ニューストップ > 国内ニュース > 社会ニュース
デイリーニュースオンライ
問題は、これらの水素水の「効用」として、水素を飲むことで身体の活性酸素と結合し、活性酸素が体内でDNAを傷つけるなどの悪い働きをすることを防ぐと書いているケースが散見されることです。もちろん、一部の研究ではこれらの水素の摂取が身体に良い影響を与えるとするものもあります。
ただし、それらは「一定の条件下で」という但し書きがつくものであり、ちょっと水素の溶けた水を飲んだところで、効果が出るとは言えないというのが実情じゃないかと思われます。
当然、効果の無いものを効果があるとして販売することは問題ですから、国民生活センターも対応に動き、また伊藤園などの一部メーカーも「水素水はこんなときにオススメです!」とは書いても「健康に良い」とは一言も言ってないわけであります。
さすがにそういうことをしていると消費者の信頼を失うんじゃないのかなあと思う一方、消費者行政の中で伝説となっていた「コカコーラ ゼロ」のスローガンである「ワイルド ヘルス」という文言を想起させます。
コカコーラが砂糖代替品のノンカロリー甘味料を使ってゼロカロリーを謳うことで、健康的だというアピールをするわけなんですが、これも水素水同様に健康になるとはいっていない、効用なき健康アピールです。商業的に「身体に悪いと言われる砂糖を使っていない商品なので、したがって健康的だ」というイメージを打ち出す一方、必ずしも砂糖を使っていないから健康になるという科学的エビデンスはないまま「ワイルドヘルスだ」とコピーを打つわけです。もちろん、これ自体が悪いわけではありません。
水素水の場合は、水素の溶けた水を飲むと身体に良さそうだけど、特にこれといった明確な根拠はこの条件下では揃わないので、効用を謳わず、健康に良いというアピールだけで売っているわけです。これを詐欺的とするか、まあ本人が納得していればそれでいいんじゃないのと割り切るかは、かなり微妙な線ではないかと思います。
清涼飲料水のブームっていうものは、おいしさや機能性といった点ではほぼやり尽くした感もあるので、こういったネタが出ると「出遅れるな」とばかりに飛び乗って、さらにそれが大手飲料メーカーや大手製造業までもが参入するとなると、効果がまったく無いことが後から分かって悲惨な事態となったマイナスイオンの二の舞になるのではと心配することしきりです。
この手の疑似科学、ニセ科学については、どうしても真贋つきかねる微妙な線を突かれたときどう対応するべきなのか、いま一度良く考えたいなあと思います。はい。
ブロガー/個人投資家
やまもといちろう
慶應義塾大学卒業。会社経営の傍ら、作家、ブロガーとしても活躍。著書に『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(宝島社新書)など多数
公式サイト/