異様だ。異様だがデータを普通に見れば、今日本で何が起きているのかが理解できる。左図(※本誌参照)の通り、第二次安倍政権発足後の就業者数を見ると、
●高齢者 212万人増加
●女性 212万人増加
●生産年齢男子 49万人減少
と、働き手の主力たる生産年齢(15〜64歳)男子の就業者が減少する反対側で、高齢者と女性の就業者が激増しているのだ。
第二次安倍政権下において、生産年齢人口比率の低下を受け、「企業が引退する団塊の世代の穴埋めとして、短時間労働(パートタイム・アルバイト)の高齢者、女性を雇用した」結果、日本の就業者数が増加したことは、誰の目にも明らかである。
何しろ生産年齢の男性の就業者数は、50万人近く減ってしまっているのである。短期労働が増えた結果、実質賃金も当然ながら低迷した。生産年齢男子の就業者が減少し、反対側で高齢者と女性の就業者数が増えた結果、就業者の総計が増えているわけだが、これが、「安倍政権の金融政策のおかげ」と、主張するのであれば、「金融政策」から「生産年齢男子の就業が減り、高齢者と女性の就業者が増える」までの政策の波及プロセスをきちんと説明してもらわなければならない。
現在の日本の雇用環境を決定付けているのは「人口構造の変化」であり、安倍政権の金融政策ではない。もし、金融政策の影響だというならば、
「なぜ金融政策をすると、生産年齢の男子という主力の働き手の仕事が減るのか?」
という問いに、答えてもらう必要がある。人口の瘤である団塊の世代が生産年齢人口から離脱し、それを埋めるだけの若い世代が労働市場に参入していない。それ以外の説明ができるならば、是非、披露してほしいものだ。
それはともかく、過去の日本の雇用改善は、フルタイム雇用から短期雇用への切り替えにより生じたものである。すなわち、国民の賃金は上がらない(むしろ、平均では下がる)。とはいえ、さすがに人口構造の変化(生産年齢人口比率の低下)の圧力はすさまじく、人件費にもプラスの影響を与えつつある。
宅配便最大手のヤマト運輸は、インターネット通販繁忙期(12月)を控え、運転手について一部の地域において時給2000円で募集を始めた。また、Amazonジャパンも、倉庫作業について時給1850円を提示している。
人口構造の変化を受けた人手不足は、ついに「時給」にまで大きく影響を与え始めているのである。これは、もちろん日本国の国民経済にとってはいいことだ。人手不足による賃金上昇。真っ当な動きが、運送サービスから起きているのである。ヤマト運輸にしても、Amazonジャパンしても、人件費上昇を「サービス単価」にきちんと反映してほしい。そうすることで、中小の運送業者も追随することができる。
ところで、人手不足を報じる新聞報道は、外食産業における時給引き上げの動きについても伝えている。例えば、日本経済新聞は、