両者が合意にいたるまでには、紆余曲折があったが、ここでは、そんな背後の事情より、ユーザーにとって、どんなメリットがあるのかを中心に見ていこう。
●ソフトバンクの旧iPhone、旧iPadを有効活用できる格安SIMを提供する
MVNO(仮想移動体通信事業者)は、これまで
NTTドコモの回線を使用する事業者がほとんどだった。そのため、対応事業者と契約すれば、すぐにでも手元の
NTTドコモのスマートフォンを使用して、格安の回線接続サービスを使い始めることができていた。
一方、auの回線は、mineo、UQモバイル、IIJmioなど、まだ対応
MVNOキャリアこそ少ないが、着実に増えている。
しかし、ソフトバンクの回線を使用する
MVNOとなると、一部の地域ケーブルネットワークのサービスや、自社で
格安SIMサービスを提供するワイモバイルがあるくらい。
しかも、ワイモバイルであっても、同社のSIMロックがかかった旧iPhoneや旧iPadなどのスマートフォンでは使用することはできないなど、
格安SIMが使えるとは言えない状況だった。
そのため、ソフトバンクユーザーが格安の
MVNOキャリアに乗り換えるには、スマホの買い替えが必要であった。また、旧iPhoneや旧iPadなどのスマートフォンを、ドコモや auのように
格安SIMを使ってサブ機として使うこともできなかった。
つまり、これまでソフトバンクユーザーは、旧スマホを再利用せずに眠らせているか、中古で売るかしかなかったのだ。
2015年5月からは、スマホのSIMロック解除が義務づけられているため、iPhone 6s世代以降のスマートフォンは、ソフトバンク契約のモデルでも、ほかの
MVNOでも使用が可能となる。
しかし、まだまだiPhone6、5s、5、4sなど、現役で使い続けているユーザーも多く、これからiPhone 6以前のモデルから機種変更するというユーザーも多い。
今回の、日本通信とソフトバンクの相互接続合意は、ソフトバンクの旧モデルを有効活用することが可能になる扉が、ようやく開いたことになる。
また、現役でiPhone 6以前のモデルを使っている人にとっては、スマホを買い替えることなく、格安通信サービスに乗り換えることも可能になるのだ。
現状、日本通信からは、サービスプランも料金も発表されていないが、魅力的なサービスならば、ソフトバンクとの直接契約から移行するユーザーも増えるだろう。
また今後、日本通信を介してソフトバンク回線を使用する業者も増える見込みだ。
こうした
MVNO利用が広がれば、ソフトバンクとしては相対的なソフトバンク回線ユーザーを増やすことができるため、長期的には、回線利用者数の勢力図にも変化があらわれそうだ。
ともあれ、今は、サービス開始時期は3月22日からということで、プランと料金の発表が待たれるところだろう。
ソフトバンクのiPhoneやスマホを持つユーザーにとって、料金やプランの選択肢が増えることは確実で、そのメリットは計り知れないほど大きい。