師匠は、なぜそんなふうに人とつながりあえるのですか? なんでそんなに相手に優しいんですか? その根源には、何があるのでしょうか…。
* * *
鶴瓶:それは、いい人キャンペーンよ。
――は?!
鶴瓶:フフフ、それは嘘だけど(笑)。
――ホントだったら、ものすごい極悪人じゃないですか…。
鶴瓶:あのね、昔、“将来、自分は芸能界でどうしたいのか”って考えたことがあってね。人気が出ると、みんながサインとか求めてくるじゃないですか。そんなに深い意味もなく、本当に欲しいのかどうかも分からないけれど、とりあえず芸能人を見たら、サイン欲しがるでしょう?
そのときね、思ったんです。この仕事やるなら、僕のサインが何年後かに、持っている人たちにとって価値のあるものになるように、がんばろうって。
例えば僕がスターになって、僕に会った人や、僕がサインをした人、みんなが喜んでくれたらいいなって、それだけなんです。僕を見たら、喜んでくれる。そんな存在になりたかった。しかも、その人気者が、庶民的で、優しかったら、もっとおもしろいでしょう?
――最強ですね。
鶴瓶:特に、東日本大震災のときにそう思ったんですよ。震災後の5月1日に、以前『鶴瓶の家族に乾杯』で訪問したことがある、石巻市に行ったんです。僕としても、思い入れがあった場所で。そしたらね、会う人会う人、おばあさんも小さい子も、「鶴瓶や!」って喜んで、元気になってくれた。
なかでも、とあるお寺で会ったお母さんには「何してたのよ、遅かったじゃない! もっと早く来てよ!」って開口一番言われてね。でもそれが、かえって僕を受け入れてくれているという気持ちが伝わってきて、なんか嬉しかったですね。
◇しょうふくてい・つるべ 落語家。上方落語協会副会長。4月に「太田胃散Presents鶴瓶噺2016」を東京・大阪で開催。『桃色つるべ』初のBlu-ray&DVD BOXが3/30発売!
◇衣装協力・ランデブー オー グローブ TEL:03・6419・7384
※『anan』2016年3月30日号より。写真・内田紘倫 スタイリスト・上野真紀 ヘア&メイク・上田実穂 《anan編集部》