10月27日から3日間に渡ったトランプ大統領の来日と、出迎えた高市早苗首相の言動を巡って感じたことを、このブログのひとつ前の記事に書きました。中でも、日本の国家主権の観点から疑問に思うのは、高市首相が大統領専用ヘリに同乗し、東京都心の六本木地区にある米軍専用施設、米陸軍赤坂プレスセンターの専用ヘリポートから、米海軍横須賀基地(神奈川県横須賀市)に入港中の米原子力空母ジョージ・ワシントンに乗り込み、トランプ大統領と米兵の前で、日本の軍事力の強化を表明したことです。
「プレスセンター」の名前から軍事行動は想起しにくいかもしれませんが、日本の主権が及ばない軍事施設であり、横須賀基地や東京・多摩地区の米空軍横田基地、神奈川県の米海軍厚木基地など、東京周辺の米軍基地とヘリで自由に往来できる軍事拠点です。地元の東京都港区が返還を求めています。港区はホームページで「区民、特に近隣住民は、米軍へリコプターの騒音に悩まされ事故発生の不安を抱えています」と指摘しています。その位置付けは、沖縄の米軍基地と本質的に変わりません。根底にあるのは日米安全保障条約と、内容の不平等さが指摘され続けている地位協定です。
※東京都港区「区内にある米軍基地等の要請行動」
https://www.city.minato.tokyo.jp/jinken/kurashi/hewa/torikumi/begunkichi.html
トランプ大統領との会談で高市首相は、日本が軍事力の抜本的な強化と軍事費増に取り組む決意を伝え、「日米同盟の新たな黄金時代をともに作りたい」と表明したと報じられています。その首相が、日米が対等の関係ではないことを自ら追認し、固定化するかのように、大統領専用ヘリで横須賀に向かいました。その空は、基地の過剰負担にあえぎ、地元がその軽減を求めている沖縄の空とつながっています。高市首相の行動は、沖縄の民意、さらには東京の住民の民意をも踏みにじるに等しいものだと、わたしは受け止めています。
※写真は東京都港区が作成しているリーフレット。区のホームページからダウンロードできます


※参考過去記事
日米首脳会談を沖縄の新聞はどうとらえたのか、地元紙2紙が10月29日付で掲載した社説の一部を書きとめておきます。琉球新報の見出しは「あからさまな米国追従だ」であり、呼応するように沖縄タイムスは「対米追従からの脱却を」です。
特に、琉球新報の社説が、米軍関係の犯罪の抑止を名目に、沖縄では米憲兵隊が単独でパトロールを実施していることを指摘していることが目を引きました。「民間地で外国の捜査機関が警察権を行使している現状」は、日本の主権のありようの観点からは重大な問題のはずですが、日本政府は「地位協定と整合」としているとのことです。地位協定そのものに問題があるのですが、大統領専用ヘリに同乗して日本国内を移動することに何ら疑問を感じない様子の高市首相に、その問題意識は欠如しているのかもしれません。
▽琉球新報「日米首脳会談 あからさまな米国追従だ」
https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-4727850.html
沖縄にとって今年は大きな節目である。米兵による少女乱暴事件から30年となった。事件に抗議する県民大会は米軍人・軍属による犯罪の根絶を訴えたが、実現していない。日米地位協定の改定も進展していない。
このような現状を打破するのではないかと期待を持たせたのが、対等な日米関係の構築を掲げた前任の石破茂首相であった。ただ首相就任後は地位協定改定に関する持論は封印し、進展しなかった。
米軍関係の犯罪の抑止を名目に、沖縄では米憲兵隊が単独でパトロールを実施するに至っている。兵員らの身柄の拘束にも踏み切っている。民間地で外国の捜査機関が警察権を行使している現状を日本政府は「地位協定と整合」としている。
そもそもの地位協定に問題があるが、今回の会談の結果からしても高市政権で沖縄の懸念や要望はかなえられそうにない。主権に関わる問題である。トランプ氏のノーベル平和賞への推挙などをしている状況ではないのだ。
追従的な対米関係を象徴するのは、安保関連3文書の改定の方針である。敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有を初めて明記し、22年末に閣議決定した。明らかに平和憲法の理念に反する。高市首相は安全保障環境の変化に対応するために改定する考えだ。
沖縄の軍事的な負担がより強まるのは必至だ。首脳会談での確認事項がそのまま進められてはならない。
▽沖縄タイムス「日米首脳会談 対米追従からの脱却を」
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1701571
焦点の一つは日米同盟だった。高市氏は日本の防衛力強化と防衛費の増額に取り組む決意を伝えた。これに対し、トランプ氏は、日本による米国の防衛装備品の購入拡大に謝意を示すなど歓迎。両首脳は日米同盟の抑止力、対処力を強化することで一致した。
米側は日本の防衛費を、日本側が掲げるGDP比2%を上回る3・5%に増額する案を水面下で提示している。高市氏の発言は、そうしたトランプ政権の意向をくんだものだったのではないか。
高市氏は国家安全保障戦略など安全保障関連3文書を2026年中に改定する考えだ。本来なら、防衛費の増額は、こうした議論の中から出てくるべきだ。積算根拠のない発言は「増額ありき」との批判を免れまい。
このような姿勢は、かつての岸田文雄首相がバイデン米大統領に防衛力の抜本的強化と防衛費の大幅な増額を約束したときと重なる。
日米同盟強化の名の下で対米追従が強まれば、広大な米軍基地を抱え、さらに自衛隊の配備増強が進む沖縄の軍事的負担が増す。「米国ファースト」を掲げるトランプ政権の下では、民主主義や法の支配など日米同盟の基軸となってきた概念が揺らいでいる。そうした中では、日米同盟一辺倒ではなく、安全保障関係を多角化した重層的な外交が求められる。
【追記】2025年11月3日19時30分
那覇市で寄る、軍服姿でパトロールする米軍の様子の動画を、琉球新報がXに投稿しています。
【動画】「威圧感すごい」ハロウィーンの夜、那覇に軍服姿で物々しく 米軍単独で初パトロールhttps://t.co/PDXGAwn1G4 pic.twitter.com/V5BbIMUlCu
— 琉球新報 (@ryukyushimpo) 2025年11月2日