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中目黒の路地裏にある一軒家『バル エンリケ』
しっぽりデートでも使える中華は、中目黒で貴重である。登場するなり写真を撮らずにはいられないような美しい前菜の盛り合わせからスタートするコースは2012年のオープン当初から話題となった。「十種十彩」と名付けられたその前菜はいつのまにやら15種類前後にまで増え、河野利之シェフの高いポテンシャルを物語っている。ずっと上海料理の修業を積みながらも「フレンチのように提供したい」という想いがあり、独立するときには皿をそろえ、コースを練りに練ったという。ときにはナイフとフォークさえ使うが、食べればそれはしっかりと中華であり、師の教えを受け継いだ味。その両立を楽しめるのはうれしい限りだ。アラカルトでも楽しめるが、ここはやはりコースで。「予約してきてくださるお客様のために季節感のある新作もどんどん出していきたい」という河野シェフ。オリジナルとトラッドが共存する中華料理を。
「うなぎとアスパラのオーブン焼き 甜醤油ソース」。野菜を巻いたうなぎは蒸してから焼き上げる。コース料理の一例
内観
仕事帰りにふらり寄れるような“日常”のフレンチでありたい。そして、山口潤シェフは、日常であるからこそ「お腹いっぱいになって帰ってほしい」と、まるで実家のお母さんのように料理をたっぷりと出し続ける。例えば、グラスに詰め込まれた一見かわいらしい冷前菜は、にんじんのムースにズワイガニとホタテの身、オマール海老のジュレ(味噌たっぷり!)、そしてウニを惜しげもなく重ねたひと品で、食べ進むとあまりの贅沢な旨みの重なりに原価が心配になってしまうほど。定評のある肉料理もラムのくらした肉をドーンと焼き、予想をはるかに上回るボリュームに息を呑むだろう。フレンチにしては年配の常連客が多いというこちら。高齢でも日常的にフレンチを食べる習慣があるゲストが通うというのも中目黒らしく、街と店の親和性に納得。きっといつまでもここで繰り広げられる「あ〜、お腹いっぱい」の図。仲間入りしたくなる幸せな光景だ。
ズワイ蟹・ホタテのクープ オマール海老のジュレは、まるでパフェ! パフェ同様に混ぜながら食べ進むのが楽しく、掘っても掘っても贅沢な味が広がる
なかめで飲むならワインバーやバルも抑えておこう!
中目黒の路地裏にある一軒家。スペイン風?と思いきや大きく首を横に振る星野伸一シェフ。100年続く店はなにかの“風”だったりはしない、“普通”であることが大事だと。スペインの田舎で出会った数々のそんな店や料理に魅せられ、星野シェフは究極の“普通”を目指している。可能な限り上質な食材を使い、その味に沿った料理を作り、そして適正な価格で提供することが使命。「食材の味を引き出すなんておこがましい。尊敬する和食の料理人に聞いた『素材の味に沿う』という言葉が好きで、いつもそうありたいと思う」食事の〆に多くの人が注文する「あさりごはん」もそのひとつ。パエリアではなくバスクの家庭的なご飯は、あさりとにんにくのパワフルな味に“沿い”、あさりだしの効いたやわらかなご飯になんと勢いがあることか!バル乱立の中目黒にあって、本物のバルとは何なのかを教えてくれる一店だろう。
マッシュルームのセゴビア風にんにくソテーの香り豊かなこと。マッシュルームはしぼむことなくむっちりと肉感的。生ハムの硬くなった部分も加え、アクセントに
「お客様のピークタイムはだいたい23時頃ですね。昔よりもだんだん遅くなっている気がします」と苦笑気味に語るのは、店主の野崎厚夫氏。店内を毎夜賑わせるゲストは、フォトグラファー、アートディレクターなど、各ジャンルでの売れっ子の面々。彼らが集う理由は、気心知れたメンバーが誰かしらいる、ということのみならず、遅い仕事の後でも満足度の高い丁寧に作られた料理をアルコールと一緒に味わえる点にもあるのではないだろうか。昨今人気が高いのはスパゲティナポリタンやカレーライスだが、トリッパの煮込みや豚肉のリエットなど、ワインによく合うメニューも実はきちんとスタンバイしている。フランス生活を経て?ワインバー?という言葉が出始めたばかりの1999年に開店。「バーだけどメシも旨い、という店をやりたくて」と奥様とふたりで磨いたレシピはどれも、肩肘張らない味わいだ。
チキンカレーライスはしっかり煮込まれた鶏肉がほろほろと。まろやかさの中に程よいスパイシーさがひそむ