by Anthony Easton
2018年の7月は東京都内で観測史上初の40度オーバーをたたき出すなど、日本に記録的な猛暑が襲ってきています。目の前にある危機として熱中症対策などがとりざたされていますが、暑さの影響は外的要因だけにとどまらず、「
気温の上昇により
自殺率も増加する」という内的なメンタルヘルスへの影響もあるという研究結果を、The Guardianが紹介しています。
Rising temperatures linked to increased suicide rates | Environment | The Guardian
https://www.theguardian.com/environment/2018/jul/23/rising-temperatures-linked-to-increased-suicide-rates
近年の大規模な研究によると、「
気温の上昇」は
自殺率の増加に関連があり、その影響力は同じく
自殺率の増減に関連があるとされる「景気の変動」と同じレベルにあると多くの研究者が述べています。
メンタルヘルスと地球温暖化との関連性に着目した近年の研究では、アメリカとメキシコの
気温と自殺について分析が行われました。結果として、平均月間
気温が1度上昇した場合、
自殺率はアメリカで0.7%、メキシコで2.1%増加したとのこと。分析は季節変動や貧困レベル、さらには自殺に影響する可能性がある有名人の自殺に関するニュースまで考慮に入れて行われ、裕福さや地域の気候帯の要因などにかかわらず暑い時期になると自殺が増えることが発見されました。
![](https://image.news.livedoor.com/newsimage/stf/7/2/72a5b_88_574327eeffcc20b294c2cdf2511cda07.jpg)
アメリカとメキシコにおける
気温と
自殺率の相関を研究したスタンフォード大学のMarshall Burke教授は、「自殺はほかのどんな暴力よりも世界的に死を増やしています。そのため、自殺が何に反応して増減するかを判断することは重要です」と述べています。また、研究者たちは「気候の変動による
自殺率への影響は穏やかなものだが、自殺の多い裕福な国ではそれが大きな健康負担の変化につながる可能性もある」と指摘しています。
The Guardianは「この種の研究は
気温と自殺の関連を証明するものではない」としつつも、結果には明確な一貫性があると述べています。
また、Twitterにおける600万件以上のメッセージを分析したところ、「憂うつ」や「孤独」「抑うつ」に関連する言葉の使用が、
気温の上昇に伴って増えていると判明したとのこと。この心の不安定さは、猛暑というコンディションの中で体だけ冷やされた時に脳への血流が変化することに一因があるのではと考えられているそうです。
![](https://image.news.livedoor.com/newsimage/stf/b/9/b912d_88_ef64ff58f15a42083d534dbc4e6e60dd.jpg)
by Army Medicine
このまま炭素の排出が止まらない場合、2050年には自殺者が9000人から4万人増加すると研究者は推計しています。これは景気後退により失業率が1%上昇することによる影響よりもはるかに高いものだと指摘されています。また、暑さによるメンタル的な影響は内に向くものだけではなく、猛暑が加速すると他者への暴力性も増すとの研究結果も示されています。