中村の蹴る磐田のCKについて聞かれると、「本当に嫌ですね。やっぱり、良いボールが来る。誰かが走ったところに必ず飛んでくる。そういうボールを蹴れる」と答える。
ポジションは違えど、同じ時代を生き、日本サッカーを牽引してきたふたりである。刺激し合い、お互いを高め合ってきた戦友とは、今は別々のチームで、それぞれの目標に向かって日々を生きている。
「シュート練習の、あのきれいな放物線は見られない。あ、うまいなって思いながらずっと眺めていましたよ。それが見れないのは、寂しいものがある」
中村のいない
横浜F・マリノス。その現実に、中澤は少なからず喪失感を覚えているようだが、だからといって、選手としてやるべきことに変わりはない。3年連続フルタイム出場の偉業を成し遂げ、現在も記録を更新中の中澤は、まだまだ突っ走るつもりでいる。
【横浜 2-1 磐田 PHOTO】横浜の新10番・齋藤の2アシストで磐田を撃破! 磐田戦の勝因のひとつに、中澤は「今日は相手に俊がいることで、(齋藤)学もそうだし、アマジュンやキー坊とか、みんな二割増し、三割増しぐらいの気持ちで試合に臨んでいたと思う」と語る。そして「本当は、それを毎試合、やることが大事。次の試合も、同じような気持ちで」と表情を引き締めた。
常に高いテンションとモチベーションでプレーするために、中澤自身は「俺は、世代交代の波にさからってやろう、と。ただ、それだけ。ふざけんじゃねぇって」と、不屈の精神でピッチに立ち続けている。
レギュラーを譲るつもりは、さらさらない。39歳の大ベテランは、その眼をギラつかせたまま、スタジアムを後にした。
取材・文:広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)