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デイリーニュースオンライ
「条例提出に合わせてポーズ的に開いただけ。我々のガス抜きの場にする狙いもあるのだろう」(飲食業組合関係者)と冷めた見方も出る中、飲食団体の幹部たちは都議団を前に“最後の訴え”を行った。
「浅草は外国人も含めて様々な観光客が訪れ、エリアによって昼の街や夜の街があります。そんな街で全面禁煙はできません。たばこを吸うお客さんを追い出して売り上げが下がっても誰も補償してくれるわけじゃない。まして10坪程度の小さな飲食店に喫煙室を作るなんて、とても無理です。
従業員を雇っている店は禁煙といわれても、浅草にはたばこを吸う旦那さんと従業員の2人で営んでいる店もたくさんあります。従業員にだって喫煙者はいるんです。その従業員を辞めさせたら、ただでさえ人手不足の時代に後任が見つかるわけがありません。商売は個人の自由で、仮に喫煙店を続けてお客さんが来なくなっても、そこは自己責任でいいでしょ」(冨永照子・浅草おかみさん会理事長)
「分煙のために室内に構造物をつくるとなると、設計・施工、申請の許可を再度取らなくてはならず、2〜3か月営業できなくなる場合もあります。その間、従業員の給料や生活費はどうすればいいのか。そもそも200万、300万円かかる分煙室設置のコストを補助金で出してくれるのでしょうか。
喫煙者も非喫煙者も同じ都民であり、同じように共存できるのが望ましいはず。そこで出てきた策が分煙ですし、その取り組み(分煙ステッカーの店頭表示など)をわれわれも保健所などとも協力しながら散々やってきました。何年も積み重ねてきた努力を無にして一律禁煙にするのは行き過ぎだと思います」(菊地明範・東京都社交飲食業生活衛生同業組合副理事長)
「神奈川県が受動喫煙防止条例をつくった際にも、われわれ喫茶店業界は大きな影響を受けました。コーヒーというのは、特に団塊の世代などは、たばことセットで文化になっている面がありますし、下町や商店街の中の小さな喫茶店には、たばこを吸う人だけが集まっている店もあります。それが条例制定によってできなくなり、従業員も雇えないとなると、営業を続けていけるかどうか……」(本間修・東京都喫茶飲食生活衛生同業組合理事長)
「いま多くの料亭の室内は、今日はたばこを吸う方、明日は吸わない方と部屋ごとに区切って営業しています。和食はユネスコ無形文化遺産に登録されたうえ、インバウンド需要もあり好調です。料理を学びに来ている人もたくさんいますが、そうした方々も雇えなくなると、100年以上の歴史あるお店も伝統文化を守れなくなります」(山戸聖一・東京日本料理業組合事務局長)
こうした飲食現場からの訴えに、都民ファの議員からは、「(禁煙にして)一時的に売り上げが下がっても回復する」、「店の敷地の屋外に灰皿を置けばいいのでは」といった質問が飛んだが、現場の実状はそんなに単純ではない。
「全面禁煙にしても3〜4か月で売り上げが回復する店があると言いますが、それは自前で店舗を構えている店の話。高い家賃を払って営業している店は売り上げが戻る前に経営が苦しくなってしまいます。
屋外に灰皿を置けばいいというのも、テナントで歩道ギリギリに建っている店はそもそも無理ですし、仮にスペースがあっても勝手に灰皿を置くことはできません。歩道近くに灰皿があれば通行人に望まない受動喫煙の被害も及びます」(宇都野知之・東京都飲食業生活衛生同業組合常務理事)
受動喫煙の防止対策を進めること自体に飲食業界も異は唱えていないが、条例制定で一気に規制を強めたい都議らと、これまでやってきた分煙促進の自助努力を続けて経営や顧客サービスの自由度を守りたい業界との溝は埋まらぬまま、ヒアリングは終了した。
ヒアリングに参加した飲食業7組合が都議団に手渡した「要望書」には、条例案に対する慎重な議論を再度求めるとともに、都民ファーストの会の政策パンフレットに記されたこんな文言が引用されていた。
〈都政の第一目的、それは都民の幸せを実現すること以外にありません。一部の人間、集団の利益にあってはいけません〉
〈「東京大改革」は都民が決め、都民と進める〉
“人”に焦点を当てたという小池知事の受動喫煙防止条例だが、少なくても都民の総意とはいいがたいほど強引かつ性急に制定されようとしている感は否めない。いずれにせよ、今後の都政のあり方を占う意味でも、東京都の受動喫煙対策の妥当性や実効性を都民自身がしっかり検証していく必要がある。