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ストーブリーグが始まって以降、アメリカで青木の去就が話題になることはほとんどない。昨季はレギュラーと控えのボーダーラインにいたのだから、優先順位的に後回しになるのは当然ではある。しかし、たとえそうだとしても、米メディア上でもこれほど名前が出ないのであれば、その先行きを占うことは容易ではない。 そこで今回、青木の評価と近未来の予測を「スポーツ・イラストレイテッド」のベン・ライター記者に尋ねてみた。ライター氏はいわばFA選手の動向予測の専門家。オフシーズンにFAになった選手の行方を占うランキング企画、”ライター50”はスポイラ電子版屈指の人気コンテンツである。 今秋、ライター記者が選んだFA選手のトップ50人の中に青木は含まれなかった。その事実からも、年明けに36歳になる日本人外野手に対するライター氏の評価は高いとは言えない。「青木は”ライター50”に含まれるべき選手としては考慮しなかった。オールスターに選ばれるような打者を除き、パワーのあるコーナー・アウトフィールダー(ライトかレフト)ですら、今オフの職探しは容易ではない。そんな中で、パワーに欠け、盗塁の回数も減り、昨季だけで3チームに所属した選手のマーケットは限られてくる」
一般的に、青木よりワンランク上のFA 選手と目されているメルキー・カブレラ(打率.285、17本塁打)、キャメロン・メイビン(打率.228、10本塁打、33盗塁)、カーティス・グランダーソン(打率.212、26本塁打)といった外野手は”ライター50”に含まれたが、そんな彼らにしても、今オフに高額契約を結ぶのは容易ではなさそうだ。だとすれば、年齢、パワー不足といったマイナス材料がある青木の好契約は、より難しいという推測は理解できる。
ただ、ライター記者は青木の長所にも目を向けていた。「青木は、バットに当てるうまさは保持している。三振率11.8%と出塁率.335はポジティブな材料だ」 昨季の青木の出塁率はメジャー入り後では自己最低だったが、それでも上記のカブレラ(.324)、メイビン(.318)、グランダーソン(.323)の数字を上回っている。さらに、メッツでレギュラー扱いを受けた約1カ月間に限定すれば、出塁率は.371に跳ね上がる。こういった数字は、青木が依然としてメジャーでプレーできるだけの力を残していることを指し示している。そこで気になるのは、粘り強さ、コンタクトの巧さといった青木特有のツールが、今オフにどれだけ望まれ、そこにどれだけの値段がつけられるかだ。「最新のデータで守備範囲が狭くなっていることも考慮すれば、青木がメジャーでレギュラーを務めるべき時間は終わったと私は考える。来季は年俸150万ドル(約1億6900万円)程度での1年契約に落ち着くのではないか。あるいは、まずはマイナー契約を結び、スプリングトレーニングで4番手、5番手の外野手の仕事を模索する可能性の方が高いのかもしれない」 昨季中に2球団から放出された事実を見ても、ここでライター記者が導き出した「レギュラーは難しい」という結論を否定するのは難しい。
メッツで瑞々(みずみず)しさを少なからず取り戻した後でも、地元メディアは「やはり第4の外野手役が適任」と口を揃えていた。シーズン終了後にメッツから自由契約になったのも、来季の年俸650万ドル(約7億6500万円)は控え選手としては高額すぎるという判断に違いない。だとすれば、あくまでアメリカでのキャリア続行にこだわるなら、控え扱いとしてオファーを待ち、所属先を探すことになるのだろう。 筆者の推測だが、ざっと目渡して、長打力には秀でていても、三振の多い若手外野手ばかりが揃ったフィラデルフィア・フィリーズは面白いかもしれない。昨季は24歳のニック・ウィリアムズ(88試合で打率.282、12本塁打、97三振)、25歳のオデュベル・エレーラ(138試合で打率.281、14本塁打、126三振)、26歳のアーロン・アルテール(107試合で打率.272、19本塁打、104三振)などが外野で出場したが、プレーは粗っぽい印象があった。 今オフにFAでカルロス・サンタナ一塁手を手に入れたため、昨季に一塁手を務めたリース・ホスキンス(50試合で打率.259、18本塁打、46三振)までもが外野に回ることになりそうだ。これだけ同タイプの選手が外野に揃ったなら、1人を放出するか、タイプの違う選手をあらかじめ組織に加えておくことも考えられる。青木が興味を持たれるとすれば、こういった状況のチームではないかと思う。
ここで疑問となるのは、”第4の外野手”としての条件をオファーされたとして、青木はそれでもアメリカでのキャリア続行を望むのかどうかという点だ。控え扱いで残り、昨季同様に、来季も自分の力がより重宝されるチームに移籍できることも十分に考えられる。ただ、契約は安価だろうし、出番を得るようになるまでは再び”いばらの道”になる可能性も高い。 日本、特に古巣のヤクルトから主力選手としての熱烈なオファーを受けたとして、それでもメジャーにこだわるのか。条件と希望の兼ね合いが、今後の見どころとなっていくのだろう。先行きを読むのは難しいが、青木にとって、今オフが再びキャリアのターニングポイントになることは間違いなさそうである。
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