撮影/川野結李歌 取材・文/とみたまい 制作/iD inc.スタイリング/津野真吾 ヘアメイク/清水有希子衣装協力/原宿シカゴ(tel.03-3409-5017)、Barrack Room(tel.03-6416-9129) ![](https://image.news.livedoor.com/newsimage/0/2/0248f8433a5768fbd3699ae3fe4c3381.jpg)
和テイストに“三森すずこ感”が融合された最新曲
──4月12日にリリースされる7thシングル『サキワフハナ』ですが、まず、ジャケットの世界観が目を引きました。これには、どんなテーマが込められているんでしょうか?表題曲『サキワフハナ』は、劇場アニメ『結城友奈は勇者である -鷲尾須美の章-』の主題歌ということで、アニメシリーズで音楽を担当されているチームが作ってくださると聞いて……アニメのオープニング曲は和風な感じだったので、きっとそのチームが作るから、オリエンタルな曲に違いないと思いました。
──ジャケットを考えている時点では、まだ曲はできあがっていなかった?そうなんです。その和のテイストと、いつもの三森すずこのイメージが、いい感じに融合するような、違和感のないイメージにしたいなあと思って。それで、いろんな和柄を自分で探してみたんですが、やっぱり和柄って、赤とか黒とか、くっきりした色が多いんですよね。「そのイメージじゃないんだよなあ」って思って…。
──なるほど。そんななか、パステルカラーのものを見つけました。まさにこのジャケットみたいな色合いの柄で、「こんな感じの雰囲気にしたいです」というのをお伝えしました。それで、(ジャケット用に)柄を作ってもらったんですよね。
──ジャケット写真で着ているワンピースも?そうなんです! 同じ柄のワンピースも作っていただいて。歌詞のなかにも“少女と花”みたいな部分が出てくるので、少女の凜とした感じが出せたらいいなあって思いました。
──前回の3rdアルバムについてのインタビューでも、三森さんがかなりディレクションをされている印象でしたが、積極的にご自身の希望を伝えていくタイプなのでしょうか?そうですね。自分の曲だから、自分がイメージしたものを出したいっていう思いが強くて。今回の『サキワフハナ』に関しては、結城友奈の世界観に合ったものを岡部啓一さんと中村彼方さんが作ってくださって。私は……ソロでは歌ったことのない雰囲気の曲だったので、「これをどうやって三森すずこ風に仕上げるか」って、けっこう考えましたね。
──具体的には?ファルセットで、声楽っぽい感じで歌うこともできる曲なんですけど、それだと“三森すずこ感”とはちょっと違うかな? みたいな。もうちょっとポップスっぽい感じで、等身大の三森すずこが出せたらいいなと思って、声の質感とかも試行錯誤しながら収録しました。
──最初に楽曲を聴いたときは、難しいと思いましたか?そうですね、難しいし……仮歌を歌ってくださった方が、声楽っぽかったんですよ。だから最初、そっちに影響されて(笑)。「違うなあ?」みたいな。だから、頭のなかを一旦クリアにして、ゼロから「三森すずことは?」って考えながら作っていきました。
──歌のなかの登場人物ではなく、三森すずことして歌う意識ですか?普段の私はわりと、歌のなかの登場人物になる派なんですけど……『サキワフハナ』に関しては、三森すずこがこの曲を歌っているっていうイメージが強くて。逆に、カップリング曲の『恋はイリュージョン』は、歌のなかの登場人物になる意識でしたね。
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──劇場アニメ『結城友奈は勇者である -鷲尾須美の章-』ではキャラクター(鷲尾須美)も演じられているので、その主題歌となる『サキワフハナ』を、どのスタンスで歌うかが難しいのかなあって思いました。そうなんです。鷲尾須美をイメージすると、鷲尾須美のキャラソンになっちゃうし。最初、仮歌さんのイメージで声楽っぽくファルセットを多めで歌ったら……私もプロデューサー陣も「いつもと違うかも?」みたいな(笑)。もうちょっと、三森すずこが歌っている感を出したほうがいいよねって話して。それから1週間くらい時間があったので、そのあいだに考えて、やってみましたね。
──2ndアルバム『Fantasic Funfair』でお仕事をご一緒された、中村彼方さんが今回も作詞をされていますが、すべてお任せだったのでしょうか?そうですね。でも、タイトルの『サキワフハナ』は自分で決めました。イントロとアウトロに、「さきわいて」と「さきわえる」っていう言葉が出てくるんですけど、これ何語だろう? 日本語っぽいけど、日本語っぽくないなあって思って調べたら、「幸せをもたらす」みたいな意味があるらしく。なんか面白いなあって思って、『サキワフハナ』にしました。
──「さきわう(幸ふ)」に「花」ですね。花をテーマにしているので、どうしても「花」という言葉は入れたくて。
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『恋はイリュージョン』では、タップダンスも披露!
──カップリング曲の『恋はイリュージョン』は、どんなテーマで作りましたか?自分のルーツみたいな、ミュージカルっぽい曲をやりたいなあと思って。以前、矢野(博康)さんに『恋のキモチは5%』という曲を作っていただいて……私、矢野さんのグルーヴ感が大好きなんですね。それで今回も、矢野さんに作っていただけたら嬉しいなと思って、お願いしました。イメージ的には、昔のミュージカル映画みたいな雰囲気を出せたらいいなと思って。
──タップダンスの音も入っていますよね。そうなんです! タップの音も自分で録りました。収録のときに、「タップシューズも持ってきてください」って言われて、「え? もしかしてタップも録るのかな? 振りとか考えてないけど、大丈夫かな?」と思って……案の定、歌を収録したあと、「タップもいいですか?」って(笑)。でも、タップの音を録るためには、振り付けも考えなくちゃいけなくて、急きょ作りました。
──そうだったんですか!そうなんです(笑)。タップダンスは習っていたんですが、声優になってから披露するのは初めてで……。『ヒカリノメロディ』でも、間奏にタップを入れたりしたんですけど。今回は長いし、かなり曲のなかでも目立つ音なので、すごく嬉しいです。やっと活かせた(笑)。
──打ち込みの音が入っているんだと思っていました。そうですよね。仮歌の時点でも、タップの音が入ってたんですけど、「実際に録りましょう」ってなって。
──ライブで披露するときがあれば、三森さんのタップダンスを見ることができるかもしれませんね。そうですね。やりたい! みんなも踊りやすい曲なので、ライブが楽しみです。
──『恋はイリュージョン』は、ご自身で作詞を担当されているということですが、どんなところから歌詞を作っていったのでしょうか?初めに曲を聴いたときに、デュワッデュワッデュワみたいな音が入っていたので、「スキャット(※意味のない音をメロディーに合わせて即興的に歌うこと)だ!」って思って。だからまず、スキャットから考えました。「なにがいいかな?」って、いろいろ口ずさんでいって。「シュワッデュワかな? デュワッデュワ? あ、違う。やっぱりシュワッデュワかな?」みたいな(笑)。1番はオーソドックスなシュワッデュワだから、2番はシュワッシュワにして、はじけてる表現にしようかなって思って。
──スキャット以外の部分はいかがでしたか?これまでも、ソロで歌う私の曲には恋の歌が多くて。今回は、“デートに行くまでの女の子”っていう設定の曲を作ってみようかなって思いました。そうしたら、夜の街や、女の子が身につけているものの情景が浮かんで、どんどんイメージが膨らんできて……いつもより高いヒールを履いて、可愛らしい策略を練る女の子とか。「あ、いろいろ出てきたぞ!」って(笑)、ストーリーみたいにつなげていった感じですね。
──そういうネタって、普段から考えたりしていますか?子どもの頃から想像するのが好きで、想像の世界にすぐ行っちゃうんですよね(笑)。映画や少女漫画も好きなので、女の子目線で物事を考えることは得意ジャンルだなって、自分でも思っていますね。逆に、「人間とはなにか」とか「人生とは?」みたいことを言われたら、まだちょっとわからないかもしれません(笑)。
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「堅苦しくなくていい」キャラソンで気づいた歌の楽しさ
──2013年4月にソロデビューされて丸4年ですが、最初、歌うことについてどう思っていましたか?もともとミュージカルがやりたかったので、中学生ぐらいから声楽を始めていたんですね。声楽ってカチッとした基礎みたいなものがあって、型にはめていく感じなので、そのイメージが強くて、歌って難しいなって思ってたんですよね。でも、声優になってキャラソンを歌う機会が増えたことで、意識が変わりました。
──キャラソンを歌うアニメに多く出演されていますよね。そうなんです。ソロデビューする前にもキャラソンをたくさん歌わせていただいたなかで、「あ、歌ってそんなに堅苦しい感じじゃないんだ」って思ったんですね。声楽では難しいことをいっぱい言われたけれど、そういうのを全部とっぱらったら、すごく楽しいなあって思って。ラクに歌おうって。だから、ソロで活動が始まったときも、楽しく歌おうと、気楽に挑んでいる感じがありますね。
──なるほど。最近も定期的に歌の先生にみてもらっているんですが、私と考え方が似ているせいか、たくさん引き出してくださるんです。だから、デビューしたあとも、ちょっとずつ自分のなかで歌い方が変わっていって。とくにこの1、2年ぐらいは、アプローチの仕方がまた変わってきていますね。「この言葉はこうやって出そう。この曲はリズムを重視して歌おう」とか。この先もたぶん、変化していくんじゃないかなあ……それは面白そう、楽しそう! って思います。
──声優とアーティストと、ふたつの側面でお仕事をされているなかで、きちっと境界線を引くタイプなのでしょうか?……境界線を引いてる気がしますね。両親がすっごく音楽好きなんです。父はオペラやクラシックが大好きで、専門に勉強していたくらいなんですけど。母は母で、ロックとかが好きで(笑)。小さい頃からいろんな音楽が家のなかでかかっていたので、音楽をやることに対してはすごく自然に、スッと入れますよね。アーティスト活動は、昔からの自分に近いところにあると思います。
──声優はいかがでしょうか?声優はいまだに……緊張するっていうか(笑)。声優の仕事を始めてもう7年ぐらいなんですが、自分のなかではまだ新参者感があって。現場に行くと、ちゃんと自分がその役を演じきれるのか、いまだに不安で、“勉強中”みたいな感覚なんですよ。だから、いろんな先輩のお芝居を見て、「あー、なるほど!」とか、お芝居の上手な後輩を見て、「スゴい! どうしたらそうなるの?」って、すごく気になっちゃうんです(笑)。声優としては珍しいタイプなんでしょうね。アーティスト活動でバランスを取っているのかもしれません。