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追いついたと思ったのも束の間、再びあと2点が必要な状況に押し戻された浦和の精神的ダメージは大きかった。MF山田直輝が振り返る。「あそこ(失点シーン)でガクッときた。失点したら(アウェーゴールのルールで)厳しいことはわかっていたので、メンタル的に落ちてしまった。失点がなければ、(その後の得点がなくても)2-0なら延長に入れた。そのままの状態を少しでも長く続けられればよかったが……」 結局、浦和は2点どころか1点を加えることもできず、試合終了。第2戦は浦和が2-1で勝利したものの、2戦合計2-3で甲府が準々決勝進出を決めた。 まさかの試合展開に、オズワルド・オリヴェイラ監督も厳しい口調で語る。「2点を決めたが、その後、気を抜いてミスから失点してしまった。試合のなかで重要な時間帯だった。我々が攻め続けていたので、3点目を取っていれば試合は違うものになっていただろう」 全体的に言えば、浦和の試合内容はそれほど悪いものではなかった。特に前半はパスもよくつながり、相手を食いつかせて背後を狙う。そんな相手を揺さぶる攻撃ができていた。球際での争いでも上回り、セカンドボールもよく拾えていた。 しかし、だからこそ、問題の根は深いとも言える。 せっかくいいリズムで試合を進めながら、ある瞬間、お互いが譲り合うようなパスミスが起きたり、相手FWへのマークが曖昧になってカウンターを受けたりしてしまう。まずいプレーが見られたのは、決して失点シーンだけではなかった。
選手個々の能力だけを見れば、浦和はJ1全体でも上位の力を持っている。にもかかわらず、こうしたまずい試合運びが頻繁に顔をのぞかせるのは、長期政権を築いたペトロヴィッチ元監督が去って以降、なかなか自分たちのスタイルを確立できないことが影響しているのではないだろうか。 キャプテンのMF柏木陽介は「みんな、一生懸命やっているのは間違いない」と言いつつ、こう語る。「もっと落ち着いてボールを受け、相手に寄せられても一歩外に持ち出すだけで簡単にかわせるところでも、慌ててワンタッチで蹴ってしまい、落ち着いて試合を進められない」 なぜ、そんなことが起こるのかと言えば、「ミシャ(ペトロヴィッチ元監督)のときは、ある程度(オートマティックに)ここに誰かいる、というのがあった」(柏木)からだ。確立された連係に頼れない今、浦和は自然とミスを増やしてしまう。 長期政権下のチームでは、当然、選手補強も3-4-2-1をベースとした独自の戦術に沿ってなされてきた。しかし、現在、オズワルド・オリヴェイラ監督が採用しているのは、4-2-3-1。マークが曖昧になってカウンターを許してしまうあたりは、3バックから4バックへの変更に、そもそもの適性も含め、選手が適応できていない様子がうかがえる。 浦和は現在、長期政権下で独自色の強いサッカーを志向してきたツケを払わされている、と言えるのかもしれない。 とはいえ、鹿島アントラーズを率いた時代には、数々の栄誉に浴したブラジル人指揮官が、この状況を看過するはずはない。
「自分が(新監督として)来日したときは連戦の真っただ中で、多くのトレーニングができなかった。選手はいいコンディションで戦えてない。もう一度選手が戦えるよう、中断期間にコンディションを整えたい」 そう語るオズワルド・オリヴェイラ監督は、3バックへの再転換も考慮に加えたうえで、J1の中断期間を利用して厳しいトレーニングを課すことを、すでに選手たちにも伝えているという。GK西川周作が語る。「中断期間に、また強い浦和レッズをお見せできるよう、がんばりたい」 世の中の関心がワールドカップに集まるなか、浦和の復権を目指す戦いはまだまだ続く。というより、これからが本番と言えそうだ。
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