海外では最大規模となるクリスマス商戦に向けたショーケースともいえる展示会なだけに、各社とも気合は十分。IFAの9日ほど前に「Galaxy Note8」をフライング発表したサムスン電子も、改めて発表会でGalaxy Note8に触れるなど、この展示会を重要視している様子が伝わってきます。
日本メーカーも例外ではありません。日本のAndroidスマホとしてもっともシェアの高いブランドであるXperiaも、IFAでフラッグシップモデルが発表されるのが恒例になっています。今年は、ハイエンド級のモデルとして「Xperia XZ1」と「Xperia XZ1 Compact」の2機種が登場しています。
▲9月1日から、ドイツ・ベルリンで開催されたIFA

▲5.2インチのフルHDディスプレイを搭載した「Xperia XZ1」

▲4.6インチ画面で片手持ちに適した「Xperia XZ1 Compact」
これまでのソニーモバイルは、2月もしくは3月に開催されるMobile World Congress(MWC)と、8月もしくは9月のIFAが十分に住み分けできていない印象もありました。
たとえば、Xperia Zシリーズの"次"と位置づけられた「Xperia X」シリーズは昨年のMWCで発表されていますが、その際により機能性を重視したモデルとして「Xperia X Performance」をラインナップしていました。
シリーズを刷新して、フラッグシップモデルは年1回のペースになったのか......と思いきや、同じ年のIFAで「Xperia XZ」を発表。
どちらもミッドレンジでシリーズの中心となるXperia Xの上位モデルという点は同じ。ディスプレイサイズは5インチと5.2インチでデザインも違いますが、それ以外の機能は"Performance"がいいのか、"Z"がいいのか、イマイチ分からない状況になっていました。


▲昨年のMWCで発表された「Xperia X Performance」(上)と、IFAで発表された「Xperia XZ」(下)
これに対し、今年はMWCで「Xperia XZ Premium」を発表。同端末は4K HDRに対応し、Snapdragon 835も搭載したある意味"全部入り"のスマホでしたが、そのエッセンスをもう少しコンパクトなボディに落とし込んだのがXperia XZ1。さらにそれを小型化し、片手での操作性を重視したのがXperia XZ1 Compactとなっています。

▲XZ1とCompactでは、メモリ積層型CMOSセンサーはそのままに、笑顔での先読み撮影などが可能になった

▲片手でしっかり握れるXZ1 Compact。現行のXperia X Compactはミドルレンジ級の装備でしたが、本機はハイエンド級に
型番こそXZとXZ1という違いはありますが、この3機種は「兄弟のようなもの」(ソニー関係者)。実際ソニーのブースでも3機種がまとめて並べられており「スペックの近いハイパフォーマンスな端末を、3種類の中から選べる」というメッセージがしっかり伝わってきました。
Xperia XZ Premiumは発表時期が早かったため「1」なしの名称になっていますが、むしろ本来はXperia XZ1 Premiumと名乗るべき製品だったのかもしれません。
さて、複数のサイズを用意し、スペックをある程度そろえて、ニーズに応えるという手法は、他のメーカーでも一般的です。代表例としてはiPhoneやGalaxyがあり、どちらも"Plus"や"+"と型番につく大型モデルを用意しています。
サムスン電子に至っては、そのさらに上位に、Galaxy Noteシリーズがあります。これにならって、ソニーモバイルもXperia XZを中心に据えながら、より小型のモデルにはCompact、大型のモデルにはPremiumと名付けたわけです。

▲ほぼ同じスペックで、大小2つのサイズを用意するのは他社ハイエンドモデルでも一般的になりつつある。写真はGalaxy S8とS8+
さて、他社との差別化という点では、やはりCompactがあることが大きいでしょう。小型端末へのニーズはグローバルで見ると特に欧州などで強く、他社も型番に"mini"などと入れた製品を出しています。
一方で小型モデルは同時に、スペックも抑えられがち。ハイエンド級のラインナップにこうしたモデルが位置づけられることは非常にレアケースです。
しかしユーザーの立場からすると、ソニーといえばやはり小型でかつ高機能な製品に期待する人も多いとのことで、欧州でもハイエンドが好まれる一部の国ではハイエンドCompactが待望されていたそうです。
もちろん、日本でもハイエンドなCompactモデルは高い人気がありました。昨年発売された「Xperia X Compact」は、チップセットにSnapdragon 650を採用しており、ミドルレンジに"格下げ"されていましたが、こうしたコンセプトの変更に対して不満の声も聞こえてきたほどです。

▲昨年のCompactである「Xperia X Compact」は、チップセットなどがハイエンドモデルと異なっていた
Compactシリーズはディスプレイが小さいぶん、解像度も720p(1280×720)に落とされているため、Snapdragon 835のパフォーマンスが本当に必要なのかという議論はあります。
しかし最新のチップセットを搭載すれば処理能力が向上するのはもちろんのこと、通信速度も上げやすくなり、ユーザーの体感値として快適さは増すはず。
ハイエンドなCompactモデルは約2年ぶりの復活となるだけに、期待が持てそうです。

▲プレスカンファレンスでも、まずはXZ Premiumの実績を振り返ったあと、そのユーザー体験を拡大するモデルとして2機種を発表。同一シリーズであることを印象づけた
全体を通して見ると、昨年に比べ、ハイエンドモデルのラインナップがすっきり整理された印象も受けました。
本来であれば、Xperia XZ PremiumはXperia XZ1 Premiumとしてほしかったところで、その方が紛らわしくないことは確かです。しかしこうした大人の事情にとりあえず目をつぶれば、サイズとディスプレイの違いで選べるフラッグシップの3モデル展開と捉えることはできそうです。
少なくとも、半年ごとに数字が1つずつ増えていったZシリーズのときよりも、戦略が明快になった印象は受けます。

▲IFAでは、ミッドレンジでも18:9ディスプレイのトレンドが。写真はWikoの「VIEW XL」
とは言え、気になる点がないわけではありません。メモリ積層型CMOSセンサーを活用したカメラ機能は楽しいことは確かな一方で、今年のトレンドであるデュアルカメラには未対応。IFAでは一部メーカーがミッドレンジモデルへの広がりも見せていた18:9のディスプレイも搭載が見送られており、業界のトレンドへのキャッチアップが遅い印象はあります。
IFAではファーウェイがAIを意識したチップセットの発表もありましたが、このようなAIについての取り組みにも、Xperiaは大きな進化がありません。
ソニーモバイルは、日本のスマホメーカーとしてほぼ唯一と言っていいほど海外市場に踏みとどまっているメーカーですが、徐々にその販売台数は減ってます。
ただしこれは全社的な戦略の一環として、意図的にハイエンドモデルへのシフトを進めているため、という側面もあります。
ただ、競争の激しいハイエンドの分野を主戦場にしている以上、やはり斬新な機能はほしいところ。メモリ積層型CMOSセンサーを搭載しつつ、よりセンサーの種類を選ぶセルフィ用カメラをデュアルカメラ化するなど、もう少し業界全体のトレンドを意識した機能も必要だと感じました。