているなかで「オレなんて実力がないからいいです、いいです」と心の中で思っていました。もともと忙しいのがそんなに好きじゃないんですよね。
つぶやきシロー:ただ、漫談をやめたいとは思ったことがないんです。オレのやっている漫談って一番ハードな芸だと思っているんですよね。
ライター・田中:漫談がハード…?
つぶやきシロー:漫談ってずっと一人で話しつづけて、笑いを取らないといけないじゃないですか。絵がないからイメージしづらいし、自分の話術だけが頼りなんです。
ライター・田中:なるほど、それなのにどうして続けたのでしょう?
つぶやきシロー:「辛いからといって逃げるのも嫌だな」と思ったからです。自分で選んだ道だったし、途中で投げ出すのってカッコ悪いじゃないですか。自意識過剰のようですが、ストイックなんですよね。
ライター・田中:これまでずっとあるあるネタを披露されてきましたが、20年以上も活動されているとかなりの量になると思います。なぜそんなにたくさんのあるあるネタが浮かぶのでしょうか?
つぶやきシロー:器が小さいからかもしれません。オレのネタって「ムカつくとき」という始まりが一番多いんです(笑)。
つぶやきシロー:「怒り」を根源としたものは、ウケやすいんですよ。ワイドショーで悪いニュースを扱うのも同じで、人は誰かが怒っている姿を見たいんだと思います。
ライター・田中:なるほど…ちょっとわかります。
つぶやきシロー:そうでしょう? それに年を取っていくと、怒りは増えていくんですよ〜! だからどんどん浮かんでくる。オレ40歳を過ぎたら「ムカつくね」なんて言わないと思っていたけど、年を取るごとにどんどんムカつくことが増えていってるんだよね。そのうち歯止めがきかなくなるかもしれない。駅のホームでもいない? ひとりで誰かに向かって怒っているおじさん。オレも将来ああなりそうだなあ…
たしかに…いますよね(笑)
つぶやきシロー:でもね、ひとりで「ムカつくよね」と言っているのが、オレにとっては漫談なんです。“ワンカップ大関を飲みながら壁に向かって話している人”っていうのが俺の漫談のコンセプト。だから、怒りを笑いにできるだけ幸せだと感じます。
ライター・田中:Twitterの話に移りますが、つぶやきさんって2009年にアカウントを開設してから、ほぼ毎日投稿されていますよね。「つぶやきシローが自分の戦場を見つけた!」という声もあります。これってどうして始めたんですか?
つぶやきシロー:きっかけは、雑誌の取材を受けたとき、スタッフさんに勧められたんです。Twitterが世の中に広まりだしたころで、「“つぶやき”シローなんだからやってみませんか?」と言われて。初めは「その場だけかな?」と思っていましたけど、「雑誌の発売日まで続けてくれるとありがたいです!」と言われて「じゃあ仕方なく…」と思って始めました。
ライター・田中:自分から「やろう!」と思って始めたわけではないんですね…
つぶやきシロー:そんなわけないじゃないですか〜。そもそも、Twitterはあんまり好きじゃないんですよ。
そうなんですか!?
ライター・田中:フォロワーが98万人もいるのに、Twitterが好きじゃないんですか!?
つぶやきシロー:はい。普段はまったく見ていないし、フォローしている人もいないです。
出典 https://twitter.comつぶやきさんのツイッター画面。フォローが0だと「フォロー枠」の表示すらされないんですね…
ライター・田中:Twitterが苦手なのに、約10年もほぼ毎日ツイートを投稿しつづけていますよね。なぜ続けられているのでしょう?
つぶやきシロー:始めたときは「10日間くらいだけ頑張ろう」と思っていたんですけど、その間にフォロワーが徐々に増えていったんです。そうするとだんだん「勝手にやめたら失礼なんじゃないか」って気がしてきて…。やめ方がわからなくなってしまったんですよね。毎日寝ようと思っても「まだひと仕事が残っている」という感じがします(笑)。
ライター・田中:そんな気持ちで…もう勝手にやめてもいいのでは?
つぶやきシロー:う〜ん。でも、なかには「寝る前の最後につぶやきのツイートを見てから寝るか」と思っている人がいるかもしれないじゃないですか…多分98万人中10人はいると思う(笑)。その10人が楽しみにしていると考えると、やめたら失礼ですよね。
ライター・田中:その責任感はあるんですね!
つぶやきシロー:もちろんですよ〜。だから、フォロワーが激減して誰も見る人がいなくなったら潔くやめられるかな(笑)。
ライター・田中:そんな嫌々続けているTwitterですが、つぶやきさんがツイートする上で意識していることって何なのでしょうか?
つぶやきシロー:オレのツイートはフワっとさざ波のような印象でありたいんです。夜寝る前に見ている人がほとんどだと思うので、存在感は薄いけど邪魔にならないような。お弁当に入っている赤い漬け物ですね。
お弁当の赤い漬け物…! なんてつぶやきさんらしい表現
つぶやきシロー:あとは、小学生も見ているかもしれないから、漢字とひらがなのバランスは気をつけています。
ライター・田中:へぇ〜! そのバランスってそんな大事なんですか?
つぶやきシロー:漢字が多すぎては難しいし、ひらがなばかりだと読みづらいですよね。あとはだいたい一行で短く読めることも心がけています。一行半になると「美しくない!」と思っちゃうんですよ(笑)。
いつも薄着だな〜って人いるよね。— つぶやきシロー (@shiro_tsubuyaki)
いつも薄着だな〜って人いるよね。
ライター・田中:話を聞いていて思ったんですけど、つぶやきさんってしんどいと思いつつも、Twitterを10年以上続けられていますよね。多くの人は自分がやり始めたことを「続けられない」ケースが多いです。私も日記は何度も挫折しています。続けることが苦手だけど、物事を継続していくコツみたいなものがあるのでしょうか?
つぶやきシロー:うーん。そんなのはないかな…オレも嫌々続けているから、Twitterも一日の最後にやるようにしているし。
ライター・田中:そうですか…(ないんだ…)
つぶやきシロー:でも、たとえばその人にとって、日記やSNSが続かないかもしれないけれど、無意識に続けていることってあるはずなんだよね。
ライター・田中:それは私にもあるのでしょうか…?
つぶやきシロー:あるある!たとえば、何か集めているものってない? 漫画を買って読みつづけているとか。
ライター・田中:そう言われてみれば、好きな作家さんの本は買い集めています!
つぶやきシロー:でしょ?それも立派な継続ですよ。毎年欠かさず年に2回実家に帰っているだけでもすごいことだと思う。別のことで人より続けていることはみんな絶対あるからね!たまたま今やっていることが続かないだけで、別にそれをやめたところで「自分はダメなやつだ」と否定しなくて大丈夫だよ。
終始穏やかでテレビで見るイメージ通りだったつぶやきさん。しかし、インタビューの最後に思わぬ励ましをいただきました。新しいことに挑戦するも、続かなくて挫折してしまう私。「毎日続けられなかった…ダメだなあ」と落ち込むばかりでした。でもそんなとき、少し視野を広げてみると、思ってもみなかったものが自分の自信を取り戻してくれるきっかけになるかもしれませんね。〈取材・文=田中さやか(@natvco)/編集=福田啄也(@fkd1111)/撮影=長谷英史〉
つぶやきシロー(@shiro_tsubuyaki)さん | Twitterhttps://twitter.com/shiro_tsubuyaki