ファンから届く年賀状の言葉で「人生観が変わる」
――先ほどからおっしゃっている“捨てる”という行為について、詳しく教えてください。パソコンの容量と一緒で、いっぱいになると重くなるし、もうこれ以上、新しいものが入らなくなるんです。
――そこで必要ないもの、古いデータを捨てないといけない?体になじんだものを捨てるという作業が必要です。容量は決まっているんですよ。というか、体のために決めてあげないといけない。僕は256バイトくらいですかね(笑)。だから毎回、ひとつ作品の撮影が終わったら、きちんと“納める”ようにしています。それは“捨てる”という言葉で置き換えてもいいんですが、別の記憶に換える。
――パソコンのデータで言うなら、DVDに焼いたり…。作品が公開されるというのも、ある意味で“納める”ということになるのかもしれません。その時点で、僕はもう別の人間になっているんだと思います。改めて言葉にすると、大げさですけど、みなさんも、生きていくうえでそれを自然にやっていると思いますよ。
――先ほど「容量は決まっているし、決めないといけない」とおっしゃっていましたが、容量自体が増設されることもあるんでしょうか?それも考えなくちゃいけないのかもしれません…。データも古いから捨てるってわけではないですよね。過去の大切な記憶が残っているのって、そのとき感じた愛おしさや体温を覚えているということで、それは捨てられないのではなく、認めて、捨てないということであり、それも大事です。
――とはいえ、積み重なると容量が…。僕自身、たとえば『新宿スワン』という大切な作品を捨てることなく、愛しいものとして残しておくために、そろそろキャパを増やさないといけないのかもしれません。それとも、今のキャパのままで、愛おしいものだけで自分をすべて埋め尽くせるのなら、もうこれ以上、新しいものを入れる必要はないって思えるのかもしれないし…。そういう生き方も魅力的だと思いますが。
――いやいや! まだまだ新しいこと、挑戦すべきことが、否応なくやってくるかと…。今年もね、ファンのみなさんが送ってくださった年賀状すべてに目を通したんですけど、「(綾野さんの作品を見て)人生が変わった」とおっしゃってくださる人もいて、僕は僕で、その言葉で人生観が変わるんです。そこまでいくともう、この仕事を自分が楽しむためだけにはやってないんだなって思います。みんなが楽しくないと嫌だし、みんなを幸せにするためにやりたい。
努力は報われるためでなく、成長のためにある
――そういう感覚や、先ほどからの“変化”や“捨てる”といった考えは、若い頃からお持ちでしたか? それとも、それもまた日々の変化の中で芽生えてきたのでしょうか?若い頃からというのとはちょっと違うかな? まず、きちんと一回、何かを壊すという経験がないといけないので。
――“捨てる”の前に“壊す”?破壊と構築の繰り返しですね。それが必要のない人――ただ、構築していくことで可能性を紡ぎだしていく天才と呼ばれる人もいますけど、僕は天才じゃないから、圧倒的な努力が必要なんです。そのために壊していかないといけない。
――なるほど。もっと言うと、いろいろと従ってなんかいられないことがあるわけですよ(笑)。じゃあ、そこで従わずにやっていくにはどうするか? それ以上のもの、“業”を表現しないといけない。そのプレッシャーと戦っていかないといけないんです。
――そのために努力する?努力した結果、何も起きなくてもいいんですよ。いつも言っていますが、努力が100%報われるなんて、ありえないですから。努力は報われるためにあるんじゃないんです。きっと、“努力さん”は怒ってますよ。「僕は報われるためにあるんじゃないんだ。なんでみんな、僕を報われるための道具にしてるんだ?」って。
――(笑)。努力は成長するためにあるんです。報われることもあるかもしれないけど、それはただの結果です。報われなくても努力することで人は成長します。そのニュアンスは、普段から大事にしていますね。そのほうが希望があると思うんです。人生もそうで、報われるためにあるんじゃなくて、生きるためにあるので。
――生きていくうえで、大なり小なり目標というものは持つようにされていますか? ありますね。というか、ものすごくたくさん持ってます。(内容は)言いませんが、基本、短期的な目標ですね。
――長期的な目標はあえて持たないようにしているんですか?今、今、今ですね。今をどう生きるかで、未来が変わってくると思っているんで。未来を想定して今を生きると、絶対にそこにたどり着けないと思うんです。今がおろそかになってしまう。足元をしっかりと見ていけば、おのずとちょっとだけ前を向けるようになってくるのかなと。いや…、意外とそういうことも、もう考えてないのかな…?
――と言いますと…?さっきの「今、今、今」というスタイルに固執して、そろそろ固まりつつあるので、そうなる前にまた捨てないといけないなって。
――また捨てる(笑)。一度固まっちゃうと、それを壊すのに2〜3年はかかっちゃうんです。
――“今”ではなく、少し先を見据えるようになっている?少しだけ、先に何があるのか? すごく遠くに行こうとしてるんですよ。自分の体が未来に突っ込んでいるような気がするというか…まだ安定してないんですよね。この年齢で、また新しいことを始めてしまいまして…。大変なんです。
自分が持っている“匂い”で勝負するしかない!
――年齢の話が出ましたが、1月26日の誕生日で…。35歳になります。
――映画の中の龍彦は、前回はペーペーの新人だったのが、今回は後輩もできて、その一方で上司もいて…という、組織の中でなかなか難しい立場に立たされます。中間管理職ですね(笑)。
――先ほど、新しいことを始めるときのスタイル、新しい場所での心構えなどについてお話いただきましたが、年齢を重ねたことで、人との関係性の築き方などにおいて変わった部分はありますか?どうかな…? 人との関係という点で、年齢によって変わった部分はないと思います。どれだけ生きてきたか? これまでの約35年の人生経験の積み重ねが、人間関係に影響している部分は当然、あると思いますが。
――年齢という“数字”自体には左右されないという意味ですか?そうです。僕は、たとえ年下の人であっても「はじめまして」のときは敬語です。スタートはフィフティ・フィフティでいたいから。あくまで“人と人”なんです。そこから、仲良くなって敬語をやめることもあるし、逆に今でも敬語のままで会話させていただいているけど、僕のことをすごくかわいがってくださる先輩もいますし。
――おそらく、その年齢という数字に左右されないというスタイルは、人間関係ということだけに限らないんでしょうね。だから「え? 35歳になってこんな失敗するの?」ってことも起こりうるでしょうし、逆に「35歳でもうそんなこと考えてるの?」という部分もあるでしょう。年齢って、積み重ねていく数字、記号に過ぎない。それ自体が人生を豊かにしてくれるわけじゃない。繰り返しですけど、囚われちゃダメなんです。
――とはいえ、年齢を重ねて、確実に演じる役柄は変わってくるかと思います。ありますね、それは。ただ、僕に高校生の役のオファーが来ないのは、僕が醸し出す雰囲気が、高校生じゃないから。ただ、それだけです。龍彦って、前作のときは19歳で、今回は20歳ですよね。それを僕が醸し出せないなら、この役はお引き受けしてません。
――確かに、関を演じた深水さんと綾野さんは実年齢ではほぼ同世代ですが、映画の中では完全に年の離れた先輩・後輩にしか見えません。たとえば、佐藤 健くんも『バクマン。』で高校生を演じてたし、神木 隆之介くんも今でも高校生を演じてますが、その匂いが出せているんですよ。年齢という数字、断定的な記号にこの国の社会は囚われがちですが、それはクリエイティブを阻害するものだなと思います。吉田 羊さんが“年齢非公表”とされているのって、すごく正しいことのような気がします。
――数字ではなく、あくまでも…。自分が持っている匂いで勝負しないといけないんです。僕が父親役や、先生と呼ばれる立場の役をやるようになったら、これまでの匂いを失い、新しい匂いを手に入れたからです。
――当然ですが、失う匂いもあれば、新たに獲得する匂いもあるんですね。『新宿スワン』に関して言うと、僕は次が最終章だと考えているんですけど、そろそろ、龍彦でいられる匂いを失いかけています。だからこそ、今回、しっかりと結果を出して、まだ匂いがあるうちに、また龍彦を生きられたらと思っています。
【プロフィール】綾野 剛(あやの・ごう)/1982年1月26日生まれ。岐阜県出身。2003年、『仮面ライダー555』(テレビ朝日系)で俳優デビュー。NHKの連続テレビ小説『カーネーション』で注目を集め、その後も大河ドラマ『八重の桜』(NHK)、『最高の離婚』(フジテレビ系)、『コウノドリ』(フジテレビ系)など幅広い役を演じている。映画では、『クローズ ZERO II』、『そこのみにて光輝く』、『ルパン三世』、『日本で一番悪い奴ら』、『怒り』など、オリジナル脚本から人気漫画の原作まで多数の作品に出演。2017年は『新宿スワンII』に加え、『武曲 MUKOU』(6月公開)、『ラストレシピ〜麒麟の舌の記憶〜』(11月3日公開)の公開が控える。
【公式サイト】
http://tristone.co.jp/ayano/ ■映画『新宿スワンII』1月21日(土)全国ロードショー!
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