Jリーグでは開幕から失点が続き、日本代表のハリルホジッチ監督から「トップコンディションにない」とまで言われ、ロシア・ワールドカップ最終予選の3月シリーズの2試合では先発を外された。
この仙台戦では無駄のないポジショニングからビッグセーブでゴールを死守。精度の高いキックでビルドアップに加わり、守備面でも90分間通して隙がなく、”浦和の最後尾に西川あり”と存在感を示すパフォーマンスを見せた。
試合後の西川に、『今年は調子が悪いのでは?』と言われていることについて、質問を投げかけてみた。すると守護神は、周囲の喧騒が耳に入っていることを認め、次のように語った。
「調子に関しては、悪くないです。とはいえ、この世界は結果がすべてです。何を言われても仕方ありません。ただ、大切なのは貫いてきたことがブレないこと。それが一番重要だと思っていました」
「負=ネガティブ」の連鎖こそ回避しなければいけない--。背番号1は具体的に説明する。
「いけないのは、プレーが消極的になり、そこからミスを重ねてしまうこと。常にしっかり準備を怠らず試合に臨み、それで失点してしまった場合は受け入れられるし、もちろんとても悔しいから、また練習して、コーチらと話し合い、前向きに改善できます。
GKは失点したあとの立ち居振る舞いも大切。1試合、2試合、結果が悪ければ、やはり僕の耳にもいろいろと情報が入ってきます。ただ、それは自分が注目されている証だと、ポジティブに受け止めています」
弱気になってはGKは務まらないと強調する。そして……。
むしろ、結果が伴っていなくても日々自身とチームのパフォーマンスに好感触を得ていたからこそ、「必ず取り返せる自信はありました」と言う。一段と攻撃的スタイルを強め、探ってきた攻撃と守備のバランスについてもヒントを掴めた仙台戦は、その自信を深めた一歩目。
もちろん、守護神は気を緩めない。緊張度を一段と高める。
「これを継続することが、なにより難しい。かといって、受け身に回っても進んでいけない。トライしていける環境があります。どんどん上手くなって、チームも強くなり、タイトルを目指していきます」
11日(19時30分)には埼玉スタジアムで、ACLのグループステージ突破に向けた大一番、ブラジル代表のフッキやオスカルを擁する上海上港戦を迎える。
派手に飾った、無失点大勝劇。西川にとって、浦和にとって、仙台戦のクリーンシートが意味するところは大きい。浦和を支える「ナンバー1」の逆襲がここから始まる。
取材・文:塚越 始(サッカーダイジェスト編集部)