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確かに都内の数軒の家電量販店に行ってみたが、ちゃんと売り場があり、何種類ものラジカセが売られているものの、しばらく売り場を眺めていても商品を手に取り、店員に質問しているのは「高齢者」と呼べそうな人たちばかり。
実はCDやMDが中心となり、音楽をデジタルで聴くのが当たり前になった時代でもカセットテープが細々と生き残っていたのには、演歌好きのお年寄りたちがカセットテープの愛用者だった、という背景がある。
ということは、その頃とほとんど状況は変わっていないのだろうか。しかし、それではミュージックテープ専門店に熱心な客がいることも人気アーティストが新譜をカセットで出すことも説明がつきにくい。そこで再びwaltzの角田さんに聞いてみることに。
「ブームが来ているとは思いませんが、ただ、その兆しはあると思っています。僕も今、47歳でエアチェック世代ですが、当時のカセットテープは録音メディア。つまり、何も録音されていない生テープを買ってきて、そこにラジオやレコードを録音していました。本当はレコードが欲しかったけど、高くて買えないからそうしていたんですね。
ところが今のカセットテープカルチャーは、すでに音楽が録音されているカセットテープを買ってそれを聴く、ミュージックテープのカルチャーなんです。実はこれ、僕ら世代もやってこなかったことなんですよ。だから、今のカセットテープカルチャーって懐かしいようで、ほとんどの人が経験してこなかった、まったく新しい文化なんです」
クリアなデジタルの音に慣れた現代人の耳にカセットテープの音は物足りなく感じませんか?という疑問も角田さんはきっぱり否定。
「カセットテープの音が悪いというのは、ラジオやレコードを録音していた頃のイメージだと思います。ちゃんとした再生機で聴くミュージックテープはむしろマスターテープのように音がいい。僕らのようにカセットに親しんでいる世代ほど、その音の良さに驚くと思います。それにいい音と心地いい音って違うと思うんです」
角田さんの元には大手家電メーカーの開発担当者が話を聞きに来ることもあるという。デザインと音質のいいラジカセが発売され、本格的なカセットブームが来る日も近いかもしれない。
★『週刊プレイボーイ』6号、「懐かしくて新しい!『カセットテープ』最前線」より
(取材・文/井出尚志[リーゼント] 撮影/佐賀章広)