WISEは、スポーツ界で国際的な活躍をめざす人材が集まる世界唯一の国際会議。本部はIOC(国際オリンピック委員会)に置かれ、「オリンピックの首都」とも呼ばれるスイス・ローザンヌで毎年2日間にわたって開催される。今年は65を超える企業が出展し、1000人近くの参加者が集まった。
WISEで講演を行った筑波大学・TIASアカデミー長の真田久氏は、体育教育について「人々が健康的な生活を長く続けていくためには、誰もが運動に取り組める社会をつくることが重要」と語り、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピック競技大会を、「日本だけでなく、世界の学校に体育教育を広めるきっかけとしたい」と意欲を示した。そして、今年が「体育科」創設100周年にあたる筑波大学について「日本の学校教育における体育の普及を介して、オリンピック・パラリンピック・ムーブメントをあらゆる世代と国に広げていく」と紹介した上で、「TIASでは、他者に尽くすことで最後は自分にも返ってくるという『自他共栄』の精神を持った国際スポーツ界のリーダーを育てたい」とスポーツ界の人材育成への熱い思いを語った。
また、元東京オリンピック水泳金メダリストのドナ・デバロナ氏らと共に「スポーツ業界の現状とこれから」をテーマにしたパネルディスカッションに参加した筑波大学・TIAS副アカデミー長兼統括責任者の清水諭氏は、「テクノロジーの進化やSNSなどメディアの多様化により、従来のマスメディア一辺倒の情報発信から、観客だけではなく、アスリート自身も自ら発信できるようになり、スポーツを取り巻くパワーバランスが大きく変化してきている」と語り、「個」の情報発信が今後のスポーツ界をより良い方向に変えていくための原動力になると語った。
WISE開催中はTIASの出展ブースには、世界最大のスポーツ組織であるSportAccordのTibor Kozsla博士、スイス公共行政大学院(IDHEAP)のJean-Loup Chappelet教授、また、在ジュネーブ領事事務所の妹尾裕司副領事らが続々と訪れ、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を見据え、世界に通用するスポーツ界のリーダーを育成するTIASへの期待の高さをうかがうことができた。
TIASは、日本政府が推進するスポーツおよびオリンピック・パラリンピック・ムーブメント普及のための「Sport for Tomorrow」プログラムの一環で、政府の全面的な支援を受けている。TIASの母体である筑波大学は、アジア初の国際オリンピック委員会委員である嘉納治五郎氏を前身校の学長に持ち、100年以上にわたって日本のオリンピック・ムーブメントをけん引してきた。
2020年に東京で開催されるオリンピック・パラリンピック競技大会を見据え、TIASでは、世界から選出された学生と交流し、オリンピック・パラリンピック教育をはじめ、最新のスポーツマネジメント、ティーチング・コーチングなど、幅広く学ぶことができる。
WISEの展示ブースを訪れたスイスの学生は、「オリンピック・パラリンピックは、全ての人の生活向上(QOL)に寄与することができるという考え方に共感しました。TIASが推進する“Sport for Tomorrow”に期待したいと思います」とコメントし、TIASの活動に賛同していた。(編集担当:風間浩)