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プレジデントオンライン
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他人より相対的に上の地位財の獲得へ……。繰り返しますが、そうした地位獲得競争のために地位財へ支出することで、非地位財に回す資金がなくなると幸福度は下がるのです。地位財への支出は相対的消費ですから、際限がありません。「わかっちゃいるけど、やめられない」というところでしょうか。こうした不毛な争いより非地位財に資金を回したほうが幸せになれるはずです。
幸福を高めるためのお金を使い方で、「使う対象(地位財か非地位財か)」以外に重要なのが、自分の「性格」をよく知るということです。
興味深い調査結果があります。ケンブリッジ・ジャッジ・ビジネススクールとケンブリッジ大学の心理学部が、イギリスを本店とする多国籍銀行と協力し、銀行顧客の参加者625人の7万6863件の銀行取引データを内容別に59のカテゴリーに分類して調査したものです(https://www.psychologicalscience.org/news/releases/spending-that-fits-personality-can-boost-well-being.html)。自己申告ではないので、非常に客観的なデータだと言えます。
ここでの「性格」とはいわゆるビッグファイブ(特性5因子論)と呼ばれるもので次のものです。
(1)経験への開放性(Openness to Experience)(2)勤勉性(Conscientiousness)(3)外向性(Extroversion)(4)協調性(Agreeableness)(5)情緒不安定性(Neuroticism)
調査の結果、例えば、「パブで飲む」という消費行動(支出)は、(2)勤勉性(の低さ)と(3)外向性(の強さ)という性格の因子と関連することがわかりました。また、「慈善事業をする」ことや「ペットを飼う」といった支出は、(4)協調性(の強さ)という性格の因子に結び付きました。
さらに銀行の取引を通じた調査の結果、人はたいてい自分の性格に一致した支出項目にお金を多く使うということが分かりました。すなわち、外向性の高い人は内向的な人に比べて毎年52ポンド(約8000円)多くパブでの飲食にお金を使っていました。一方、勤勉性が高い人はそうでない人に比べて年間124ポンド(約1万9000円)多く健康と運動にお金を使っていました。
以上のような消費行動と、それぞれの人がいつ幸福を感じるかという調査データを煮詰めていくと最終的に次のようなことが明らかになりました。
●自分の性格的な特徴に沿ったお金の使い方をすることが幸福度を増す。●幸福度(の高さ)は、「収入総額/支出総額」との関連性よりも、「性格に応じた支出」をどれだけするかにずっと強い関連性がある。
調査にあたったJoe Gladstone氏は次のように述べています。
「歴史的に見て、お金と幸福感の相関関係は弱いとされてきたが、我々の研究は実際の銀行取引データを調査することで我々の性格的な特徴に沿っていて、心理的ニーズを満たす商品やサービスにお金を使うことで幸福感が増すことを証明できた」
社交的で飲みに行くことが好きな人が飲み代をたくさん使う一方、誠実性が高い人が自分と向き合ってパーソナルジムなどの健康と運動にお金を使う。そうやって自分の性格・特性に応じてお金を使うことが幸福をもたらす、という結論は素直に理解できます。
お金で手に入れられる「モノの価値」は誰にとっても同じで、その価値は価格によって決められると考えがちです。しかし、その人の性格によって価値は全く異なるものという結論は多くの示唆を与えてくれます。自分の性格を熟知し、それに沿った支出をしなければ、いくら収入が高くても幸福感を高めることは難しいということなのです。
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(行政書士・不動産投資顧問 金森 重樹 写真=iStock.com)