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新しいことにチャレンジしたり、環境を変えたりして、結果を残したいと思うのは当然のこと。ただし、それが実を結ぶかどうかは、すぐに答えは出ない。今はまだ様子見の段階にある。 その現状について、イ・ボミはこう語る。「現在は、昨年から崩れてきたスイングをしっかりと修正しているところなのですが、もっとシンプルに考えないといけないと思っています。これまでの感覚を取り戻すためにさまざまな努力をしているのですが、その際にいろいろなことが気になってしまうんですね。それを、少しずつ減らしていかないといけないな、と。コースの中でもいろいろと考えてしまうので、それがスコアにも、ショットにも影響している、ということは確かにありますから」 ショットがブレたり、スコアが悪かったりすれば、あれこれ考えてしまうものだ。イ・ボミは今、まさにその状態にあって、ショットの際に”迷い”が生じてしまっているという。「シンプルに考えなければ……」と頭ではわかっていても、それをうまく消化できずにいる。 ゴルフにおいて、とりわけスイングについては、毎年寸分も違わずに何年も同じスイングを継続できる選手は皆無に等しい。若いうちは、筋力や体力が前年よりも増すだろうし、逆に年を重ねるようになれば、筋力や体力は徐々に落ちて、スイングのフォームや形は微妙に変わっていくからだ。 ゆえに、スイングについて悩み、一度”負のスパイラル”に陥ってしまうと、そこから抜け出すのはなかなか難しい。イ・ボミも、そのことは重々承知している。
「スイングについては、自分で何度も確認して『ああでもない』『こうでもない』と修正してやっているのですが、以前のよかった頃のスイングには簡単に戻りません。それでまた、いろいろなことを考えて、悩んでしまう。 結果を残さないといけないので、実戦でテストすることもできず、今は本当に難しい状態にあります。ゴルフは考えることが多いと、それがスコアに影響してしまうんですけどね……」 考えることが多くなりすぎているイ・ボミの現状について、周囲のスタッフもよくわかっている。だが、余計なアドバイスをすれば、彼女の混乱は深まるばかり。何の解決策にもならない。 もはや、今のイ・ボミは”自分自身との戦い”に勝つしかないのだ。「本当に、これはもう自分自身の問題なんです。いい結果を残したいのですが、ショットについていろいろと考えてしまう。ミスショットも、以前は右に飛んでいくだけだったのが、今は両方に飛んでいくこともあります。 ただ、コンディションは悪くありませんし、トレーニングもしっかりできています。重要なことは、余計なことを考えずにスイングのリズムやタイミングをつかむこと。それがうまくいくと信じていますし、それができれば、結果もついてくると思っています」 イ・ボミはそう語ると、こう付け加えた。「昨年よりもいい結果を残したい。早く、みんなが期待している結果を出したい」
今年の8月には30歳となるイ・ボミ。精神的にも、体力的にも、絶頂期はすでに過ぎているだろうが、多くのファンが”強いイ・ボミ”の復活を見たいと思っている。そして、イ・ボミには「その期待に応えたい」という強い気持ちがある。 振り返れば、昨季のツアー1勝、賞金ランキング23位も、ひとりのプロ選手としてみれば、決して悪い成績ではない。だが、その成績に一番納得していないのは、イ・ボミ自身だった。その前が2年連続賞金女王だったという自負もあるだろうが、それ以上に「ファンの期待に応えられなかった」という忸怩(じくじ)たる思いがあったからだ。 そんな周囲の期待に応えようとする思いが、今の彼女にはプレッシャーとなっているようにも映るが、逆にそれを力に変えて、復調を遂げてほしいとも思う。 イ・ボミが練習を終えて、車でゴルフ場を後にする帰り際、こんな質問をしてみた。――勝負に対する欲や、「絶対に勝たないといけない」という気持ちは今、どの程度ありますか? イ・ボミは笑顔を浮かべながら、こう答えた。「今は、そういうことを語る段階ではありません。私自身が自分に負けず、試合を諦めることなく、必ずよくなるという意地を持つこと。そうしたことが、今は大切だと思っています」 女子ツアー屈指のショットメーカーと言われたイ・ボミ。その正確無比なショットが再び見られる日が来ることを、今はゆっくりと待ちたい。
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