近くて遠い存在――? “探偵”は、大泉 洋とともに深化していく

4年ぶりのシリーズ最新作『探偵はBARにいる3』がついに公開を迎える。探偵と相棒・高田のコンビが札幌・ススキノで大暴れする展開はもはやお馴染みだが、今回の探偵は、より深みと包容力を増して、これまで以上に魅力的だ。表舞台ではいつもキレのいいトークで場を盛り上げる大泉 洋だが、取材に答える彼は、意外にも控えめで心の細やかな人という印象。4年ぶりの探偵が見せる深化は、そのまま大泉に訪れた感情と経験の蓄積なのかもしれない。

撮影/平岩 享 取材・文/新田理恵 制作/iD inc.

妥協はしない。「4も5も、つくっていきたいから」

映画『探偵はBARにいる3』は、心に染みる度合いで言えばシリーズ最高の作品だと思います。前作から4年。脚本づくりに時間をかけたそうですが、大泉さんから何かリクエストされたことは?
1作目はわりと原作に忠実だったんですけど、今回は一番オリジナル性が高くて、ほとんど1からお話をつくらなくてはいけなかったんですね。脚本の古沢(良太)さんもプロデューサーも、すごく苦労されていました。僕は主演として作品を背負う部分がどうしてもあるので、できた脚本を最初に読ませてもらったんです。
演じる立場でというより、客観的に読んだということでしょうか?
客観的に、観客の気持ちで、ですね。まず僕が読ませてもらって、共感できるか、感動できるかという感想を真摯に伝えていきました。僕は4作目、5作目と続けていきたいので、『3』が前2作よりも面白くなければ先がないと思ってますから。そこは妥協したくなかったですね。
このシリーズには毎回魅力的なヒロインが登場しますが、今回、北川景子さん演じる謎めいたヒロイン・岬マリとの関係は、ひときわ切なかったですね。
ヒロインの持つ切なさみたいなものを、どこまで攻めて出していけるのかというところは、スタッフのみなさんと話し合ってつくりましたね。ヒロインの結末をどうするのが一番いいのか。話し合いには僕も加わって、けっこういろいろとシミュレーションをしたんですよ。
ラストの展開はここでは言えませんが、マリの境遇を知ったときの探偵の表情に心をつかまれました。
白樺の道で撮ったシーンですね。その日は、あのシーンの撮影しか用意されてなかったんです。
集中してお芝居ができるようにという配慮だったのでしょうか?
そうだったんじゃないでしょうか。撮影は何回かトライしましたね。どれくらい探偵がヒロインに感情移入するのか、どれくらい感情を出してお芝居するのかというところは、監督と話し合いました。結局、「(感情を)MAXでください」という指示になったんですよね。

男同士の友情は“ほどよい距離感”が長続きの秘訣

探偵と相棒・高田のコンビの掛け合いも、ファンにとっては「待ってました!」というポイントです。身体を張って笑いを誘っている探偵に対して、高田というか…演じる松田龍平さんの面白さ、笑いの持っていき方は、観客目線でもちょっとズルいなと感じるのですが…。
省エネ感がありますよね(笑)。オレがやってることに対して。
対象が高田なのか松田さんなのかはわかりませんが、演じていて、ライバル心や嫉妬心みたいなものが湧き上がってきたりは…?
それはまったくない!(笑) 彼がいるから探偵でいられるってくらい大事な存在。こっちがパンツ一丁で船にくくり付けられている中、多少ズルいなとは思うけどね。
(笑)。
でも、一見頼りなさそうで、じつは彼ほど頼れる共演者はいないんですよ。あれだけセリフがない役で、あれだけの存在感を放つというのはホントにスゴいことで。僕にとって、松田龍平とお仕事できるというのは、すごく幸せなこと。彼みたいなお芝居で笑いをとるって、僕にはできないから。
計算であの笑いは狙えない、と。
とんでもない“間”をとりますからね。台本を読むと、よくオレだけボコボコにされてるんですよ。「殴られて車から放り出される探偵」って書いてあるんだけど、(大泉)「これってさ、高田いるよね?」、(松田)「いますね」、(大泉)「高田は?」、(松田)「…やられてないんじゃないですかね」みたいな。「何でお前は無傷なの?」って言ったら、「キャラじゃない?」って(笑)。
そのあたり、不公平感は…。
ありますよね。
(笑)。探偵と高田のコンビも長く続いていますが、大泉さんご自身も「TEAM NACS」で大学時代からの仲間とずっと一緒に活動されています。男同士の友情を長続きさせる秘訣は何だと思いますか?
やっぱり、「会いすぎない」ってことじゃないでしょうか。ほどよい距離感ですよね。会いすぎちゃうと、いろいろ揉めごとも起きたりするから。
心のどこかで恋しいぐらいがちょうどいい?
そうですね、「そろそろ会いたいな」ぐらいの距離感を保つのがいいんじゃないでしょうか。でも、仲間と毎日のように飲んでる男性もいますから、そういう付き合い方もあるんでしょうけど、家庭を持つとできなくなっていきますよね。お互い、ちゃんと気を遣いながら会うのが一番じゃないかなと思います。
仕事を一緒にする人との距離のとり方で、大泉さんが普段気を付けていることはありますか?
今、言ったのと同じになりますけど、「ある程度の距離感」と「ちゃんと気を遣う」っていうこと。仲良くなるとどうしても甘えちゃうんだけど、大事な人であればあるほど甘えちゃいけないなと思う。気持ちよくお互いに気を遣って、気持ちよく仕事ができるようにするのがいい。

スマホ依存&仕事後は直帰、探偵とは真逆の私生活

いつも面白いトークで場を盛り上げている大泉さんに、ムードメーカー的な印象を持っている人は多いはず。「面白さ」というのは、まわりの人への優しさでもあると思うのですが、さりげない優しさみたいなものが、大泉さんと探偵には共通しているように感じます。
優しい人でありたいと思うし、仲間を大事にするところは似てるかもしれないけど、探偵とはあんまり似てない気がしますね。だってこの人(探偵)、すごい乱暴者でしょ? すぐケンカするし。僕は絶対ケンカはしないし、まず僕、あまりバーにいないんですよね。これはホント致命的で申し訳ないんだけれども。
(笑)。仕事帰りに一杯っていうのも…。
あまりないんですよね。仕事が終わったら直帰! 娘とデレデレ。だから、全然違うんですよね。
ブログに、携帯をいじっていると娘さんに叱られるって書いていらっしゃったのを拝見しました。
僕はもう、「スマホ依存」ですよね(爆笑)。娘に「スマホはダメ」って言われちゃいます(笑)。あと、探偵と違って、僕はとにかく口を開けばまず愚痴でしょ。朝、マネージャーの車に乗った瞬間からため息ですからね。「はぁ…」って(笑)。朝からずっと疲れてる。似てないっちゃ似てないですよね。
(笑)。お仕事で普段、気を遣いすぎているのでは?
そう言われることもありますね。何でしょうねぇ…。気を遣ってるっていうほどじゃないんだけど。インタビューでもよく「楽しませてくれる」って言われるんだけど、僕にしてみたら、ちっとも笑いが起きない時間のほうがよっぽど疲れちゃうんですよ。面白いことのひとつも言っといたほうが疲れない。
相手のためでもあり、自分も居心地良くいられる、と。
まったくその通りなんですよね。
「スマホ依存」とのことですが、livedoorニュースのこのインタビューは、Twitterでも多くの方が見てくださっています。大泉さんもSNSは使いますか?
SNSっていうのができないんですよね。さっぱりわからない。スマホ依存ではあるけど、詳しくはないから怖くて。何かバレたりとか、いろいろするんでしょ? ひとつ失敗したらと思うと…。 僕、即効炎上しそうだもん(笑)。

役者の悲しいサガ? 夫婦ゲンカに「いい芝居するなぁ」

では、コミュニケーションツールとしてのスマホ依存ではないのですね。意外と言っては失礼ですが、今日、とても神経の細やかな方だという印象を持ちました。
そうかもしれないですね。勝手にまわりを見て、勝手に気を遣ってるところはあります。ヘタに深読みしちゃったり、自分の発言をやたら後悔したり。僕、「余計なこと言ったな〜」って思うことが多いんですよ。やっぱり、よくしゃべるから。まわりを見ていると、「オレだったら、これ一日落ち込むな」っていうことを言っても、ケロっとしてるも人いますよね(笑)。
羨ましいな、と…。
小心者なんだよね。このあいだも大阪で、淀川長治さんのモノマネをしたんだけど、水野晴郎さんと間違えて言っちゃって、相当落ち込んでたもん。クヨクヨしちゃうんですよ。
まわりを注意して見てしまう観察眼が、お仕事に役立つこともあるのでしょうか?
新しい役を演じるとき、作品によって「こんな人いる?」っていう極端なキャラクターもあるじゃないですか。それをイメージするときに思い浮かべるのは、自分が今まで見てきた人にはなりますよね。だから、たしかに仕事柄、そういう目でもまわりを見ちゃう。妻とケンカしても、怒りながら泣いてる顔とか見ると、ぶっちゃけ「いい芝居するなぁ」と思っちゃう(笑)。
芝居じゃない! って叱られそうですが(笑)。
「いやー、いい芝居するな〜」と思って、ケンカしていても僕はそこでだいぶ収まっちゃう。「すげぇ芝居するなぁ。この顔ができたらオレ、絶対に主演男優賞とれるな」って(笑)。
そうした生活の中のいろいろなご経験が、お芝居の肥やしになっていくのですね。
役者はみんなそうだと思います。何かひどいことが起きたときも、「こんな感情になるんだ。覚えておこう」ってどっかで思っている。どんなときでも、どこかでそう考えちゃうから、ガッカリするときもありますよ。すごく悲しいときも「こういう気持ちになるのね」って感じちゃう。
『探偵3』の探偵が深みを増したように思えるのは、大泉さんの経験値の表れなのかもと感じます。
年月は確実に経っているからね。
大泉 洋(おおいずみ・よう)
1973年4月3日生まれ。北海道出身。B型。1996年にスタートした北海道発の深夜番組『水曜どうでしょう』(HTB系)でブレイク。演劇ユニット「TEAM NACS」に所属。2011年のシリーズ第1作映画『探偵はBARにいる』で、第24回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞、第35回日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞。主な映画出演作に、『アフタースクール』、『しあわせのパン』、『清須会議』、『青天の霹靂』、『駆込み女と駆出し男』、『アイアムアヒーロー』、『東京喰種 トーキョーグール』などがある。2018年2月3日からは、TEAM NACS第16回公演『PARAMUSHIR〜信じ続けた士魂の旗を掲げて』の出演を控える。

    出演作品

    映画『探偵はBARにいる3』
    12月1日(金)全国ロードショー
    http://www.tantei-bar.com/

    サイン入りポラプレゼント

    今回インタビューをさせていただいた、大泉 洋さんのサイン入りポラを抽選で1名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

    応募方法
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    受付期間
    2017年11月30日(木)12:00〜12月6日(水)12:00
    当選者確定フロー
    • 当選者発表日/12月7日(木)
    • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、発送先のご連絡 (個人情報の安全な受け渡し) のため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
    • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから12月7日(木)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき12月10日(日)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
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