EXILE・佐藤大樹と役者・神里優希。舞台「錆色のアーマ」で築いた、垣根を越えた友情

「公演からもう半年? 早いね…」――。舞台「錆色のアーマ」のDVD発売記念イベントに姿を見せた佐藤大樹は、ぽつりとつぶやいた。年の瀬にそう言えるのは、充実した1年を送ってきたからこそである。そして、もうひとりの登壇者・神里優希は「人生で一番短い」という短髪で登場し、佐藤を驚かせた。そんなやりとりに、彼らが全力で駆け抜けた6月が少し遠くになってしまったことを感じさせ、寂しい気もするが…。むしろふたりの絆は公演後により深まっていた。

撮影/川野結李歌 取材・文/黒豆直樹 制作/iD inc.

握手会&お渡し会では、感極まって涙したファンも…

まずは本日(※取材日)、アニメイト渋谷で行われたファンの方への握手会&DVDお渡し会、おつかれさまでした! 最近では舞台のDVD発売に際して、こうしてキャストが登壇してイベントを開催することも多くなりました。
佐藤 じつは公演後も共演陣…とくに雑賀衆を演じた7人(佐藤、荒木健太朗、永田崇人、平田裕一郎、章平、神里、崎山つばさ)で集まってごはんに行ったりすることが多いんですけど…。
神里 そこで「DVDのお渡し会ができたらいいね」という話が出て、今回、実現したんです。
素敵です! 待望のイベントだったのですね。先ほどのイベントから取材させていただいていますが、北海道や関西から来た方もいらして、うれしくて涙を流している方も見受けられました。おふたりもひとりひとりと握手をしながら、楽しんでお話されていましたね。実際にこうしてファンの方とお会いしてみていかがでしたか?
佐藤 たくさんの方に来ていただいて本当にうれしかったです。わざわざ遠方から来てくださった方もいらして。
神里 そういった方と直接お話するのはとても貴重な経験でした。何度もDVDを見て、楽しんでいただきたいです。
▲佐藤大樹
▲神里優希
livedoorニュースで神里さんを取材させていただくのは3回目になります。最初に登場していただいたときから、今年3月のインタビュー時は金髪でした。そのあとの本作のビジュアルでは紫色の髪で、今日お会いしたら短髪だったので、イメージがガラッと変わっていて驚きました。
神里 そうなんですよ。イベントでもみなさん、「あ、髪が…」て感じで(笑)。一瞬、間が空いて「あ…、カッコいいです」って。いやいや、思ってないでしょ!(笑)
佐藤 僕も久々に会ったんですけど、いままで見た中で一番…。
神里 うん、自分の中でも人生で一番短いね。
ファンの驚きは、今回とくに「錆色のアーマ」のDVDイベントということで、舞台で神里さんが演じた、雑賀衆の暗殺業務を担う見た目は女のような美少年・アゲハとのギャップの大きさにあるのかと。
神里 そうでしょうね。(本作のポスタービジュアルを見つつ)これはヘアメイクさん、衣裳さんの素晴らしい力のおかげですね(笑)。

これまでにない、新たなハードルを感じて臨んだ舞台

こうしてDVD発売時に公演時やその後を振り返りつつ、お話をうかがえるのは貴重な機会です。本作は、天下統一をめざす織田信長(増田俊樹)に惹かれ、鉄砲で戦乱の世を切り拓こうとする雑賀衆の闘いが描かれますが、改めて6月の公演を振り返ってみていかがでしたか?
佐藤 僕にとってはまず初主演作であり、2.5次元の作品も初めての経験。これまでアーティスト活動をやってきて、舞台を中心に活躍されている役者さんだけでなく、異色のメンバーでイチから作品を作り上げることができて、ひとつのターニングポイントになった仕事ですね。今年1年の仕事の中でもとくに印象的です。
雑賀衆の頭領である孫一を演じられましたが、本作の公演を通じて、もっともチャレンジングだったことは?
佐藤 やはり歌と殺陣ですかね? EXILE、FANTASTICSでは歌ではなくパフォーマーとしてダンスで勝負してきたけど、今回は歌わなくてはならず、さらに“アーマ”と呼ばれる武器を使っての殺陣もあって、そこは苦労しました。
神里さんは、孫一を中心とした雑賀衆のひとりで、メンバーの中でもとくに暗殺を担うアゲハを演じられました。
神里 いままで演じてきた役と違って、心は女の子という設定があったので、どうしたら見ているお客さんにそう思わせることができるのか? 所作から佇まいまで意識しないといけない部分が多かったです。それに、男の“勢い”と、女の“繊細さ”をどこで表現するかは難しかった部分で、これまで以上に苦労が多かった役ですね。

佐藤も太鼓判! アゲハは、神里優希の一番のハマり役

実際に公演が始まってから、観客の反応や周囲の反響などを含め、手応えを感じた瞬間はありましたか?
佐藤 正直、初日の幕が開くまで、自分たちがやっていることは本当に正しいのか、受け入れられるのか? という不安がみんなありました。でも初日にカーテンコールが3回くらいあって、ホッとしたのを覚えてます。口コミでも「よかった」という声が広まっていると知って、楽しんでもらえてるんだとうれしかったです。
神里 僕は正直、あんまり手応えとか感じてなかったんですけど…(笑)。
佐藤 ね、本人はこう言うでしょ? でも実際、公演に来たLDHの先輩や後輩、女優さんとかみんな「アゲハが一番スゴい!」って言ってたんですから。
神里 いや、そういう話を聞いても「まあウソだろう」って(笑)。
佐藤 いやいやいやいや! 何でだよ(笑)。いままでの作品の中でも一番のハマり役でしょ。
神里 やっているときはとにかく必死だったし、終わってからも別に…。
それこそDVDでご自身が出ている作品を見ることはないんですか?
神里 いや、とりあえずDVDはセットするんですけど、たいてい「うわっ! (恥ずかしくて)見てられねー」となってしまって(苦笑)。ただ今回は、ヘアメイクさん、衣裳さんが本当に素敵なものを与えてくださって、自分を見ているというより、まったく違う人物を見ているように感じられて、ちゃんと最後まで見られました。
それは完全にアゲハになりきれたということで、成功と受け止めていいのでは?
神里 そうなんですかね…?(笑)
佐藤 だから成功してるって!(笑)
佐藤さんは初の主演という点で、孫一を演じられていかがでしたか?
佐藤 楽しかったですね。自由にやらせていただいて、演出の元吉庸泰さんからも「大樹が動けばそれが孫一になるから」と言ってもらえて。ただ、幕が下りた瞬間に疲労がドッと押し寄せてきて「あぁ…」ってなるんですよ。それはいままでのアーティスト活動でもあまりなかったことでした。
LDHのみなさんが神里さんのアゲハを絶賛されていたそうですが、佐藤さんの孫一に対する反応は?
佐藤 いや、優希の評価ばかり聞いていて、自分のことはあんまり…(笑)。
神里 いやいや、そんなわけないでしょ!(笑)
佐藤 まあ、「大樹らしいね」「ハマってたよ」と言ってもらえたのでよかったです。いままで主演としてやったことがなかったので、「大樹に主演らしい芝居ができるのか?」と不安を抱いて観に来てくださった先輩もいらしたんですけど、「ちゃんとできるんだね」と言っていただけてうれしかったです。
改めて、DVDの見どころを教えてください。
佐藤 何と言っても、スペシャルドキュメント映像がオススメです。スタッフ、キャストが一丸となって取り組んだ稽古風景や、千秋楽の映像も収録されていて盛りだくさんです。
神里 ヘアメイクや衣裳はもちろん、蛍火ホタルビ(永田崇人)だけがつけていない“八咫烏ヤタガラス”の紋章や雑賀衆キャスト7人がそれぞれこだわりを持って小道具さんと作り上げた“アーマ”を、より細かく見られると思います。素晴らしいスタッフのみなさんのこだわりを背負い、僕らキャストもこだわって作り上げた姿なので、そういう部分にも注目していただけたらうれしいです。
佐藤 特典映像はキャストが射的対決をしているのですが、役柄の垣根を超えて和気あいあいとした姿を楽しんでいただけると思います。はっちゃける雑賀衆と、チーム信長軍…みんな爪痕を残そうと、前に前に出ています(笑)。
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