この一説にピンとくる人は多いだろう。言わずと知れた世界的アニメーション作品『トムとジェリー』の日本語主題歌の一説である。身体は大きいが少しおっちょこちょいな猫のトムと、身体は小さいが知能に優れたねずみのジェリーが繰り広げるドタバタ劇は、今も昔も子供たちに人気を博している。今回はそんな2匹がこの歌詞の通りに初めて“仲良くけんか”した『メリー・クリスマス』という回について紹介していきたい。
クリスマスイブでもお構いなし! しかし……?
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この回の舞台はクリスマスイブの夜。ジェリーが巣穴から顔を出すところから物語は始まる。巣穴の前に仕掛けられたねずみ捕りには目もくれず、クリスマスの準備がされた部屋の中をはしゃぎまわるジェリーであったが、勢い余って眠っていたトムにちょっかいを出してしまう。そこから他の多くの回と同じように2匹の追いかけっこが展開され、最後はトムがジェリーを家の外に締め出してトムの勝利で決着がついたかに思われた。
『Silent Night(きよしこの夜)』のBGMをバックに再び眠りに入ろうとするトムであったが、外は猛烈な吹雪。締め出したジェリーのことがどうしても気になってしまう。恐る恐る外を確認すると、ジェリーは寒さで冷凍状態に。トムは急いでジェリーを救出し、暖炉で解凍。ジェリーは無事に意識を取り戻した。
その後トムから仲直りのしるしとしてステッキ状のキャンディーをもらったジェリーは、それを使って巣穴の前のねずみ捕りに置かれたチーズを取ることに。しかしこのねずみ捕り、実は罠ではなくチーズを取るとメロディーが流れるという仕掛けのオルゴールであり、それに気づいたジェリーが笑顔になるというのがこの回のオチだ。
ここまであらすじを読んできて、「この回見たことある!」、「懐かしい!」と昔を思い出した人も多いのではないだろうか。
知られざるトムとジェリーの歴史
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『メリー・クリスマス』が公開されたのは、今から70年以上も前の1941年12月6日で、『トムとジェリー』としては3作目となる作品(第1作目が公開されたのは1940年2月10日)である。この回が最初期の作品であるということこそが、初めて“仲良くけんか”した記念すべき回である理由だったのだ。1940年代といえば、第二次世界大戦や太平洋戦争など、各国に泥沼の戦争に突き進んでいた時代。世界中の人々を笑顔にさせる『トムとジェリー』は、実は世界が悲しみに包まれた戦火の時代に誕生したアニメーション作品であったのだ。このことを知らなかった人も多いのではないだろうか。
今もなお愛される名作の数々
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誕生からおよそ75年、今もなお世界中の人々に愛され続けている『トムとジェリー』。今回取り上げた『メリー・クリスマス』の他にも、面白い作品が軒を連ねている。老若男女誰もが一目見ただけで分かる面白さが『トムとジェリー』の最大の魅力と言えるだろう。過去には何度もアカデミー賞にノミネートされており、その回数はこちらも世界的な人気を誇るミッキーマウスを凌ぐほど。そんな『トムとジェリー』の面白さに、改めてふれてみてはどうだろうか。
Writer:柴田雅人
(提供:ヨムミル!Online)