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【亀山敬司(かめやま・けいし)】19歳時に露天商で手作りアクセサリー販売を手掛け、その後、雀荘やカフェバーなどの経営を経て、レンタルビデオ店を開業。インターネット黎明期であった98年にはネット配信事業を開始。翌年にデジタルメディアマート(現 合同会社DMM.com)を設立
渡辺:ブルームバーグの記事で、亀山さんの資産が3800億円と書かれているのを見ました。DMMの株はほとんど亀山さんが持ってるんですよね?
亀山さん:そうだね。最近はそうじゃない子会社も増えてるけど。
渡辺:だとすると、3800億円はほぼイコール、会社の評価額ということですね。ちなみに、役員報酬はどれくらい受け取ってるんですか?
亀山さん:言わないよ。面倒だから。
「サラッと聞いてみる作戦」失敗
亀山さん:というか、生活費はそんなにいらないから、結局のところ残りの金は会社に置いておくだけ。ウチは八百屋みたいなもんよ。投資を受けてないんで、経営者と株主が分離してない。
渡辺:要は報酬も会社のキャッシュも亀山さんの資産だと。
亀山さん:まぁそうだね。だから俺の場合は役員報酬でもらおうが、会社に置いておこうが一緒なのよ。今は所得税より法人税のほうが安いから、どうせ使わないなら自分の報酬を下げて会社で使ったほうがいい。
渡辺:なるほど。
亀山さん:というか、キミは上場企業とか、外部資本が入ってるIT企業の経営者ばっかり取材してるでしょ?
渡辺:まぁ…そうですね。
亀山さん:そういうふうに株主と経営者が分離してる会社っていうのはごく一部で、世間から見るとこっちのほうが一般的なんだよ。だから俺は、どっちかっていうと商店街のオヤジと話が合うんじゃないかな(笑)。
亀山さん:たしかに上場企業は信用があるし、資金調達をしようと思ったら便利。ただ、株主と経営者が別だから、合理性に欠く意思決定をすることもあるんだよ。
渡辺:と、言いますと?
亀山さん:だって、俺とか八百屋のオヤジは少しでも税金を少なくしたいじゃん。税務署が怖いから「ウチは儲かってまへんよ」って言って、なるべく利益を少なく見せたい。でも上場会社は株主が怖いから、少しでも利益が出てるように見せようとする。だからたとえば、立ってもない売上を立てたりする粉飾決算なんて、八百屋のオヤジにはありえないわけよ。要はそれって、税金をたくさん払おうとしてる行為だから。
渡辺:なるほど…たしかに非合理的ですね。
亀山さん:あと、上場企業は利益が出たら配当するじゃない。これも結局儲けを株主に戻すことだから、経営の体力を削ることになる。だから、会社にとって必要な投資があるときは、配当なんてしないほうがいいよね。
渡辺:でも、上場企業なら配当出すのはやむを得ないというか、当たり前という感覚かなと…
亀山さん:直近の決算利益が気になるのも配当するのも、株主がうるさいからね。経営者が長期的な投資をしたくても理解されにくい。だから節税の意味でも一番いいのは、税務上は資産にならないデータやブランド、人材なんかに投資しちゃうことだよ。でもそれだと、その期の利益が減っちゃうから株主に怒られるんだけど。
渡辺:上場企業はステークホルダーが多くて大変なんですね…
亀山さん:ちなみに、サイバーエージェントは利益の10%ぐらい配当してるんだっけ?
渡辺:え!? え〜っと…
得意の“考えてるフリ”
渡辺:…すみません、ちょっとわからないです。
※後日調べたら、だいだいそのくらいでした。
亀山さん:まぁいいや。仮に10%ぐらい配当出してるとしたら、300億円利益出てても、そこから30億円も減っちゃうわけじゃん。もっとAbemaTVとかゲームに投資したいと思ってるなら、無配当にしちゃえばいいんじゃねっていう気はしない?
渡辺:え、どうなんでしょう? ちょっと僕が回答するには荷が重い質問です…
亀山さん:でも、配当をやめると株価が下がりやすいんだよね。配当しようが会社に置いておこうが株の価値は変わらないのに、株主は配当のほうが好きだから。まぁそんなこんなで、目先の株価が気になる株主にいろいろ理解してもらうのは大変よ。上場企業は良いこともあるけど、面倒なこともあるってこと。
渡辺:会社について参考になるお話をありがとうございます。ここからは、ぜひ亀山さんからお金に関するアドバイスをいただきたいなと。最近は資産運用に興味がある若い人も多いらしくて。
亀山さん:若いうちから資産運用なんてありえないよね。だって、自分で仕事やったほうが稼げるじゃない。
渡辺:ありえないとまで言いますか。
亀山さん:資産運用は誰がやるかっていうと、金を持ってても自分で増やせない人。財産はあるけど年取ったからもう仕事は無理だなとか、もう隠居してゆっくりしたいなって人がやるもんだよ。
やはり大物ほど率直にモノを言う
渡辺:資産運用してる人たちを敵に回しそうな発言ですね…
亀山さん:だって資産運用とか株とかっていうのは、どこかの会社に金を入れて増やしてもらうってこと。要は稼ぐことを誰かに任せるっていう話じゃない。
渡辺:まぁ、そうですね…そういう見方をすれば。
亀山さん:その道のプロを目指すの?それなら話は別だけど、たいていは本業の片手間に貯金を増やそうと思ってやってるだけじゃん。
渡辺:…そうですね。
亀山さん:そういう運用をしてると意識高く感じるかもしれないけど、若いうちはそんなことに時間を割くよりも、自分の価値を上げることを頑張ったほうがいい。25歳なんてこれから本格的に仕事をしようっていう大事な時期なのに、そんなときに資産運用なんて、なに眠たいこと言ってんだって話だよ。
亀山さん:ソフトバンクが牛丼がタダになるキャンペーン(SUPER FRIDAY)とかやってるけど、あれでみんな牛丼屋の前に並ぶじゃん。でも牛丼なんて、たかだか300円くらいだろ? そのために1時間並ぶくらいなら、その時間使って勉強したほうがいい。
渡辺:なるほど…耳が痛いです。
亀山さん:それと同じで、株とか通貨のチャートを見て日々の上げ下げで時間使うくらいなら、稼ぐ力をつけるための勉強をしたほうがよっぽど価値がある。25歳なら、英語でも中国語でもプログラミングでも、ゼロからでもなんだってできるじゃない。俺みたいなオヤジが勉強するより、若いヤツがやるほうが絶対効率がいいよ。だったら、今はそこを磨くほうが投資効率いいと思わない?
渡辺:はい…改めてそう言われると、そう思います。
亀山さん:だから、若いうちは頭やカラダに時間も金も投資して、とにかく自分の価値や時間あたりの収入、つまり時給を上げることに集中せよっていうことよ。
渡辺:時給を上げる。「稼ぐ力」を高めろってことですね。
亀山さん:そう。それに時給が1000円のヤツより10000円のヤツのほうが金が貯まるからね。だからまずはそこを頑張って、年取ってもう時給を上げるのは無理だと思ったら、貯まった金を運用すればいい。
渡辺:なるほど。ちなみに、最近は副業をしている若者も増えているようですが…
亀山さん:副業も、自分の時給を上げることに役立つ副業ならいいと思う。だけど、つまらない深夜バイトで疲れて、昼間の本業が仕事にならないとか、それはバカだよね。どうしても金が必要とかじゃないかぎり、目先の稼ぎより学び。 学びのある副業ならいいけど、そうじゃないなら本業に集中したほうがいい。
亀山さん:あとはそもそも、若いヤツが資産運用なんて言ったって、たいした資産なんかねえだろうと。100万円くらいで資産運用しても、たいてい損するよ。
渡辺:それはなぜですか?
亀山さん:何億も動かしてるプロの人たちとは勉強量が違うからね。普通の仕事は、自分が頑張ったら得をすることはあっても損をすることはないけど、資産運用は勝つか負けるかの世界。どんなに頑張っても、自分より上手(うわて)がいれば損するから。
渡辺:なるほど、そう言われるとたしかに…
亀山さん:まぁ、こんなふうにエラそうに語ってるけど、若いときにいっぱい損を経験した俺が言うんだから間違いないよ(笑)。
渡辺:甘いこと考えていた読者も目が覚めたと思うんですが、株を買ったりしてもプラスになることってまったくないんでしょうか?
亀山さん:自分が勉強したい業界や会社があるなら、小遣い程度でそういう会社の株を買うのはいいんじゃない。身銭切ったら経営側に立って、その会社の業績が気になるよね。たとえば俺なんかも、太陽光発電に投資したりそれに関連した会社をつくったりしたら、勉強せざるを得なくなる。
渡辺:英会話の勉強も、高いお金を払ったほうが続くみたいなことですかね。
亀山さん:そんな感じかな。世の中の仕組みを勉強するために投資してみたり、遊びだと思える範囲でゲームとして楽しんだりするならいいんじゃない。
渡辺:では、お金を借りることについてはどう思われますか?
亀山さん:その金を自分に投資するならいいと思うよ。勉強したり、学校行ったり、ビジネスをやったり。俺は22〜23歳ぐらいのときに信用金庫から2000万円借りてカフェバーをやったんだけど、そのときの金利は8%ぐらいだったかな。でも今なら3%とかで借りられるからね。
渡辺:そんな若くして2000万円も借りたんですか…さすがです。
亀山さん:問題なのは、消費のために金を借りるヤツ。簡単にリボ払いしたり、サラ金で金を借りたりして「とりあえず今を楽しもう」みたいな。そいつらは、金利の罠がわかってないわけ。「遊びのために金を借りるな」ってことだけは覚えておいたほうがいいかな。
渡辺:胸に刻んでおきます!
渡辺:最後に聞きたいんですけど、先ほどおっしゃっていた「自分の時給」を上げるためには、やっぱり儲かる仕組みをつくるのが一番じゃないかと思うんです。やっぱり、若いうちからそういうことを意識しておいたほうがいいでしょうか?
亀山さん:仕組みもいいけど、それより若いうちは人がついてくる人間になったほうがいいよね。
渡辺:なるほど、そう来ましたか。
亀山さん:だって、なんでこんな俺でも稼げてるかっていうと、要はたくさんの頑張ってくれる社員がいるからじゃん。俺は働いてくれてる社員から搾取しているようなもんだよ(笑)。結局経営者って、社員が仕事できるように育てたり機会を与えたりして、利益が出たらちょっとずつ上前よこせよって言って、それを積み重ねて「資産何千億円です。えっへん」とか言ってるわけだから。
率直な発言の極み
渡辺:上前よこせ(笑)。
亀山さん:そう。俺は藤田さんが成功したのもさ、彼に飛び抜けた才能があったからというよりも、人がついてきたからだと思ってるわけ。要は性格が良かったってこと。逆に、性格はロクでもないんだけど、むちゃくちゃテクノロジーとかクリエイティブに強いIT企業の社長とかもいるじゃない。そういう会社はその人間の力である程度までは上がるんだけど、そいつのクリエイティブ力が落ちると一緒に落ちる。
渡辺:それはおっしゃる通りですね。
亀山さん:だから勉強して、自分の時給を上げたあとは部下の時給を上げて、その上で彼らから上納金をもらう。これが一番稼げるんじゃない?まぁ、25歳くらいのときならややこしいことを考えないで、まわりのヤツから慕われたらいいのよ。
渡辺:「慕われたらいい」って簡単に言いますけど…
亀山さん:要は信用されりゃいいってことだ。
渡辺:いや、でもどうやって信用されればいいんですか?
亀山さん:なにも難しくないよ。騙さないで、約束守って、助けてやればいい。そうやって自分を信用してくれる友だちをいっぱいつくって、そいつらに「一緒にやろうぜ」って言えば、自分はバカでもなんだってできるから。
渡辺:ズバっと刺さりました…友だち、つくります。
亀山さん:友だちといっても、淋しいときにつるむ遊び友だちじゃなくて、お互いに信用できる友だちね。一緒に働こうと思える仲間。
渡辺:はい…!最後はシンプルで深いアドバイスに帰着しましたが、今日のお話を総括して、読者に一筆お願いできないでしょうか?亀山さんのマネーの金言をぜひ。
亀山さん:字は勘弁してくれないかな。(字を書くの)苦手なんだよ。代わりに書いてくれない?
渡辺:え、僕がですか!?色紙の価値が下がりそうですが…なんて書けばいいですかね?
亀山さん:「友だちつくれ」でいいや。「投資なんてしてないで友だちつくれ」って書いといて。
渡辺:わかりました。…よし、書けました! じゃあせめてここにサインだけでも。
亀山さん:はいはい。
亀山さん:こんな感じで。
渡辺:ありがとうございます!しかし、プレゼント用の色紙に字を書くって、意外に緊張するもんですね。
亀山さん:それをやらそうとしたんだろう、キミは。
渡辺:いやいや、亀山さんの代筆だから余計プレッシャーだったんですよ!
渡辺が書くことになってしまった亀山さんのサイン入り色紙は、読者の皆さまにプレゼントいたします。欲しい方は、新R25のTwitterアカウントをフォローのうえ、こちらの投稿をリツイートして応募してください!この色紙をゲットすれば、上納金を献上してくれる友だちがたくさんできるかも?(笑)
ちなみに、DMMのミーティングルームの廊下はテーマパークみたいでした。何ココ…
〈取材・文=渡辺将基(@mw19830720)/撮影=長谷英史〉