エスクードは見てのとおり世界的に大流行中のコンパクトSUVなのだが、歴史をさかのぼっていくと、じつは”元祖コンパクトSUV”でもある。
初代エスクードの発売は今から約30年前。まだ”SUV”という言葉すらなく、オフローダー系のクルマは”クロカン”とか”ヨンク”と呼ばれていた1988年のことだ。昔から軽ヨンクのジムニーをつくっていたスズキとしては、エスクードは”ジムニーの兄貴分”という自然な着想の商品企画だったのだろう。
しかし、当時のヨンクにはトラックベースの大きなものしか存在しなかった。そんな時代に突如として出現したエスクードは”ちょうどいい小ささの、可愛いヨンク”として日本のみならず、せまい道が多いイタリアあたりでも大ヒット。欧州ではちょっとしたカリスマ的な存在にまでなった。
その後、90年代に入ると、そんなエスクードの絶妙なサイズ感に、軽量でカジュアルな乗用車設計を組み合わせたトヨタRAV4やホンダCR-Vが登場。これらはいつしか”ライトクロカン”と総称されて、日本や欧州、そしてアメリカでも、街乗りにも便利なお手軽レジャーカーとして認知……というのが、今をときめくコンパクトSUV史である。

以前はメカニズムも本格ヨンクっぽい古典派だったエスクードも、この最新型の基本骨格はエンジンを横置きするFF乗用車がベース。つまり、いかにも今どきコンパクトSUVそのものの機械内容なのだが、そこは歴史のあるカリスマだけに、ぽっと出の”見かけだけヨンク”とは一線を画す。
エスクードの駆動方式は4WDしかなく、しかも過酷な場面で重宝する前後直結”LOCK”モードつきだ。地上高もたっぷりで、本格的な悪路性能もけっこう高い。それにサイドまで回り込んで上からかぶせた形状のボンネットや見切りのいいボディデザイン、きちんと正しい姿勢で座れるドラポジなど、随所に「オレが元祖だ、なめんなよ!」というツボがにじんでいるのがマニアには嬉しい。エスクードで30年、ジムニーにいたっては50年近い歴史をもつスズキは、世界的にも指折りの老舗ヨンクメーカーでもある。この種のクルマにはプライドがあるのだ。
ただ、今のエスクードでは、シロートではおいそれと試すこともできない悪路性能のほかにも、もうひとつツボがある。それは舗装路でのアツい走りである。
現行エスクードには最近まで1.6リッターエンジンしかなかった。まあ、それでも相応によく走ったが、「なんか物足りないなあ」だったのも正直なところだし、日本の自動車税制では1.5リッターをわずかに超えるだけなのに、税金は2.0リッターと同額……という中途半端感があったのは否定できない。

そんなエスクードに新しく加わったのが1.4リッターターボである。このエンジンは最近流行のダウンサイジングターボで、日本では1.5リッターの税額で、実力は2.0リッター相当以上……というお得感がある。
そんなお得パワーを得たエスクード1.4ターボの走りは、いよいよ「キター!」の感が強い。今のスズキでは、あのスイフトスポーツに次いでスポーティと断言していい。
乗り心地はハッキリと硬めだが、そのぶん素直にキビキビと俊敏。従来の1.6リッターだと、自慢の4WDをせっかくの”スポーツ”モードにしても、エンジンが控えめすぎて、ちがいが分かりづらかった。しかし、この1.4ターボなら、スポーツモードにすると、エンジンのメリハリも明らかにグンと増して、通常モードよりグイグイと曲がる。安定した姿勢のまま、コーナーから強力に立ち上がっていく脱出加速は、ちょっとしたスポーツカー気分ですらある。
これぞ、アツい走りとウンチクが詰まったとスズキ伝統のツボ。当連載ではシツコイほど繰り返して書いているが”和製欧州車”ならぬ”欧製和車”の典型である。

【スペック】
スズキ・エスクード1.4ターボ
全長×全幅×全高:4175×1775×1610mmホイールベース:2500mm車両重量:1220kgエンジン:直列4気筒DOHCターボ・1371cc最高出力:136ps/5500rpm最大トルク:210Nm/2100-4000rpm変速機:6ATJC08モード燃費:16.8km/L乗車定員:5名車両本体価格:258万6600円
◆【コンパクトSUV】スバルXVの試乗レポートはこちら>>
◆【コンパクトSUV】マツダCX-5の試乗レポートはこちら>>