衆院選が1月27日公示されました。2月8日の投開票日に向けて、論戦が交わされます。民主主義社会で主権者が意思を示す重要な機会です。争点、論点は多岐にわたりますが、この選挙で高市早苗首相が求めているのは「白紙委任」であることは、このブログでも触れてきた通りです。
自民、維新の与党で過半数の議席を得れば、「国論を二分」するような政策を持ち出し、熟議で合意形成を探ることなく、異論を排除して力押しに進めるのだろうということは、高市首相自身が公言しているも同然です。「白紙委任」は、この選挙の最重要のキーワードであり、政策以前の本質的な論点だと考えています。
公示当日付の新聞各紙の社説、論説を各紙のサイトで見てみました。地方紙、ブロック紙を中心に、この「白紙委任」を明記したものがいくつか目に止まりました。見出しに掲げたのは中日新聞・東京新聞と琉球新報です。
琉球新報の社説を読むと、高市首相が推し進めようとしているのは戦争の準備であることがよく分かります。一部を書きとめておきます。この沖縄の視点は、日本本土でも広く共有されていいと感じます。
■琉球新報「きょう衆院選公示 首相に白紙委任できない」
https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-4989570.html
国会で一切の審議をせずに信任を問うのは「ご都合主義」であり、「白紙委任」を求めるに等しい。首相が率いる自民党の公約は、戦争をする国へとさらに踏み込んでいる。白紙委任にならない選挙にしなければならない。
(中略)
沖縄県民も生活に関わる政策に関心が高い。しかし、県民は米軍基地問題や自衛隊の南西シフトによる軍拡にも直面している。全国でミサイル弾薬庫の建設が進められ、反対運動が広がっているが、軍拡に反対する政党は一部にとどまっている。高市首相は「安全保障政策を抜本的に強化する」としている。この選挙は、日本を戦争をする国にする跳躍台となりかねない。
自民党の政策パンフレットでは、「安全保障」の項目で「『新しい戦い方』への対応、継戦能力確保やわが国の太平洋側での活動への対応の重要性などを踏まえ、本年中に国家安全保障戦略を含む『三文書』を改定し、新たな時代に対応した防衛体制を構築します」と述べている。
また、防衛装備移転三原則の5類型を撤廃して装備移転を「積極的に推進」するとした。憲法改正についても、自衛隊の明記、緊急事態対応などを盛り込んでいる。
日米合同演習では、本土から南西諸島への弾薬や装備の輸送、負傷者の本土への移送などの訓練も行われている。南西諸島が戦場になることが想定されていいのか、今選挙は意思表示の機会となる。
軍事・安全保障以外にも、政治とカネ、自民党と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)のつながりなど、自民党が問われる問題は多々ある。これらも不問にし、白紙委任するわけにはいかない。
中日新聞・東京新聞の社説は、「高市政治」が国民を政権の敵と味方に分断する危険があることを指摘しています。
■中日新聞・東京新聞「『白紙委任』には抗って 衆院選きょう公示」/国論二分いとわぬ政権/右傾化を止めるために
https://www.chunichi.co.jp/article/1199398
アイドルグループの総選挙さながらの「高市か、高市以外か」を選ぶ、選挙費用「850億円の人気投票」。その妥当性が有権者に問われなければなりません。
解散理由には高市氏自身が目指す政策の実現も挙げています。
「『責任ある積極財政』への経済・財政政策の大転換、安全保障政策の抜本強化、インテリジェンス機能の強化など、国論を二分するような大胆な政策、改革にも、批判を恐れることなく果敢に挑戦するには、政治の安定、国民の信任も必要です」
選挙に勝てば、批判されても国論を二分する政策を進める宣言ですが、積極財政は円安や財政悪化を招き、物価高騰で暮らしへの悪影響がすでに指摘されます。軍事偏重の外交・安保政策や防衛装備拡充は国民に負担を強い、地域情勢を悪化させる恐れがあります。インテリジェンス(情報活動)が強化されれば、監視の矛先を日本国民自身に向けかねません。
憲法改正の是非はもちろん、国論を二分する政策であればなおさら、反対論にも誠実に耳を傾け、国民の代表である国会で、丁寧に合意形成を図る必要があります。政権が一方的に進めていいはずがありません。強引に突破すれば、国民の分断を招くだけです。
政権中枢が国民を敵と味方に分断し、味方を優遇する安倍晋三政権当時のような忖度(そんたく)政治の再来を許してはなりません。
高市氏の解散戦略には自身への「白紙委任」を取り付け、自らの政策を官邸主導で強引に進める狙いも感じます。もちろん私たち有権者は、そうした企てには抗(あらが)い続ける必要があります。
「白紙委任」に触れているそのほかの社説、論説も以下に書きとめておきます。全国紙の社説では毎日新聞が触れています。
■北海道新聞「衆院選公示 日本政治の岐路となる」
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1267464/
首相は与党が勝利すれば「国論を二分するような政策に挑戦したい」とも語る。だが、具体策は明確でなく、白紙委任とはならないことを自覚すべきだ。
■中国新聞「衆院選27日公示 与野党は政局より政策を」/首相信任なのか/平和国家を問う/野党公約も弱み
https://www.chugoku-np.co.jp/articles/-/777923
根強い人気を頼りに首相がもくろむように「高市早苗が総理大臣でいいのかどうか」を決めさせ、政策転換の白紙委任を受ける選挙では決してない。
■高知新聞「【2026衆院選 きょう公示】時代の岐路に重要な選択」
https://www.kochinews.co.jp/article/detail/954462
厳しさを増す安全保障環境への対応は課題だとしても、戦後日本が堅持してきた平和国家、非核政策の理念が変容しないのか。政策推進に「白紙委任」を求めるかのような姿勢に危うさを感じざるを得ない。
■毎日新聞「衆院選2026 きょう公示 責任ある政党見極める時」/「痛み止め」では不十分/政治とカネも問われる
https://mainichi.jp/articles/20260127/ddm/005/070/086000c
首相個人への信任に争点を矮小(わいしょう)化し、超短期決戦で「白紙委任」を求める構えだ。国民不在の独善と断じざるを得ない。

以下は、ほかに27日朝の時点でネット上のサイトで全文を読むことができた社説、論説のうち、衆院選に触れたものです。
【全国紙】
■朝日新聞「衆院選きょう公示 国の針路 責任ある論戦を」/政策転換、中身を示せ/消費税減税の財源は/生活を守る選択こそ
https://digital.asahi.com/articles/DA3S16390288.html
■読売新聞「きょう公示 内向きの議論ばかりでは困る」
https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20260126-GYT1T00395/
■日経新聞「衆議院選挙27日公示、将来に危機感もち選択に臨もう」/消費減税では道開けぬ/痛み伴う選択肢を語れ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK262KC0W6A120C2000000/
■産経新聞「衆院選討論会 中国の議論もっと深めよ」
https://www.sankei.com/article/20260127-2XHS46KA2NITFD3NZB6WLX4REE/
【地方紙、ブロック紙】
■東奥日報「将来不安に応える論戦を/衆院選きょう公示」
https://www.toonippo.co.jp/articles/-/2198215
■福島民友「2026衆院選 きょう公示/信を問う準備は整ったのか」
https://www.minyu-net.com/news/detail/2026012708270245467
■信濃毎日新聞「SNS選挙 虚偽や中傷防ぐ自覚を」
https://www.shinmai.co.jp/news/article/gf01d5rk1kve6sourn3hvg20
■新潟日報「きょう公示 各党の国家観見極めたい」/大いに消費税議論を/「政治とカネ」も重要/
https://www.niigata-nippo.co.jp/articles/-/769012
■静岡新聞「きょう公示 将来見据え課題議論を【2026衆院選しずおか】」
https://news.at-s.com/article/1896157?lbl=576
■神戸新聞「消費税減税/物価高解消にはつながらない」/皮算用の財源ばかり/政治劣化を懸念する
https://www.kobe-np.co.jp/opinion/202601/0019953831.shtml
■山陽新聞「選挙とSNS 情報見極め冷静に選択を」
https://www.sanyonews.jp/article/1863652
■西日本新聞「きょう公示 一人一人が1票に責任を」/公約の実現可能性は/確かな情報を選ぼう
https://www.nishinippon.co.jp/item/1450758/
■沖縄タイムス「衆院選きょう公示 有権者に丁寧な説明を」
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1762336
一昨年の兵庫県知事選を機に、有権者の投票行動に対しては、SNSが新聞やテレビのマスメディアをしのぐ影響力を持っていると指摘されるようになりました。そうではあっても、有権者が1票を行使するに際して、信頼できる多様な情報に触れることが望ましいことに変わりはありません。新聞の組織ジャーナリズムが発信する情報はなお、その一つであると思います。