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武藤は昨季から計3回膝を痛め、リーグ戦28試合を欠場。まるまる1シーズン近い期間を棒に振ったことになる。再起を誓った今季の序盤での負傷がどれほど精神的につらいものであったかは想像に難くない。 だが、武藤はそこから再び戻ってきた。チームも個人もなかなか結果が出なかったが、事実上の残留を決定づけることになった第33節フランクフルト戦では、チームを救う逆転ゴールをマーク。「今シーズンはケガもあってつらい時期もありましたけど、前を向いてひたむきに頑張った結果が最後の最後で実ったのかなと思います」と感慨に浸った。 これまでの武藤のキャリアは、自身も「今まで落ちたことがない」と言うように、順風満帆だったと言っていい。2013年、慶應義塾大学在学中に特別指定強化選手としてFC東京に加入すると、4年次にはプロ契約を結ぶ。そのシーズンにリーグ戦13ゴールを挙げる活躍を見せ、翌年には日本代表に定着。2015年夏にマインツへ移籍すると、加入半年で7ゴールをマークして、ビッグクラブも獲得を狙う存在になった。 そこからのたび重なる負傷だ。今年3月には、すでに復帰していながら日本代表から漏れた。トップレベルへの道を駆け上がってきた武藤にとっては、耐え難い停滞だった。
しかし、苦しいときにこそ、その選手の本当の価値が問われるものだ。好調だったがケガでフォームを崩し、そのまま消えてしまった選手も少なくない。これまで順調に歩んできたが、武藤はどこかで壁にぶつかることは分かっていた。そこから這い上がる原動力になったのは「負けたくない」という気持ちだった。「もちろんそれが一番ですね。どん底を知っているからこそ、這い上がったときにまた、いい景色が見えたり、いい喜びが味わえると思ったので、そこを目指してとにかくひたむきに頑張りました。もちろんケガをしないに越したことはないですけど、やっぱりどん底を知っているからこそ飛躍できると思っているので。すべてうまくいくサッカー人生なんてないと思うからこそ、このケガをプラスに変えていきたいと思っています」“高く飛ぶためには、一度深くしゃがみこまなければならない”という至言があるが、武藤の気持ちはまさにそれだった。そのための行動も起こした。チーム練習に復帰後は、物足りないと思えばグラウンドに残ってボールを蹴り、結果が出なければチームメイトから「クレイジー」と言われるほどトレーニングをした。 復帰してからしばらく結果が出なくても「成長できるチャンス。これも選手として絶対にいい経験になると思うので、踏ん張って誰よりも努力していきたい」と、ポジティブに捉えた。
その根底にあったのは、「自分ならできる」という自信だ。武藤は出場時間を与えられれば、必ず結果を残してきた。加入半年での7ゴール4アシストはもちろん、今季序盤も出場時間は短いながらゴールを奪っていた。そんな足跡が、武藤自身を支えていた。「チームとしてもよくなかったですし、自分の動き云々というよりも、”ここでもらえれば取れる”というところに動いてもボールが来なかったり、チームと合わなかった。自分のプレーとコンディションが戻れば必ず点は取れると思っていましたし、正直、焦りはそんなになかったですね」 来季はロシアW杯を控えた重要な1年になる。11月のW杯予選期間中にマインツのチーム練習への復帰を果たしたときも、3月に代表メンバーから外れたときも、武藤は日本代表への想いを口にしてきた。再び代表の一員として活躍するためには、ひとつひとつを地道に積み上げていくことが大事だと武藤は考えている。「先を見据えすぎない。地に足をつけるじゃないですけど、目の前の1試合1試合に全力で取り組んで結果を出すことが、成長にも繋がると思います。大きな目標を掲げすぎないというのは自分のモットーでもあるので、コツコツとやっていかないといけないなと思います。
目の前のことができてないのに、大きなことは成し遂げられない。大きな目標を掲げるのもいいと思いますけど、見えにくいところに小さな過程というのがあるから、まずはそこをひとつひとつクリアしていくことが大事かなと思います」 そんな武藤にとって、もはやシーズン10ゴールという目標は十分に「現実的」だ。「ケガしてないときはしっかり点を取れているので、ケガなく1年通して戦えれば、必ず10ゴール以上は取れると自分でも思っています。(10ゴールは)現実的ですね。現実的なことを言った後に見えてくるものがあると思う。”この調子なら20ゴールいける”とか」 来季に向けて、何とも頼もしい言葉が返ってきた。
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